永井荷風:『白鳥正宗氏に答るの書』

今では正宗白鳥という名前を聞いたことがあるという人は非常に少なくなったと思う。
私も、実のところ、正宗白鳥氏の作品はほとんど読んだことはなく、自然主義派に属した評論家といった程度の知識しか持ち合わせていない。
ましてや、ここで永井荷風先生が怒りまくっている中公公論に載った正宗白鳥氏の文章がどんなものであったかは知っていない。

ただ荷風先生の文章から判断するに、江戸時代の文学を評価する荷風先生の姿勢を、当時流行の自然主義派の立場から好き勝手に批判しまくったもののように思える。確かに自然主義派なる人々の書いた小説などは学校の授業でも教える位流行ったもののようだが、読んでもあまり面白くなく、そう記憶に残っているものはない。

私もいまでは荷風先生と同じように、江戸時代の文化・文学を評価し面白く思っているので、その立場に立って明治時代を眺めてみると、明治とは結構闇市のような時代であったように思えてくる。
訳も分からずに西洋の文化を取り入れることに狂奔し、江戸を否定することが全てのような時代であった。まぁ理念なきクーデターを起こした薩長軍団からすれば、江戸を評価することは薩摩・長州を否定することにつながりかねないから、政府を挙げて推進したかったこともあろうが…

今の時点に立って振り返れば、自然主義派なんてものは今の YouTuber のようなものだろう……どちらも時代の空気にあってそれなりに持て囃され、それぞれ、けっこう迷惑系が紛れ込んでいたりしてw


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