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1999年5月11日(火)

【魔術師鍛錬場②:大宮 弘典・松谷 佑紀・松島 明日香】
「あ、松谷さん出来てるおめでとう」
 煌々と光っている松谷 佑紀の指先を見つめながら松島 明日香が祝福の声をあげた。ここは魔術師鍛錬場②。本日は2次試験の4日目である。昨日課題をクリアしている大宮 弘典は、20期全体でも1番早く課題をクリアしたので、現在の段階では20期後衛職でのNo.1という評価になる。とはいえ、あくまでも指に光を灯すのが一番早かったというだけであり、今後の魔術師としての能力の高さを保証されているわけではない。だが、やはり1番というのは気分が悪いものではないので、大宮は課題クリアしたあとは基本ご機嫌に過ごすことが出来ているようだ。そして今、魔術師としては2番目に松谷が課題をクリアしたのである。
「ありがとうございます。何か急にポンって出てきて自分でもびっくりしました」
 課題クリアした嬉しさと安堵感から、松谷は柔らかい笑顔を浮かべて、松島の祝福へのお礼を述べる。周りで一緒に鍛錬していた受験者たちも、自分はまだクリアできてないので大っぴらではないが、軽くサムズアップで祝福をしてくれている。それに対しても1人1人に頭を下げてお礼をし、その後で松島の指示でその場所から移動を始めた。松島の後をついていくと、その先には1人で何かをしている大宮の姿がある。松谷が近づいてきていることが、課題クリアできたことだと察した大宮は、拍手で祝福をしながら出迎えてくれた。それに対して松谷はペコリと頭を下げる。
「さて松谷さんは課題をクリアしたので、残りの時間は大宮くんと一緒に精神力を鍛えるのと、最低限の体力をつける鍛錬を行ってください。詳しい課題は大宮くんが知ってるので、大宮くん教えて上げてね」
「アイアイサー」
 こう話して他の受験者の場所に戻っていく松島の背後から敬礼した大宮の声を響く。この後、大宮は教えてもらった課題を松谷に伝え、今後は一緒に鍛錬を行うことになったのである。

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