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notte stellata 3/10現地感想

2023年3月10日。

私は生まれて初めて、宮城県仙台の地に降り立ちました。
そこは、羽生結弦選手のファンが「聖地」と呼ぶ場所。
羽生選手の生まれ故郷であり、プロとなられた今も拠点としている地です。

羽生選手のファンになってから、ずっとずっと、仙台に行ってみたいと思っていました。
なかなか機会に恵まれなかったのですが、今回notte stellataが仙台で開催され、なんと体操界のキング内村航平さんとコラボすると聞きつけた時に、「これは行かなきゃ一生後悔する!」と思ってチケットを申し込みました。

なんとかチケットを手にすることができ、この日を心待ちにして毎日過ごしてきました。

だいぶ遅くなってしまいましたが、notte stellataを現地で観てきた感想をここに記録しておこうと思います。


聖地、仙台


「ついに、ついに仙台にやってきた!」

東北新幹線から仙台駅のホームに降り立った時の感動たるや。

5年越しの夢が叶った瞬間でした。

人類が初めて月に降り立った時もこんな感動だったのかな(大袈裟すぎる)?

新幹線からホームに一歩踏み出した時、喜びのあまり身体が一瞬震えたことを思い出します。

仙台駅に降りてから見る景色は全て、羽生選手がいつも見ているであろう景色と一緒なんだな…とか思うともう涙が出そうに感動してました。

歩くだけで足元がフワフワするような、そんな不思議な感覚もありました。

皆そうじゃないのかな?
仙台に着いただけでこんな感動するのは私くらいでしょうか…?


しかし、そんな喜びにいつまでも浸っている時間は無く。
開演に間に合うように予定をこなすべく、急いで地下鉄に乗り換えて国際センター駅へ。

そこで開催されていた「写真とポスター展」をじっくりと鑑賞しました。

念願だったモニュメント(国際センター駅前にある、羽生選手のオリンピック金メダルを記念して造られたもの)との記念撮影も抜かりなくこなし、

そのあとは仙台駅に戻ってシャトルバスに乗り、利府町にあるセキスイハイムスーパーアリーナへ。

会場前ではたくさんのフードブースが並んでいてどれも美味しそうなものばかりでしたが、行列がすごいのととにかく時間が無かったのでグッと我慢して、
ささっと入場列に並びました。

入ってすぐ、目の前のステージ中央にリンクが張られてあるのが見えました。
大きなスクリーンが設置されており、リンクが綺麗な青い色に染まっていました。

これからどんなショーが始まるのだろう、ととてもワクワクしました。

私の席はロングサイド中央よりのとても見やすい席で、2月にあった東京ドーム公演よりは確実にリンクに近く、滑っている人の表情も見えそうな位置でした。

これならオペラグラスも必要なさそう、と判断し、一回も使いませんでした。

notte stellata



ショーが始まりました。
スクリーンに星空が映ります。
3.11の星空なのかな…。美しい星たちでした。

ここでサプライズ。

いきなり登場してきたのは、notte stellataの衣装を着た羽生選手。

歓声があがります。

一発目からノッテステラータなのね!
大トリで演じるのかなと思っていたので、早速このプログラムがお披露目されたのは驚きでした。


GIFTの時よりリンクまでの距離が近かったため、
ショーを見る上でこの会場ならではの気づきがたくさんありました。

そのひとつは、「音」です。

リンクから聴こえるのは、羽生選手のスケートの音。

エッジが氷を削る「シャーッ」
ジャンプを跳んだ時の「シュッ」
着氷した時の「カツッ」
スピンした時の「シュルシュルシュル…」

音楽と共に聴こえるそれらの音が絶妙に混ざり合い、耳に心地よく、目の前で滑る羽生選手の存在のリアルを私に感じさせてくれます。
一音も聴き漏らすまいと、じっと耳を研ぎ澄ませていました。

次に、衣装の煌めき。
照明に当たった時にきらめく衣装の光は、眩しいくらい。
照明が当たらない時も、暗闇でキラリと光るその色は、銀色でした。

スピードにのせてスケートする姿を追いかけるように、そのキラキラが少し遅れて輝くのです。残像のように。

それは美しい光景でした。
ディズニーアニメの魔法の光のようでした。

ティンカーベルの妖精の粉だったり、
シンデレラがフェアリーゴッドマザーに魔法をかけてもらった時のような。
私にはそう見えました。

小さい頃ディズニーアニメが大好きでたくさん見てきたせいなのか?
幼少期に憧れていた魔法の光を自然と思い出していました。

羽生選手から放たれるたくさんのキラキラした光達が、
一気に私を非日常へと誘ってくれました。


そして、演者の表情。
時折強く当たる照明の中、羽生選手がこちらをむいてジャンプを着氷した時に、一番よく表情が見えました。

遠くからでもよく見えたあの正面からのお顔…
確かに肉眼で見た。

綺麗だった、はずです。

「はず」というのは、もうだいぶ私の記憶から居なくなってしまっているから、こんな書き方しかできないのが悲しい。
TVを通してじゃなくて、誰かが撮った写真を見るんじゃなくて、自分の目で見たというあの羽生選手の姿。

忘れたくないのに。

日が経つにつれてどんどん霞の中に消え去るようにして居なくなってしまう私の記憶。
脳内のシャッターを押して永遠に留めておきたいけれど、到底無理なんですよね。

確かに羽生選手を「この目で見た」という記憶はあるのに、事実なのに、もう何十年も前のことのように消え去っていく記憶。

忘れてしまった記憶をもう一度取り戻したいと何度も何度も願ってしまうから、また繰り返しアイスショーに足を運んでしまうのですよね。

美しい記憶は永遠じゃないと、儚いものだと分かっていても…。


あともうひとつ。
一番最初の演目ということもあり、リンクにキズのついていないまっさらな状態のところに羽生選手が滑るので、羽生選手がつけたスケートの跡をよく見ることができました。

特に印象に残ったのが、スピンの跡。
すっごく綺麗な円を描いていました。

綺麗な円い跡が、次々と羽生選手のスピンによって氷上に描かれていくさまに目が離せませんでした。

他でもない、羽生選手が描く跡だからこそ、私の目には特別なものに映ったのです。

それは完璧な美しさでした。

夏の王と冬の王


このショーのハイライト、
ついに内村航平さんとのコラボが全貌を脱ぐ時がやってきました。

荘厳な音楽にのせて登場したお二人、なんと揃いの衣装で登場。

まぁ…会場は大騒ぎでしたね。
「GIFT」から声援OKになってくれて良かったです。

声援NGのままだったら、この凄まじくレアなお二人揃っての登場に
声にならない声しかあげられなかったなんて、そんなのもう拷問レベルです。

そして予想を遥かに超えるお二人の演技のかっこよさ。
こんなの黙って見てるなんてムリ。
会場中大興奮のるつぼです。

オリンピック二連覇を成し遂げた、夏の王と冬の王。
そのコラボを見た私の第一印象として思い浮かんだのは、

「これは、『共演』じゃなくて、『競演』だ」

です。

『競う』という字を使いたくなるような、そんな空気感があったのです。

最初二人が交互に演技するのですが、
「俺はこんな技ができるんだ。お前も見せてみろ」
と言い合いながら演じているような気がしたのです。
(もちろん、こんな荒い言葉遣いはお二人はしないんでしょうけど笑)

スケートと体操、お互いが生業とする技術を見せ合って、
バッチバチに競い合ってる緊張感がありました。

その緊張感に痺れるものがありましたね。

そんな『競演』の中、内村選手がステージ床中央に置かれたあん馬のような台の上で旋回をしてみせ、それに合わせて羽生選手がスピンをしてくれるという『共演』も見せてくれました。

その『共演』がまた見事で…。
ショーが始まる前に、一体どうやってスケートと体操とでコラボするんだろうと思っていたのですが、「そう来たか!」と腑に落ちる思いがしました。

確かにスケートのスピンと体操の旋回は、同じ動きをしているように見える。
新しい見せ方だな、と思いました。

演技が終わった後、お二人がグータッチしてお互いを称え合っている姿を見て、胸がグッと熱くなりました。

内村航平さんの個人演技


内村さんがおひとりで演技する場面も、かなり印象に残っています。

体操の床演技を見せてくれたのですが、
あの演技が始まる直前、床の一番端に立って集中している内村さんの姿、
それはそれはものすごいオーラを感じました。

内村さんの集中の気配が会場全体を満たし、見ている私たちにも伝染したような気がします。

さすが、体操界のキングです。
この方も羽生選手と同じで、尋常じゃないオーラの持ち主なのだということが現地にいてよく分かりました。

体操の演技を初めて見る、ということもあって、これから何が起こるんだろうというただならぬ緊張感がありました。

あのショーの中で一番沈黙が場を支配した瞬間だったかもしれません。
くしゃみひとつ、咳払いひとつもしてはいけないような雰囲気があの場にありました。

内村さんが技を決めていく毎に感嘆のため息が漏れ、その美しさに驚きました。
さらに驚いたのが、内村さんの演技中の床を蹴る音。

「バンッ!!バンッ!!」
と、会場じゅうに大きく響くその音が鳴る度に、
内村さんの身体はクルクルと回り、ピタッと着地していました。

恐らくですが、体操の演技を生で見たという人は、私を含めかなり多かったのではないでしょうか。
演技終了後の歓声が凄かったことを記憶しています。

凄いものを見せてもらいました。

ダイナマイト


急にスクリーンに羽生選手が現れてビックリしました。
黒いスーツ姿でダイナマイトを踊る羽生選手が大写しになっている…!

もう、直視できないくらいかっこよすぎて、

「こんなかっこいい羽生選手をたくさん見てしまったら私はどうにかなってしまう!」

と、謎の焦燥感にかられていました笑。

さらに、リンクにも大きい羽生選手が大写しになるではないですか。しかもプロジェクションマッピングで三分割されていたので、3人ぶんも。

一体、どっちを見たらいいの!

頭の中が大混乱。

先程の羽生選手と内村さんのコラボの時とはまた状況が違います。
お二人の『競演』中は順番に演技を見せてくれていましたから、どっちを見たら良いかという迷いは発生しなかったんです。

しかし、このダイナマイトに至っては、スクリーンとリンク両方に羽生選手が映し出されているのです。

どっちもいい。
どっちも捨てがたい。
究極の二択。
いけない、迷ってたらあっという間に終わってしまう!

私は咄嗟に、よりクリアに見える(と判断した)スクリーンを凝視することを選びました。

普段優柔不断な私が秒で即決しなければならない…
これは何の訓練なのか?(訓練じゃない)

現地民にとっては、的確な状況判断を求められるハイレベルなプログラムでした…(?)。

DOIで少しだけBTSを踊ってくれたその時から、いつか踊っているところが見たいなと思っていたので、それも見事に叶えてくれて嬉しい限りでした。

この時ばかりはロングサイドにいたことを残念に思いましたね。
ショートサイドからだったら、リンクのスケーター、スクリーン、そしてプロジェクションマッピングを一度に楽しめたでしょうから。

春よ、来い


丁寧に丁寧に滑っているのが分かりました。
途中、ハイドロしながら氷のかけらを手に集めて、空中にパッと投げる振りがあるのですが、
羽生選手の投げた氷のかけらたちがよく見えました。

一つ一つが照明にあたって、クリスタルのようにキラキラと輝いて、そのクリスタルが舞い落ちる中春ちゃんはスピードをぐんぐん出して滑っていきました。

そしてイナバウアーへと。

春ちゃんのイナバウアーは本当に綺麗ですよね。
伸び伸びとしていて、雄大で。
舞い落ちる桜の花びらを受け止める川のよう。

ホープアンドレガシーはより自然に近い存在のように見えますが、
春ちゃんは、桜の花の精霊なんだけどどこか人間らしさもあって、

希望を胸に進んでいく人の強さみたいなものも感じられるプログラムだと思います。

最後の挨拶


エンディング終わり、挨拶でマイクを取った羽生選手の表情はとても穏やかで。
いつもよりゆっくり、丁寧に、大切に言葉を伝えようとしてくれているのが伝わって、胸がジーンとしました。

このアイスショーはきっと、羽生選手がずっとやりたいと心に秘めてきたことの一つだったのではないかなと思います。

故郷の地で、震災をテーマにしたアイスショーを開催する。
時期も、3月11日前後ということに意味がある。
なので、現役時代は試合があるので実現不可能だったことを、プロになって真っ先に叶えた。

なので、このショーに対しては並々ならぬ覚悟と気合が入っていたのではないかと推察します。
その気持ちが、最後の挨拶で十分伝わってきました。

他のスケーターさんたちの演技もとても素晴らしく、メッセージ性だけでなくエンターテインメント性も充実していて、内容も時間的にも非常にバランスの良いアイスショーでした。

あの日の星空



帰りのシャトルバスを待つ間。
寒さに震えながら見上げた星空はとても綺麗でした。

星は詳しくないけれど、オリオン座とシリウスくらいならわかるので、「あれがシリウスかな?と思いながら見た星がありました。
夜空の中で一番に輝いていました。

3.11の夜、羽生選手が見上げていた星空…。

その時の彼の心境は、テレビや色んな所で語ってくれているけれど、本当の本当の気持ちは羽生選手自身にしか分からないこと。

でも、やっぱりほんの少しでもいいから、想像して、その心に寄り添って、羽生選手が感じたという希望を私も抱きたいなと考えながら、星を見つめていました。

被災していていない私の拙い想像では全く及ばない程の悲しみが、12年前にここにあった。

プロローグで流れたショッキングな映像を思い出します。
瓦礫の上に立ち茫然とする方のあの映像…。

羽生選手の影響でいくつか震災展に行って、展示を見た時に感じたあの恐怖…。

目を背けたらダメだ。

知らないことを知る。
少しでもいいから思いを寄せる。
忘れない。

私にできることはほんのちょっぴりだけど、
羽生選手の活動をきっかけにして震災や防災に対しての知識はだいぶついたと思います。

そのお陰で、私は私の身近にいるひとを大切にしようと思えるようになったのですから。

いつ何があるか分からない世の中で、
一日一日を大切に生きよう。生きたい。と思えるようになったのは羽生選手のおかげです。

被災していない私が多くを語るのは本当に烏滸がましい、という思いはどうしても持ってしまうのですが、
それでも、
私にできることを少しずつでもやっていけたらいいな、と思います。


思いきって仙台まで行けてよかった。
この日の記憶も、いつまでも私の心の中でキラキラと輝き、
私の生きる糧となっていきます。

羽生選手がくれる記憶は、私にとっていつも特別。
胸の奥の大事な場所に、いつまでもしまっておきたい宝物です。

notte stellata、仙台での聖地巡り、そしてあの日見上げた星空。

いつまでも忘れたくありません。


終わります。

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