日本ペイントの財務分析

日本ペイントのおおまかな概要

  • 日本ペイントは日本の塗料メーカーであり主に自動車用塗料、汎用塗料(主に建築用)、工業用塗料を扱っています。

  • 日本で塗料事業は成熟産業となっており、大きな成長が期待できないことから、海外展開を推し進めたことで海外売上高比率が80%を超え、中国・アジアでの売り上げが約53%になっています。(2021年度時点)

  • 海外事業を拡大してきたことによってアジアでのシェア1位、世界シェア4位にまで成長しています。

日本ペイントの財務数値

図表1-1             単位:(百万円)

5年間の総資産回転率及びPL数値の推移

図表1- 2            単位:(百万円)

5年間の資産の内訳と推移 

図表1-3           

利益率推移


図表1-1によると、売上高は5年間で約1.6倍にまで成長しています。
これは2019年にオセアニアでの事業展開のために豪州塗料大手のDulux Groupを買収したこと、2021年にWuthelamの子会社となり、アジア事業を日本ペイントに集約したことが主な要因と考えられます。

総資産回転率(売上高÷総資産)が2018年から2019年にかけて大きく減少しており、図表1-2の5年間の資産の内訳と推移を見ると、2018年から2019年にかけて無形固定資産が約2倍近くに膨らんでいることがわかります。

2019年にDuluxGroupを買収した際に、多額ののれん代を支払ったことに加えて、Duluxが商標権資産を多く保有していたことで無形固定資産が大きく膨らんだため、総資産が拡大したためです。

図表1-3の売上総利益率の推移は、塗料の原料である原油価格の影響を受け、17年から20年まで上昇し、21年に減少に転じています。
また、売上総利益率の推移に対して販管費率の推移が増加傾向にあるのは、コロナウイルスの影響により販売数量が伸び悩んだことに加えて、買収企業の管理コストの増加によって固定比率が上昇したためと考えられます。

結果として営業利益が減少傾向にあるのは、販管費の増加に対して、販売数量が伸び悩んだことによるものでしょう。

日本ペイントのレバレッジ

図表2-1

レバレッジと長期借入金の推移

図表2-2                                                                                

販管費率と売上原価率の推移

図表2-1を見ると、日本ペイントのレバレッジと長期借入金は、2019年から急激に上昇しています。これはDuluxGroupの買収資金を長期借入金によって調達したためです。
ではなぜ株式発行ではなく借入を選択したのでしょうか?

図表2-2を見ると売上原価率の上昇局面(原油価格の上昇)は販管費率が低下し、原価率の低下局面では販管費率が上昇しています。
これは原材料費の上昇の際には販管費率=販管費/売上高の分母が大きくなり、原材料費の低下の際には、分母が小さくなっているためだと考えられます。
つまり原材料価格を速やかに販売価格に転嫁できており、安定した収益を確保しやすい事業構造だと思われます。
この収益の安定性によって、金融機関から高い信用を得られることに加えて、大規模な金融緩和による金利の低下が、株式ではなく借入による資金調達を選択した理由だと考えられます。

次回は比較分析へ

ここまでは日本ペイントの有価証券報告書だけで分析を行ってきました。
次回は、日本ペイントのライバルである関西ペイントとの比較を行うことで分析を深めていきたいと思います。












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