Arctic Monckeys 来日公演感想(有明ガーデンシアター 3/12)

アークティック・モンキーズの来日公演に行ってきた。興奮さめやまぬうちに感想を書こうと思う。まず久々の来日らしいが、そもそも私がアークティック・モンキーズを聴くようになったのは高校生の頃からで、つまり私がアークティック・モンキーズを知ってからは初の来日である(と思う)。席は4階の奥の方と決して最高と言える位置ではなかったが、ガーデンシアターの構造のおかげか彼らは非常に近く見えた。

まず過去のライブ映像などに比べると、かなりバンドとしての円熟味を感じるライブであった。これはみんな言ってることではあるのだが、やはり生の音で聴くとこの「円熟」という言葉が非常によく合うのがわかる。ボーカルのアレックスターナーがなかなかに渋い味を出しているのはそうだが、それ以上にバンドとしての完成を感じる。セットリスト上がっていたのでそれを引用させていただく。

まず1曲目はいきなり新譜The car からSculptures of anything goes。ほかのThe carの曲についても言えることであるが、ライブで聴いて受ける印象はアルバムで聴いた時の印象とかなり違う。一言で言うなればそれは盛り上がりである。とにかく低音が厚い。ベースとキーボード2段構えの低音の音圧は凄まじく、厳かな雰囲気を醸しつつも一気に我々を「アークティック・モンキーズ」の世界に引き込んだ。

2曲目はお決まりBrianstorm。この曲をやって盛り上がらないわけがない。イントロから会場の熱気はマックス。2曲目にこの曲はずるい。

Brianstormの熱気のまま3~6曲目はAMまでのアルバムの乗りやすい人気曲を続けて演奏。賛否両論あると思うが、このライブに来て、「聴けたらいいな」って思うような曲を立て続けにやってくれる。嬉しくないわけがない。

ここで7曲目のFour five of Five。ここで突然のミラーボールが点灯(だったと思います間違えてたらすいません)。会場の雰囲気は一転、後ろのキーボード隊のきらびやかなサウンドが鳴り響く。彼らのすごいところは、バンドとして常に成長し続けていながら、ライブでは過去の曲から最新までごちゃまぜでやってくれる。しかもそれらの曲が妙にマッチして、ライブ全体で緩急のある壮大なストーリーを描くところだろう。

8曲目はArabella。新譜が出るまでは彼らのアンコールの十八番だったこの曲をここで披露。個人的にAMは彼らのアルバムの中、それどころか音楽シーンに置いても傑作だと思う。なんというかとてもバランスがいいのである。AM以前の曲は、いかにもオルタナって感じの曲が多い様に感じる(もちろんそれも良い)。対して最近はかなりオールディーズの要素を強く取り入れており、慣れない人からすると取っ付きにくさを感じると思う。AMはそのバランスが絶妙で、万人受けする新しい音楽というのを感じる。

9,10曲目にきてFrom the Ritz to the rubbleからのconerstone。初期の曲だが今の彼らがやるとだいぶ変わった雰囲気に聞こえる。こういういかにもなガレージ感あふれる曲は、大好物なのだが、今の彼らがやると違った良さがある。過去の、彼らの若々しさというものも感じる。なんというか「俺等だって昔は若かった。でも今だってまだまだやれる」と言われてるようなそんな。

少し切なさを感じつつ一気に新譜のThere'd better be a Mirrorball。わざわざ用意したミラーボールがよく合う曲である。前の2曲からのこれである。「So can we please be absolutely sure That there's a mirrorball for me?」いかにも哀愁溢れるこの曲である。なんてドラマチックな展開だろう。

しかしここで余韻に浸る中、突然ドラムが鳴り響く。ドラム、しかもこんな単純なフレーズだけでなんの曲かわかる。12曲目はDo I wanna know。正直な話みんなこの曲がいつ来るんだろうと、ずっとこの曲を待ちわびていたのではないだろうか?感想としては、生でこの曲を聞けて最高だったに尽きる。

13~17曲目はDo Me a Favor、One point perspective、Teddy picker、pretty visitors、I bet you look good on the dancefloor。ここもAMまでの人気曲の一挙演奏である。特にdancefloorの盛り上がりは凄まじくbrianstormと同等の爆発的な熱量を感じ取れる。

熱狂は最高潮、普通のバンドならこれがトリだろう。しかしこれでは終わらない。彼らが用意したラストはBody Paint。この曲、はじめこそはしっとりした雰囲気だが後半から雰囲気が一気に変わる。ライブ版のアレンジであるが後半は激しいギターとドラム、そしてベースが鳴り響く。しかしdancefloorのような爆発的な熱量というとそうではない。どこか寂しげのあるクライマックス。感動的なラストである。円熟見をました彼らなりの大人なラストである。このラストに繋がる完璧なセトリであると感じる。こればっかりは本当に生でしか感じられないと思うし、このライブに行ってよかったと心から感じた。これでライブは膜を閉じた。

ここからはアンコールのBig ideas、505、RU mineであるが、なんというかこれは映画で言うところのエンドロールみたいだなと感じた。劇場的なドラマチックな映画が終わり、その余韻を楽しむ時間。最近のバンドは結構アンコールまで込みのセトリが多いなと感じる中、彼らは違うと感じた。ドラマチックな彼らのライブはもう終っているのである。感動的な映画を見たときの、その感動を咀嚼しながら別れを惜しむ時間。我々が現実に戻るまでの猶予期間である。映画にエンドロールがなく、突然現実に引き戻されたら、虚脱感で倒れてしまうだろう。彼らはいつもアンコールの最後にRU mineをやるが、この曲はとても後味が良い。我々にこの素晴らしい時間の別れを彼らなりに伝えてくれているのだと思う。

これにて締めくくろうと思う。なんというか言葉足らずで申し訳ないが、とにかく素晴らしいライブだったということを伝えたかったのである。


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