三協フロンテアの財務分析
三協フロンテアのおおまかな概要
ユニットハウスやトランクルームなどの建設用設備機材の製造、販売を行なっている。
ASEAN地域への進出のためミャンマーとマレーシアに子会社を持ち、シンガポールに支店が存在する。
製品販売だけでなく、製品のレンタルも行なっており、売上高の半分以上がストック型の収入である。
2022年に従業員の着服や売上の先行計上などによる不適切会計が発覚した。
三協フロンテアの10年間の財務数値
図表1-1 単位:(千円)
図表1-2 単位:(千円)
有価証券報告書に記載されている単体のPLには、レンタルによる売上と製品の販売による売上が分けて記載されていたので、それらの数値を使っていきます。
図表1-1の2013年度のレンタル収入、製品売上高が大きく落ち込んでいるのは東日本大震災の復興特需によって2012年の売上高が急上昇したため、相対的に2013年度の売上高が低く見えるためです。
2018年からの営業利益率、製品売上高の伸びが加速しているのは東京五輪、コロナ関連施設の特需によるものと考えられます。
図表1-2の総資産回転率が2015年度にかけて大きく低回しているのは、2015年にチャイナショックが起こるまでの好景気の間に、レンタル販売用の固定資産への投資を急いだためです。
2016年度から総資産回転率が回復し始めたのは、2016年から2018年にかけてミャンマーとマレーシアに非連結扱いの子会社を設立し、海外に販売を拡大させたことによる売上高の上昇によるものと考えられます。
三協フロンテアの利益構造
図表2-1 単位:(千円)
図表2-2
図表2-3
図表2-1のレンタル資産の推移では チャイナショックが起きた2015年まで投資を活発に行い、2015年から2016年に投資を抑制。
2017年から2020年にかけて徐々に投資を再開していることがわかります。
図表2-2の製品売上総利益率と支払債務回転期間の推移を見ると、どちらも同じような動きをしており、レンタル資産への投資が活発な時期には利益率、回転期間が共に高くなり、投資が停滞している時期には低くなっている傾向が見られます。
レンタル資産に使われる原材料と販売用の製品に使われる原材料は、おおよそ同じものと考えられるので、レンタル資産への投資が活発な時期には購買量が増加し支払債務の増加、そして大量購買による仕入割引によって売上原価が抑制されているのではないかと考えます。
図表2-3の製品売上総利益率とレンタル総利益率の推移を見ると、お互いに逆の動きをしているのがわかります。
レンタル資産への投資が活発な時期に、製品売上総利益率が高くなるのは、先ほど示した通りです。
逆にレンタル売上総利益率が低くなるのは、レンタル収益にかかるコストの大半が固定費であることに加えて、ストック型の安定した収益構造のためだと考えられます。
投資の活発な時期には固定費が大きく膨らみますが、収益は基本的に安定的に推移するため、相対的に利益率が低下します。(投資抑制時は逆)
まとめ
好景気の時期にレンタル資産への投資を活発に行い、大量購買によって原価を低減させている。(製品売上総利益率の上昇)
逆に景気低迷時期には、投資を控えることによる固定費の抑制と安定的な収益が得られるストック型の事業によりレンタル収入の利益率が上昇。
レンタルによる収入と製品の販売という異なる販売方法によって、景気の変動に対するリスク分散を行なっている。
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