オフコース『NEXTのテーマ』から小田和正『君のこと』へ

桜の花が散り始める季節になると思い出す詩があります。

年年歳歳花相似、歳歳年年人不同
年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず

「春になれば毎年同じように花は咲くけど、その花を見ている人は毎年変わって同じではない」という唐代の詩人劉希夷の詩です。

この詩を思い出すと必ず呼び起こされる歌があります。小田和正さんの『君のこと』という歌です。


あきれるほど早く過ぎてゆく
時はボクを追い越して行く

繰り返し 季節が運ぶものは
何も変わらないのに

あの頃許せなかったことも
今はただ 懐かしく思うだけ

そんな ふうに変わっていったのは
いつの頃だったんだろう

この歌詞が「年年歳歳花相似、歳歳年年人不同」を呼び起こすんですよね。

「あの頃」とはいつの頃なのでしょう。やはり鈴木さんがオフコースを脱退した時のことなのでしょうか。

「今」とは、この曲が発表された2011年の時点でしょう。鈴木さんがオフコースを脱退したのは1982年ですから約30年の月日が流れ、小田さんにとって「許せなかったこと」が「懐かしく」思えるようになったということでしょう。


果たせないままの 約束も 
届かなかった 言葉も

書きかけの歌のように
今もまだ心のかたすみに


「果たせないままの約束」って何なのでしょう。5人のオフコースの最後の曲として小田さんが発表した『NEXTのテーマ』で歌われた


新しい時の流れの中で
いつかまた会える時がくるね

の事なのでしょうか。

『届かなかった言葉』とは何なのでしょう。オフコースのアルバム『We are』やアルバム『over』で小田さんは鈴木さんに語りかけていると解釈できるような曲が多々ありました。


そしてボクは考えることをやめて
君のことを思い出している

僕らと呼べる 君のことを今
心から誇りに思う

小田さんが『僕ら』と呼べる人って鈴木さんしかいないでしょう。考えてみれば、小田さんは『僕ら』をテーマにした曲がありますよね。アルバム『We are』収録の『僕等の時代』しかり『NEXTのテーマ−僕等がいた−』しかり。

小田さんが音楽活動を始めたのも続けられたのも鈴木さんの存在が大きかったのでしょう。


どこまでも 季節は駆け抜けて行く
そしてまた ボクらを 変えてゆくんだろう

この曲が発表されてから10年以上が経ちました。小田さん自身の中でどういう変化があったのでしょうか。小田さんと鈴木さんとの関係性にどういう変化があったのでしょうか。


歌い続けてゆくから きっと 元気でいて
君がいないとつまんないから
そんなふうに思えるんだ 今は

オフコースが復活することはないでしょう。鈴木さんにとってオフコースは1982年に終わったことですし、小田さんにとっては1989年のオフコース解散をもって終わったことですから。

ただオフコースという形ではなく、それぞれが一人のミュージシャンとして共演する可能性は残されているのかなって思えます。

『君がいないとつまんないから』ということは、言い換えれば、『僕らは一緒に歌うと楽しい』はずですからね。

それぞれのライブにゲストとして共演していることを夢想するこの頃です。

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