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好きになった瞬間の話


3日坊主の私だから、どうしても書きたい話を一番最初に書こう。

誰かを好きになる瞬間て、大体わからないものだ。なんとなくいいなと思いはじめて気づいたら好きになっている。ほとんどの恋愛はそんなものだと思う。

今までで1回だけ、好きになる瞬間が明確にわかった恋愛がある。

彼はマッチングアプリ(しかもかなりライトな遊び用のやつ)で出会った。30歳の冬。色々とやりきった感もあって、もうその時は恋愛したいと言うか、とにかく会ったこともない人に出会ってみたかった。

彼は年下で、今まで5.6個以上上の人ばかり付き合ってきた私にはとても新鮮だった。かわいい。とにかくかわいい。

会話が弾んで会うことになったけど、正直期待なんて全くしてなかった。いつもの癖で、「明日仕事だから一杯だけ飲みましょう」と言った。

渋谷の駅で待ち合わせした。最初の会話はぎこちなくてセンター街ってバスケットボールストリートになったんですよ、なんてどうでもいい話をした。彼は会話が下手で、でも頑張ってるんだなとわかった。適当に相槌を打ちながら中身がなくて掘る話が全くなかったらどうしようかなーなんて考えたのを覚えている。

そんなのは全くの杞憂で、彼は新鮮の塊でなんの話を掘っても面白かった。彼は中身がないんじゃなく、中身を出すのが下手なだけだった。もっと一緒にいたいと思った。

2件目に行く道すがら、109の前の信号を渡る。信号が青に変わった。

「行こう!」

彼はそう言って、私の手を取った。私と大して変わらないサイズなのに、ちょっとゴツゴツした手が私を引っ張ってうるさい繁華街の交差点を声を出して笑いながら走った。

その瞬間、彼を好きになった。

今思えば浅はかだなあ。でも、確かにあの瞬間、彼を好きになってよかった。それだけは今も確信している。

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