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ランダム単語ガチャで出た単語をテーマに短編小説書くチャレンジ③

ランダム単語ガチャというその名の通りランダムな単語を三つ生成する神サイトを利用し、出た単語をもとに短編を書いて小説力(造語)を鍛えようという試みです。今回は『射抜く』『講義』『地獄絵図』でした。












『閻魔大王国家試験対策テキスト』。通称”黒本”。

試験本番が△※§月Δ÷Θ日(数字が地獄のものなので表記不能)に迫る中、生前悪事の限りを尽くしたエリート悪人達は、黒本と文字通り睨めっこをしながら追い込み勉強に励んでいた。

「おい、今日の特別講師の元閻魔様……マジで最強のワルらしいぜ」

「過去の閻魔試験でもぶっちぎりのトップだったってよ。地雷問題1問踏んじゃったらしいけど」

「一体どんな悪事を働いてきたってんだ……」

地獄界の中でも閻魔最有力候補ばかりが集うとある学び舎にて、生徒たちは近く現れる元閻魔講師に畏れと興奮を隠しきれないでいた。


「やぁ諸君。ごきげんよう」


ギィ……ガラッと、建付けの最悪な木造のドアをこじ開けて一人の男が入室する。一瞬にして静まり返る室内。対照的に、男は禿げ上がった頭を己で撫でながら、その真っ赤な顔を目いっぱい歪ませて高笑いした。


「はっはっはっ。恐れているね君たち。無理もない。なんせ私は地獄でも例を見ない悪だからね」

「「「「「ごくり」」」」」

生唾を飲む音が塊となって空気を揺らした。

「なにせ私は………生前人間を………殴ったことがあるのだ」

「「「「「「ひええぇぇえええぇぇえ!!!!!」」」」」」

あまりにも悪。あまりにも最悪。身の毛もよだつ彼の悪事の告白に、もはや教室内のエリートたちは泡を吹く寸前まで追い込まれた。

「しかも二人だ!!」

「「「「「「………」」」」」」

泡を吹いてしまった。ほぼ全員。

「それだけじゃない。苦痛で悶え苦しませた人間たちから更に金を奪い取ったり……」

「「「「「「………」」」」」」

「或る奴らには目を光で眩ませ視界を奪い……」

「「「「「「………」」」」」」

「瘴気を撒き散らし多くの生物を狂わせ……」

「「「「「「………」」」」」」

「人間を挽肉にする寸前まで追い込んだこともあるのだ!!!」

「「「「「「………」」」」」」

「ふはははは!!!せいぜい蚊を生涯で2、3匹仕留めた……かなぁ……くらいの悪事しかしてない貴様らが、私の講義についてこれるかな!!?」

声高に叫ぶが、もうすでに教室内で話を聞いている者はほとんどいない。皆一様に泡を吹き、失神し、失禁している。

「なんだなんだつまらんなぁ!これでは講義のしようがないぞ。さっさと帰って武勇伝の執筆活動を再開………」

「「……まだ、俺たちがいますよ」」

「………なに?」


惨憺たる光景の中、ただ二人だけ。

放たれた最恐の武勇伝に耐え、意識を保ったまま屹立……いや着席する生徒がいた。

「ほう。この話を聞いてまだ倒れないとは見込みがあるな。生前よほどのワルだったと見える。…………いいだろう、聞かせてみろ、お前たちの悪事を。果たしてこの私を射抜くだけの……即ち次期閻魔にふさわしいだけの実力があるか、見定めてくれよう!!!」

二ヤリと二人は笑った。

教壇から向かって右の青年が、先に口火を切る。

「僕から……いいですか」

「よかろう。話せ」

「僕は生前………うっかり信号を無視したことがあります」

「ぐっ!!!!!な、なんて奴だ……」

「ちょっと待ってください!!僕もあります!!うっかり!!」

「な、なに!?一人だけで十二分に途轍もない悪事を二人して………」


胃液がこみ上げそうになるのをぐっとこらえる講師。


「それだけじゃない。近くを通った人間に体がぶつかって、そのままゴミ捨て場に突き飛ばしてしまったことがあります」

「ぬおぉぉお!!!ななな……何ぃ!?かつての閻魔試験であれば余裕で通過できるレベルだぞ……!化け物か貴様!」

「ちょっと待ってください!!僕もあります!!うっかり!!」

「貴様もか!!?おいおいどうなってやがる今年のルーキーは!!」

「ま、まだあります。行列が動いている最中に前へ転び、勢い余って前のおじさんのヅラを掴んでしまい、そのままひっぺがしたことも!!」

「僕も転んだ拍子に禿げたおじさんの服を掴んで、そのまま全部引っぺがした事あります!!」

「なんと……!!」

「まだまだ!!激辛ラーメンを食べたけど言うほど辛くなかったから店の中でつい大声で『言うほど辛くないねぇ』と言い放ったり!!」

「僕もです!!」

「逆にそこのラーメンがあまりにも法外なぼったくりで、ヤケクソで食い逃げもしました!!!」

「僕もです!!!!!!」

「…………ちょっと待て」


「「はい?」」


「信号無視した時、車が向かってこなかったか?」

「「はい。赤い軽自動車で、禿げたおじさんが乗ってました。轢かれて挽肉になるかと思いました」」

「ゴミ捨て場に突き飛ばしたおじさんは?」

「「禿げていました。すんごい臭くて皆悶絶してました」」

「ヅラと服をひっぺがしたおじさんはそれぞれ?」

「「禿げていました。頭に日光が反射して、周りの人がすごい眩しがってました」」

「……食い逃げした激辛ラーメン屋の店主は?」

「「禿げていました」」

「………」


そこで、二人が互いに目を合わせる。


「あれ……?お前もしかして……小林?」

「そういうお前は……中島か?」

「やっぱりそうだ!!!いやぁ地獄に来ると皆全身赤くなるから気付かなかった!!」

「本当だ!偶然ってあるもんだなぁ。……そういえば、二人で食い逃げした後結局どうなったんだっけ」

「それはお前、あの禿げた店主に二人とも……………あれ?」


今度は互いに、目の前の講師を目に映す。


「「……………お、お元気そうで……なによりです」」

「貴様ら………もう一度ぶん殴ってやる……そしてこの学校からも退学だ!!!!」

「………閻魔大王への夢が……!地獄を手に入れる野望が……!!」

「ここで一句。学び舎で 仰ぎ師怒らせ 地獄絵図」

「いや………地獄得ず・・だろう」

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