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吹替で観るべき洋画

映画が結構好きです。主に洋画派。
映画を好きって公言するのはちょっと勇気が要るので保険を掛けますが、一番好きな洋画は「パルプ・フィクション」、邦画は「CURE」です。

タランティーノが大好きで全作観ていますが、私の住む田舎で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が上映された際、上映は日本語吹替えのみでした。
当時字幕派だった私は「田舎の人間の知能レベルに合わせるから吹替えしかやらないんだ」と絶望して、字幕版を上映する映画館まで片道3時間かけて行きました。

上記の理論は事実だと思うのですが、最近はタランティーノ作品は吹替えのほうが良いなあと感じています。
パルプ・フィクションは字幕に有名な誤訳があり、吹替えでしか観ないのですが、タランティーノ節の効いたセリフ回しは字幕で視覚的に追うと目が回りますし、意味が分からなかったりします。
そしてやはりプロの声優の演技には脱帽です。このキャラクターはこういう人物像なんだなという奥行きが生まれて映画に没頭できる。

そういうわけで最近はもっぱら吹替えで映画を楽しむのですが、字幕のほうがやはり元には近いわけで、好きな作品は両方で観て違いを楽しんだりします。
比べてみてやっぱり吹替えのほうが良いな!と思うのが以下です。


・せりふ回しの癖が強い・速い・語数が多い映画

タランティーノが代表的かと思いますが、字幕を読むために映画を観るのではなく映画を観るために映画を観たい、という時は吹替えです。

ウェス・アンダーソンも大好きで全作観ていますが、全カット写真集にしたい壮麗な世界観に対してセリフが多く無駄な話(超重要)も多いため、字幕を追っていたら画を見切れません。
特に「フレンチ・ディスパッチ」は冒頭からウェス・アンダーソン節が全開で目まぐるしかった(最高でした)。
不思議な世界観を有するので、声優の演技力に頼るほうが全体理解が易しくなります。

・コメディ映画

コメディもセリフが多いし速いの代名詞で、ザ・アメリカンな言い回しやジョークは字幕だと私の頭では理解しきれません。
「キューティ・ブロンド」大好きですが、リース・ウィザースプーンの吹替えで松本梨香に及ぶ人はいないと思います。エルというキャラクターを愛せるのは吹替えの印象が良かったからです。
画面に同時に映る人数が多く、会話が被ったり複数人が同時に喋る場面の多い作品は吹替え任せです。

・同性愛映画

同性愛をメインテーマに据えた映画は大体セックスシーンが登場します。
そういう艶っぽいシーンは日本人声優(特に男性)はめちゃくちゃうまいですね。BL文化浸透率の賜物だと思います。
「君の名前で僕を呼んで」と「赤と白とロイヤルブルー」を何度もリピートしているのですが、「君の~」の淫靡な性も、「赤と白と~」のコミカルで軽快な下ネタ合戦も、声優のキャラクター解釈の努力を感じます。
「君の~」でオリヴァーの吹替えで、初夜シーンに「脱げ脱げ脱げ」と呟くのは原作に近く性的で感動しました。
レズビアンだと「アデル、ブルーは熱い色」が好きですが、吹替えあるのかな、こちらは字幕のみ視聴。基本的に男性の同性愛が好きなためです。


・フランス映画

フランス語って日本語に次いでうるさい言語だと思っています。子音も母音も発音するからかな。
何を話していても怒っているように聞こえるし、個人的に耳障りなので日本語で聞くようにしています。
イザベル・ユペール大好きですが、セリフが全部怖く聞こえる。


逆に絶対字幕で観るべき!という映画もあります。以下。

・ミステリー、サスペンス、ホラー

これらは緊張感が俳優の肉声から伝わるほうが臨場感を味わえます。
あまり難しい言い回しはないし、喋るスピードも速くなく、比較的静かなシーンが多いので、キャラクターの感情も読み取りやすいです。
吹替えの必要性がなければ原則字幕視聴でいいと思います。

概ね言えるのは、吹替えになるとキャラクターのもつ雰囲気が若干柔らかくなるということです。
「ボーン・アイデンティティ」は吹替えで観るとジェイソン・ボーンは優しさを秘めたキャラクターだと感じますが、字幕だと終始怒っている印象です。もちろん声優が変われば印象も変わりますが、声優って美声ですしね。

デビッド・フィンチャー作品も全部観ているのですが、暗い画面が多いので白文字の字幕が映えます。
「セブン」のモーガン・フリーマン、「ファイト・クラブ」のエドワード・ノートン、両方出演のブラッド・ピット、この3名の声が好きなので肉声で聞きたい映画です。「セブン」はケビン・スペイシーの不気味さを余さず味わうには元音声が良いですね。といっても午後のロードショーで吹替え放送していたら観ちゃう。

とりわけ「ささやき」と「絶叫」は元の俳優の声で再生するのが良いです。
良くも悪くも吹替え音声は映像から浮くので、際立った小声と大声は口元の動きと完全一致しているほうが没入できるような気がします。

・吹替え陣が下手

芸能人が吹替えをする際などによくありますが、プロとは明確に違うわけで、これを聞かされるくらいなら字幕なしでも元音声で聞くほうがいいというレベルのものがあります。
この手の映画は作品自体の出来もイマイチというのがお定まりですが、有名な謎吹替えに「アメリカン・サイコ」があります。

「アメリカン・サイコ」自体は素晴らしい作品ですし、ジャンルからして字幕を推奨しますが、販売されている円盤のメイン吹替えキャストは野沢那智はじめ錚々たる顔ぶれなのですが、Netflixで視聴できる控えの吹替えキャストが全員大根という変わった現象が起きています。
そこら辺を歩いていた一般人に吹替えさせたとしか思えないレベルの日本語で、内容が入ってきません。クセになってくるくらい下手。芸能人があてたジブリキャラクターの比ではありません。

サブスクで観られるのは喜ばしいのですが、吹替えしか選択肢がないためほとんど観ていません。全キャラクターが下手という稀有な例。


・英語以外の言語の映画(フランス語を除く)


国が変われば映画も変わるので、お国柄的な作風、画風というのがあります。
スペイン映画で「オラ」とか挨拶してるの可愛くて好きです。
英語以外の聞きなれない言語に、日本語と日本人の声がミスマッチと感じる時に、やっぱり字幕がいいと感じます。
インド映画のように歌と踊りが挟まれるときに、急に日本語からヒンディー語に切り替わって字幕が出るのがちょっと嫌です。流れのぶった切り感がある。

今はギリシャ映画が人気になり、ヨルゴス・ランティモス映画がすごく肌に合うなと感じるのですが(英語の映画もある)、意味の分からない理不尽さと聞きなれない言語の相性がすごくいい。全然知らない俳優しか出ていなかったらより「わけのわからなさ」を楽しめると思います。
逆に吹替えで聞いたらどんな感じなんだろうと思いますが、独特の不気味さが薄れるのかなあ。観てみたい気持ちと、ヨルゴス・ランティモス作品は観るのに気力体力がいるので1年くらい空けてから再視聴したい気持ちとがあります。


未消化映画が溜まっているので、何も考えずに観られるよう吹替え頼りなのもあります。1時間みて途中にしている映画がたくさん・・・
とりあえずワンハリ吹替えはとても良かったので最後まで観なきゃな―と思います。


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