見出し画像

マリアの風 プロローグ 

プロローグ

「わたし、おおきくなったらねぇ」

XX幼稚園の園庭の片隅に男の子と
女の子がいる。

「なに?マリアちゃん?」

「わたし、おおきくなったら………ちゃんの
およめさんになる!」

「えっ?いま、くるまのおとで、
よくきこえなかった!なんていったの?」

「いいのいいの。ヒ・ミ・ツ、」

「ぼく、おおきくなったらね、およめさんに
したいこがいるんだ!」

「えっ…だれだれ?」

「ぼくだってひみつだよ!」

他愛もない幼い頃の大人びた行動。
しかし、お互いに惹かれ合うものがあるのか、いつも園では一緒に遊んでいました。

その日から3日間、
マリアちゃんは園に来なかった。

風邪か何かかなとされましたが、実際には
何かが理由で、手詰まりになってたんだろう。

4日目の朝。

園長先生が教室に来て

「宮城野マリアさんは、御家庭の事情により
本日付で転園されました」

突然の事だった。
何故そうなったのかは子供である俺には
分かりようもない。

ただ、その後風の噂で、ご主人が不倫をして
家を出ていき、残された母親とマリアは
母親の実家を頼りに、越していったと聞いた。

園内の片隅で交わした小さな約束。

あれから十数年。

そんなものは、とうにあの日の風に
流されていったのかもしれない。

                 つづく



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?