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認知症のあるある

「ご飯を食べてない」
「家に帰る」
このセリフ、定番中の定番で、
どうしてこんなにも同じことを言うのか不思議です。
食べることと自分の居場所は、
生きていくうえで一番大事ということでしょうか。

『冷蔵庫の魔界』もあるあるです。
なぜか同じものがいくつも入っている。
姑は、卵とニンジンとナスが大好きらしく、
何本も入ってました。
卵は3パックくらいは常備。

父は納豆と豆腐。
スーパーに行くたびに、買ってしまうんでしょうね。

不思議なのは、内容がランダムではなくて、
同じ商品だということ。
姑はとにかくニンジンと卵。
父は豆腐と納豆。
同じものだけがどんどんたまっていく。

姑が最初いた施設では、食堂で三食食事ができたのですが、
一人でスーパーにいっては、ニンジンと卵を買ってくる。
危ないので調理器具は部屋に置いていませんでした。
なので料理なんてできないんですけどね。
気のすむまで、冷蔵庫がパンパンになるまで放置しておいたのですが、
さすがに卵の賞味期限がすぎ、ニンジンは黒く変色していく。

「そろそろ処分したほうが」
「いいのよ、食べられるから、そのままにしておいて」

認知症の人を説得するのは無駄なので。
見つからないように自分の家に持ち帰って捨てる・・・
なんてことができればいいのですが、
姑は部屋にいるので、冷蔵庫の中身を私がかってに触ることもできず。

「わぁ、こんなにニンジンがある。少しいただいてもいいですかぁ?」

私、女優になれんじゃないの?

姑はケチではないので「いいわよ」とくれます。
確実に、自分の家まで持ち帰らねばなりません。
一度、古くなった下着を新しいものに交換して、
コンビニ袋に入れて、部屋のゴミ箱に捨てたのですが、
(ゴミは職員さんが捨ててくれる)
なぜかそれが引き出しにもどっていたことがありました。
身に着けるのも微妙なほどボロな下着なのに。
なんで箪笥に戻すの。

2人の様子を見ていた反動で、
最近の私は、なるべく冷蔵庫を空っぽにします。
野菜室は米だけ。
肉魚や納豆は、ゼロになったら買いに行く。
モノの管理ができなくなっていくのが怖いです。

母の場合、お金の置き場所がわからなくなってしまいました。
財布がない、おろしたはずのお金がない。
あわてて探している姿が可哀そうで。
「お母さんにお金の管理なんてさせないで! 財布に2万円だけにして!」
と父には言いましたけど。
なかなか聞き入れてくれなくて。
さすがに20万が消えたときは、考え直したようでした。

不安で焦っている母を慰めながら、
「よーし、宝探しするぞー! みつけたらお小遣いもらえるよ」
小学生の子供と一緒に、部屋のあちこちを探し回りました。
イベントのように楽しんでいる雰囲気づくり。
認知症の母にとっては、不安でストレスMaxでしたから。
お父さんに怒られる、と悲しそうでした。
紙幣なんて紙っぺらなので、見つけるのはなかなか難しい。
結局、その場ではお金はでてこなくて。
2か月後くらいに、お金は見つかったみたいですけどね。

母の場合、認知症がどんどん進行していって、
トイレが無理になって、尿パッドを使っていましたが、
それの始末がわからなくなっていたのでしょう。
使用済みのが、部屋のあちこちからでてくるんです。
本人は困っていたんだろうなと、
それを見つけるたびに切ない気持ちになりました。

ある時、玄関にあるはずの母の介護シューズがなくなって。
財布やお金の行方不明は、あるあるかと思っていたのですが、
さすがに玄関の靴はノーマークでした。
いろいろ探して、シースルーの階段の下に置いてあって。
影で見えなかった。
というか、そもそも階段の下に靴を置くとは、想像の斜め上でした。

三歳児でもわかるようなことも、
わからなくなっていくのが認知症なんですよね。
靴は玄関に置く。
そんなあたりまえのことも理解できなくなる。

一夜でボケてしまうわけではないから、
薄皮をはぐみたいに、できなくなっていく。
本人たちは、ものすごく不安なんだろうなと思うんです。
自分がどこにいるのかも、家族の顔もわからなくなっていく。
なるべく安心させてあげたいけれど、
それがなかなか難しいです。



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