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1999年6月29日(火)

【ニュー富士:本田 仁・高松 準也】

「あ、本田さんお疲れ様です」
「高松くんか、お疲れー」
 急に声をかけてきた高松 準也に視線を向けつつも、手の動きは止めずに本田 仁が返事を返した。ここはパチンコ屋『ニュー富士』。15時を少し過ぎた時間帯であり、店内はある程度落ち着いた雰囲気である。午前中の鍛錬の後、一旦自宅に戻って食事をした高松は、午後から特にすることもなく暇を持て余していた。そこで何をするか悩んだ挙句、『ニュー富士』にやってきたのである。普段はスロットの花火をメインに打っており、今日もなんとなく出そうな台を一応抑えた上で店内を見回ってみる。すると、まばらに客がついているシオサイコーナーで黙々とリールを回す本田の姿を見つけて声をかけたのである。
「どうせだから隣打ってもいいですか?俺シオサイ打ったことないので、打ち方教えてください」
「良いよー。でも打ち方とか特にないよ。光れば当たる」
 このように本田が返事をしたので、隣の席にライターを置いて、先ほどキープした花火の台に置いていたタバコを回収してくる。そしてシオサイに座り、サンドに1000円を投入した。初めてシオサイに座った高松は色々と辺りを確認してみる。すると台の上にある棚に、何か予想回数表(リーチが入りやすい)と記載された張り紙が貼られているようである。現在自分の台は214ゲーム回されており、その紙には214の数字も記載されている。そしてその次の数字は225となっているようだ。ということは225ゲーム目がチャンスということなのだろうか。そう考えながらとりあえず打ち始める。そして225ゲーム目を迎えたが、何事も起きずにスルーしたのである。
「本田さん。あの張り紙のゲーム数って、何か当たりやすいとかあるんですか」
「え?関係ないよ」
 何となく予想はしていたが張り紙記載の内容は関係がないことを本田がはっきりと返事をする。それに対して特に異論はないが、ではなぜこのような紙が貼ってあるのだろうか。
「まあ、何となくの目安じゃないかな。ハマった時は単調だからメリハリというか叩きどころというか」
 そう発言している途中で本田の台のハイビスカスが点灯し、ボーナスが成立したようである。ゲーム数を見ると316ゲームであり、これは上のカードに記載されている数字ではなかったのである。

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