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ヒモと遊ぼう

ニートでヒモの男の子と仲良くなりました。
夜のお店で働く飼い主さん(=彼女)の庇護のもと、飼い主の仕事中によそで遊んでいるクズです。
自由と不自由の狭間で生きていて面白いので記録します。


ヒモ君は高校時代から年上女性に数万単位のお小遣いを貰いながら生きているそうで、ママ(血縁はないほう)にお世話されたり、現在の飼い主のような女性にお小遣いを貰いながら、毎日寝て食べてゲームをして漫画を読んで引きこもって過ごしているそうです。
生まれながらのヒモだね、と初対面で感心しました。
女性関係の倫理観がグズグズなクズの知り合いは多いですが、みんな働いててえらいなと思えました。


飼い主の出勤時間に、位置情報共有アプリを入れられている支給品スマホを自宅に置きっぱなしにし、遊び用隠しスマホを持って私に会いにきます。
飼い主にバレたらヒモ関係は切られるので行き倒れる。だから身バレが一番怖い。と言っていました。東京出身の私は現住所で知り合いがいないので安心して遊べて良いそうです。
もし彼女がお客さんなり別の男なりと肉体関係を持っていたらどう思うの?と聞いたら「え、無理。汚いと思う」と言っていました。


「彼女・・・のことは好きなの?」
「わかんないなあ、生命線だから切られたらやばいのは確かだけど」
「飼い主とヒモって立場的にはどっちが上なの?」
「俺が上だね」
ああ、やっぱりそうなるんだな、と思いました。
私も若い時分の経済力でなら男の一人や二人養えたと思いますが、どうせヒモのほうが強い立場になって辛い思いをするだろうなとは察していたので、アンサーが得られて良かったです。


「私もお客さん取ってほぼ全員リピーターになるけど、お金もらってるのに私のほうが立場強いから、ていうかお客さん操ってるから、それと同じ感じか」
「操るな」
他人への解釈が近かったので、めちゃくちゃなスピード感で仲良くなりました。


ヒモとして飼われているくせに、まだよそで遊びたいというのはどうかしていると思いますが、私にそれを言う権利はありません。夫と子供がいてお客を取ってセフレもいるけどまだヒモと遊ぼうとしている私には。
「治らないんだよねこれは」
「病気だからね。あ、でも私昼職してるわ。ヒモ君のほうがクズ度上だわ」
「急に突き放された」


ママ活もヒモ生活も言うなればセックスワーカーなので、セックスは抜群に巧いです。「女風っぽい」とさえ思います。お金を介してはいませんが、なんとなく「これやりたくてやってるのかな?マニュアル的にやってる?」と思うような、隙のない前戯をして、本番にも強いので、ちょっと引いています。女性を悦ばせるセックスをしてきました!という感じが強いセックスです。
「こういう彼氏絶対嫌だな・・・」と思います。


とはいえ育成されたヒモを一時的にお借りして遊ぶのは非常に楽しいわけで、現在の飼い主さんと過去の育成者さんたちには脚を向けて眠れません。
ヒモ育成はお金かかるから、育てるのは無理だからね。


へらへらしていて世間や労働義務を果たしている社会人を舐めているようにも感じるヒモ君ですが、「絶望感しかないよ・・・」と憂えることも口にします。
こんな田舎でやりたいこともなく、好きかわからない女に居場所を常に知られながら生きる。働いている友達には軽蔑されるし、もっと良い条件で飼われているヒモ友達(なにそれ)には嫉妬する。
ヒモとして生きるのも適性が必要だと思いました。承認欲求から遠ざかると新たな自己実現を求めて飼い主以外にも女と遊ばないと気が済まないのかもな、と思ったり。
ただの性依存かもしれませんが。


私もこの田舎の土地で閉塞感を抱えて常に死にたい気分で日々を過ごしているので、ヒモ君の「私以上に生きる意味に囚われていそうなメンタル」に共鳴を感じて、うっかり愛しさを感じました。
「そんなに長生きできないだろうから、将来のこと考えなくて大丈夫だよ」
「男も女も敵に回す生き方だから、30前には誰かに刺されて死ぬよ」
と言ったら笑っていました。


私自身も男に寄生する生き方をしてきて、サービスの対価としてとはいえ体一つで稼いできたので、話しているとお互いに「そんな経験したことないよ」という感想を抱きます。
でもヒモ君は私を絶対に軽蔑しないし、私もヒモ君を軽蔑しません。笑いながら人としてダメな部分を晒せて気楽だなあと感じます。知り合えて良かったなあと心底思います。
誰かに刺される前にできるだけ多く遊んでおきたい。刺されるのは私かもしれないけど。

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