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システムから観るアニポケ

〇はじめに

本当に最後の年末企画 #PokeNarrative2022to23 
テーマは「システムから観るアニポケ

JNの総評を書く過程でキャラクターや筋書に加えて「システム」を意識するようになりました。そこでアニポケにおけるシステムについて語ります。2022年最後の語りになりますがお付き合いください。

〇システムとは

システムとは物語を構成する要素の一つです。キャラクター、筋書、そしてシステムによって物語は紡がれます。システムとはキャラクターが物語の中で活躍するための舞台(装置)と言い換えることもできます。

システムの特徴として同じシステムに則ればキャラクターを入れ替えても同一タイトルとしての体裁を保つというものがあります。

「ポケットモンスター」の基本的なシステムは「ポケモンはモンスターボールで捕まえる」などの原作ゲームがベースになっていますが、アニポケにも独自のシステムが構築されています。

〇アニポケにおけるシステム

アニポケにおけるシステムはシリーズごとに変遷しています。具体例は以下の通りです。

無印~XY:一地方移動型、ジム(リーグ)、コンテスト
SM:滞在型、スクール、島巡り
JN:拠点型、全地方舞台、RF、WCS、PM、ブイズ巡り

無印~XYまでは大体が一地方移動型とジム・コンテストがメインのシステムとして機能しています。SMからは旅路線を変更したことにより大幅なシステム変更が図られています。JNからは全地方舞台も重要なシステムとして機能しています(新シリーズでも全地方舞台は継続するようです)。

〇システムの役割

これらのシステムの役割としては、キャラクターの「導線」を明確にすることが挙げられます。サトシが次どこに行き何をするのか…システムがなければ視聴者共々迷子になってしまうことでしょう。 アニポケは長いサイクルの作品なのでそこが曖昧になると不親切な作りになってしまいます。

特に無印~XYの一地方移動型×ジム(コンテスト)のシステムは、長年親しまれたこともあってストーリーの進展がわかりやすくする役割を担っていました。しかし、SMからのアニポケはシステムを大きく転換しようと試みています。

〇なぜシステムが変更されるのか

システムを変更しようとするのはなぜでしょうか?そこにはもちろん企業としての戦略が関わってきます。ただ、あくまで創作上のことに絞ると物語の「質」を変えたいという想いがあるのではないでしょうか?

例えば「なぜ全地方舞台を採用するか」について考えると

・原作のリストラ状況を考えなくてよくなる
・ポケモンGO要素を取り入れやすい

などの理由が挙げられます。システムは物語上の慣習の発生装置でもあり、それは時に制約にもなります。システム変更は制約を解き放つ為でもあるのです。

〇システムの功罪

物語を構成する上で重要な要素であるシステムですが、一概にプラスの効果をもたらすとは限りません。

一つには「キャラが『動かされている』感がでる」というものがあります。システムが前面に出た物語はキャラがレールの上に乗ってストーリーが進行していく印象を視聴者に与えます。

例えばジム巡りであったら8個のバッジを集めてリーグに挑戦するという道のりは確定しています。その道のりの中でキャラが何を考え成長するのか…というのが物語の醍醐味ですが、決められた尺の中でシステムが優先されると味気ないストーリーになる可能性もあります。

またシステムをなぞることがキャラの成長・掘り下げとイコールではないことには留意すべきです。

例えばJNの「ブイズ巡り」ではコハルとイーブイがブイズの進化系と出会い「まねっこ」をするという手順を踏みますが、それが直接コハルとイーブイの成長に繋がるのかというとそんなに単純ではありません。

システムによって引き起こされるイベントがキャラクターを動かしストーリーは決定され、最後に我々の心を動かします。システムはあくまで手段であって目的ではないことを視聴者としても意識すべきでしょう (そういう意味でSM144話はキャラの成長とシステムがうまくかみ合った回だと思います)。

〇さいごに

1月から始まる「めざせポケモンマスター」編ではアニポケのシステムの根幹である「ポケモンマスター」についての掘り下げが期待されます。

これまでの議論を踏まえれば「ポケモンマスターとは何か」ではなく、「ポケモンマスターになるためにサトシが何をするか」が大事ということになります。

これまでの集大成ということであればそれは「何がサトシをサトシたらしめているか」というアイデンティティの問題にもつながり、ひいては「アニポケとはどんな物語か」という大きな問題にも一つの答えがでることでしょう。

サトシが何を「する」のか…最後まで見届けたいと思います。


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