【Vol.9】Shouta〜ショウタ君の話〜


ショウタ君という小学校〜高校まで同級生だった友達がいる。実際、遊ぶようになったのは高校から。

彼は私にとって初めての親友と呼べる存在であり、生まれて初めて結成したバンドのメンバーでもあった。

私がパンクロックやロックンロールを聴くようになったきっかけは音楽好きな姉の影響ではあるが、彼からも多大な影響を受けた。いつもたむろにしていたムトウ君という共通の友達の家で彼とは出会った。当時モバゲー全盛期。ムトウ君の家に集まってすることは同級生の女の子をひたすらモバゲーで探してめちゃくちゃディスってバカ笑いすること。他人をダシに使う最低の笑いである。ただ何度も何度も集まってそんなことをしていても退屈になってくる。バイト終わりいつも4〜5人でムトウ君の家に集まって遊んでいたが、たまたま私とショウタ君だけ集まった日があった。

その日、ショウタ君が自分に聞いてきた。

「GREEN DAYとNIRVANAってバンドどっちがカッコいいの?」

何故彼が急にそんな質問をしてきたのかは今となっては分からない。

洋楽に少し興味があるとは言っていた。

質問に対して私はこう返した。
「やっぱGREEN DAYっしょ」
GREEN DAYは姉が好きでその影響でベストだけは買って持っていた。
NIRVANAに至っては一曲も知らなかった。

実際、私はGREEN DAYをほとんど聴いていなかった。知らない。つまり嘘をついていたことになる。音楽のことに関しては友達に一目置かれたいが為の見栄。

「ふーん」
ショウタ君は一言だけ発してその後はPS2でずっと鉄拳4をプレイしていた。

翌日。
いつも通りバイト終わりにムトウ君の家に皆で集まる。ふとショウタ君の手元を見ると持っていたのはなんとGREEN DAYのCD。

「さっき買ってちょろっと家で聴いたけどめっちゃカッコいいね。特に2曲目。まだ全部は聴いてないから一緒に聴こう。」

GREEN DAYのインターナショナルスーパーヒッツというCD。私も一応持っていたベスト盤。今となっては無人島に3枚持っていけるならこのCDは確実にランクインする人生を変えた一枚。

私は翌日から急いでこのCDを聴きこんだ。ショウタ君が知っていて私が知らないということはあってはならない。どこまでも私は見栄の塊であったことは間違いない。

好きな音楽を共有できるというのは素晴らしいマジックを起こす。そこまで好きでもなかったGREEN DAYというバンドが世界一かっこよく聴こえてくる。

私はゆずというアーティストが好きで、アコースティックギターを持っていた。エレキギターに興味はなかったのだが、GREEN DAYを聴きこむにつれエレキギターがめちゃくちゃ欲しくなった。

ハンバーグ屋さんでバイトして貯めたお金でやっと手に入れた。

初めてのエレキギター。それにつられてなのかいつのまにかショウタ君はベースを買っていた。

「お前ら最近楽器やってるな。お前らがもしバンド組むときは俺がボーカルな」

家主のムトウ君が何気なく発したその言葉を無視して、私たちはムトウ君がお風呂に入っている間に人生初のバンドをこっそり結成したのである。もちろんムトウ君は抜きで。

周りの友達は皆かわいい女の子をモバゲーで探していた。私とショウタ君はパンクロックという不思議な音楽に出会ってやっと親友と呼べるような仲になった。

そこからは二人だけで遊ぶことが増えて、興味も女の子からロックの歴史やレコードに変わっていったのだった。

マジでモテなかった。
周りはどんどん彼女を作り、女の子と遊んでいた。

私たちはそんなことお構いなしに隣町のタワレコに1時間かけて行っては視聴機で毎回新譜をチェックし、古本屋に行っては昔のクロスビートやらドール等の音楽雑誌を手に入れお目当てバンドのインタビュー記事を読み漁って当時はこんな気持ちだったのかと想像を膨らませた。

二人でいる時間が長過ぎて母親にホモ疑惑をかけられた。

そうやって始まったバンド。
彼と組んだバンドは解散してしまったが、多感な時期にショウタ君と出会って私は今だに音楽の魔法にかかったまま。あれからもう15年が経っている。

彼が今どこで何をしているかは一切分からない。
連絡先も知らない。最後に会ったのは彼と組んだバンドが解散したとき。10年以上も前だ。


短くて濃密な時間。
別の言葉で表せば青春ってやつだ。

そんな気持ちを歌にして私はステージに立って歌を歌っている。


英題 : DAYS
邦題 : 青春の日々
作詞作曲 Kazuki-Chi

お前と二人で駆け抜けた
青春の日々が終わりを告げる
門出の別れに涙をして
繋いだその手離さないように

季節は変わり春が訪れ
そして僕らは旅立っていくのだろう

「やりたいことをやってみようぜ」
「やりたいことをやってみようぜ」

お前と二人で駆け抜けた
青春の日々が今、始まる



THE GET ACTiONS
Gt.Vo Kazuki-Chi



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