【短編】Princess's Knight【恋愛?】

 やぁ!実はみんなに僕の『自慢の彼女』を紹介したいと思うんだ!

 僕の彼女はとっても気が利くけれど、どこかあどけない仕草が可愛くてたまらない子なんだ!
いつでも僕に「大好き♡」と言ってくれるし、料理だってとっても上手。
これまでオタクで冴えなかった僕の前に舞い降りた、まるで天使みたいな女の子なんだよ。
 彼女のおかげで身だしなみも大分よくなったし、その分彼女が欲しがったものは僕が受け取ったものの倍返すつもりであげているんだ!
彼女はとってもおねだり上手でもあるしね。
あの子に「あれが欲しいな・・・・・・だめかな?」なんて可愛い瞳で言われたら、いくらでもあげちゃうよ!
 ただ、彼女はとっても優しいからプレゼントしたぬいぐるみとかを仲の良いSNSの友達にあげちゃう事もあるんだけれどね。
優しいから、相手のお願いを断るのが苦手なんだよね。
僕が護ってあげないと!
 けれど、そんな順調な僕らにも悩みがある。
僕たちは同じ大学のサブカル中心に取り扱うサークルで出会って付き合ったんだけれど・・・・・・。
なんと同じサークルの男たちが、彼女に言い寄っているみたいなんだ!
確かに、僕と彼女が付き合っている事はみんなには秘密にしている。
彼女が「いきなりだとみんなビックリするから」と気を遣っているから仕方ないとはいえ、僕は内心面白くないかな・・・・・・。
 知識量に尊敬していた先輩も、趣味も波長も合う同期も、今は僕の敵みたいなものだ。
だって彼女を護れるのは僕だけなんだからね!
しっかりと目を光らせておかないといけないな!

 と、思っていたんだけれど・・・・・・。
ある日、彼女が欲しがっていた限定品のフィギュアを調達しに出かけていた時だ。
なかなか見つからなくて、思いつく限りの町にある店を僕は行脚していた。
やっと手に入れて、ほっと一安心。どこかのコーヒーショップで休もうと思っていたその矢先。
 「女友達と出かけてくるね」と言っていたはずの彼女が、サークル仲間の1人と楽しげに腕を組んで歩いているのを見つけてしまった!
もちろん、その男も僕の大切な彼女に言い寄っていた1人だ。
あまりにショックな光景に僕は目の前が真っ暗になって、僕たちの愛の巣にどう帰ったのかすら覚えていない。
 その代わり、家に帰って落ち着いた瞬間一気に頭に血が上る感覚がした。
まずは彼女に事情を聞かなければならない。
どうしてこの僕に嘘を吐いたのか。どうしてあんな男とデートなんてしていたのか。
彼女の恋人である僕にはそれを知る権利がある!
 そうして彼女が帰ってくるのを待ち、弾んだ声で「ただいま~」と宣う所に詰め寄った。
最初彼女はなんの事か分からないみたいで、ずっとオドオドしていた。
けれど、僕が彼女が嘘を吐いてサークル仲間とデートしている所を見たのだと理解すると、途端にポロポロと涙を流し始めたんだ。
「ごめん、ごめんね・・・・・・私、君に酷いことしちゃったよね。でも、でも、本気じゃないの!私の恋人はもちろん君だよ!」
「じゃあなんでアイツと!」
「実は、強引にデートの日付を決められちゃって・・・・・・大事なサークル仲間との仲を壊したくなくて、断れなかったの・・・・・・。」
 彼女のこの言葉を聞いて、僕は反省した。
この子を護らなきゃいけない僕が、どうしてこんなに泣かせてしまっているのだろう!
「大丈夫だよ。」
僕は泣いている彼女を優しく抱きしめる。
「君は僕が護る。だって僕は君の恋人なんだから。」
「嬉しい・・・・・・!でも、無理はしないでね?私、みんながいるあのサークルが大好きなの」
 なんて彼女は良い子なんだろう!
今日一日恐ろしい心地だったろうに、こんな事が言えるなんて、やっぱり彼女は天使みたいだ!
「わかってるよ。でも、君にした仕打ちはどうしても許せないよ。そろそろ打ち明けよう。僕らのこと。」
僕のこの言葉に対して、彼女はしばらく悩んでから「わかった、みんなをビックリさせちゃお!」と笑顔になってくれた。
僕の大好きな笑顔だ。

 翌日、彼女は「後からサークルに行くね」と言って僕を送り出してくれた。
今日こそはサークルの連中にハッキリとした事実を突きつける!
サークルの部室に入ると、皆「おー」といった感じに上の空で僕に挨拶をする。
昨日彼女に無体を強いた男も素知らぬ顔で挨拶をしてくる。
さらにはその当の本人が、彼女の気も知らずに「あの子まだかな、おまえ知らない?」などと僕に言ってきたのだ!
流石にこれは彼女を待てないと僕は男に詰め寄る。こんな男から彼女を護るんだ!
「おい!昨日あの子を無理矢理連れ回してただろ!」
「は?」
「僕は見たんだぞ!あの子からも事情は聞いたしすっとぼけても無駄だからな!」
「いや待てよ何言ってんだおまえ」
「まだとぼけるつもりかよ!この最低野郎!」
「だから何をだよ!?そもそもあの子は俺の『彼女』だぞ?」
 目の前の男から出てきた発言に、僕は目の前が真っ赤になる。
「そんなはずない!!彼女は僕の恋人だ!!」
ふざけるなよこのクズめ!二度と彼女に近づけないようにしてやる!
そう考えて僕は相手に掴みかかった。
「うわっ!!やめろ!!」
「彼女は僕が護るんだ!!おまえみたいな最低なクズから絶対に護ってみせる!!」
「何言ってんだよほんとに!いい加減にしろよおまえ!」
相手も抵抗してきて僕たちは彼女を巡る乱闘を始めた。
僕の心はさながら姫を護る騎士のようだ。
 「お前らやめろ!暴れてんじゃねえ!!」
そんな僕らを止めたのはサークルの会長だ。彼女に唯一言い寄っていなかった漢だ。
流石に会長の言うことは聞かざるを得ない。
僕たちはお互いを掴む手を離して、大人しくなった。
「で、お前たちの言い分はなんだ?聞かせてみろ」
そして会長は僕たち二人の話を静かに聞いてくれた。やっぱり彼は頼もしい漢だ。
だけれど、僕も最低野郎も主張は同じ。
「自分はあの子と付き合っていた。恋人同士だった。」
さらには同じ事を言い出す奴が、サークルの中から他に何人も!
 とまどう僕らを見て会長は大きくため息を吐いた。
「やっぱりか・・・・・・これは止められなかったオレの責任だ。あの子、お前ら全員に嘘吐いて貢がせてやがったな」
会長のこの言葉に僕らは絶句。急いで僕は彼女と一緒に住んでいる事を告げた。
「お前、確か親が結構金持ってて割と良いマンション住んでたよな?確かオレたちの中では格段に良い部屋住んでたはずだ。そこを狙われたんだろ。」
会長はそこまで言うと、改めてすまん、と頭を下げた。
 僕はいくら会長の言葉でも信じられなかった。
だって彼女は僕の事が大好きなはずなんだから。
だって僕たちは誰よりも幸せなカップルのはずなんだから。
だってあんなに僕たちは・・・・・・
 震える手で彼女にSNSで連絡を取ろうとする。ブロックの文字が見えた。
電話を掛けた。「お掛けになった電話番号は・・・・・・」
僕は思わず部室を飛び出す。後にサークルのみんなも付いてきた。
たどり着いた僕の部屋はもぬけのカラ。
僕のコレクションや家電すら無くなっていた。
思わず膝から崩れ落ちる僕たちは、ただただ呆然と会長の謝罪の言葉を聞いていた。
僕には、自慢の、彼女が・・・・・・


 今回は思ったよりも早かったけど、まぁまぁ上手くいったかな?
なんとかカモの部屋から金になりそうなモノ、ぜぇんぶ売り払えたし♪
一人釣れねぇヤツがいたけれど、私を止められない時点で役立たず。
なーんにも出来ずにオイシイ所をしっかり確保させてもらいましたとさ!
「おーい、こっちこっち」
「きゃ~ん!会いたかったぁ♡」
私の大切でだぁい好きなダーリンに思わず飛びつく。
あ~、やっぱりダーリンは最高!
私の『自慢の彼氏』はとってもステキ・・・・・・♡


後書き
やっとこさ書けました。
こちらも友人に提出した「オンナとおとこ、について展」の原案用短編小説になります。
今回は前回までとは打って変わって地獄みたいな話ですね。(?)
でもこういうのは現実が先にあるので現実の方が地獄。
イメージ元になった曲が今回もありまして。
トップハムハット狂さんの「Princess♂」を聞いてふと、大量の男の上で笑う女性、というイメージが浮かんだのでオタサーの姫話になりました。
私は過去にオタサーの会長やってたんですが、姫的な子はいなかった……かな?と思います。
先輩曰くそれっぽい子は居たようですが、よく分からんかったです。(会長失格では?)
女性1人みたいな状況じゃなかったですし、かなり濃い人が多いサークルだった思い出があるので。
だもんで、こういったゴタゴタは運のいいことに話に聞く分に終わるだけでしたが、いやはやネカマといいオタサーの姫といい、男性オタクは性別が関わると途端に悲しい生き物になるイメージがありますね……。
とはいえ、この話の姫もただ搾取する側の人間では無いかもしれない……?というのが今回のオチ。
救い?そんなもの……うちにはないよ……
現実にないからね。


しかし父親の誕生日にこんな話投稿するのもどうかな……と思わないでもないです。
まぁできたもんは仕方がない。この世に送り出しましょう。

それではまた別の記事でお会いしましょう。
俄雨(にわかあめ)でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?