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マリアの風 第三話

第三話

岡田たちに案内されて〈3−1〉と書かれた教室に入った。
教室の中には男子12~3人、
女子が10人程度いた。
それぞれに談笑していた皆は、俺たちが教室に入っていくと一斉に振り向いた。

「みんな、お待たせしました。
只今より◯✕第三中学校元〈3−1〉組の同窓会を開催致します。
そして、ここにいるのが以前僕が話したゲストの伊藤駿太君です。今の僕の同級生ね。
じゃあ伊藤、一言だけ挨拶を!」

「えっ?あ、あぁ。高校で岡田と同じクラスの伊藤です。今も何で俺が呼ばれたのか
わかりませんが、ヨロシクお願いします」

一応岡田の手前、挨拶をしてみんなを見渡した時だった。
初めてバイクに乗った時、半クラッチを
知らなかったのでアクセルを開け、クラッチを一気に繋いでウィリーした時と同じ様な衝撃を受けてしまった。

「何で君がここにいるの?君はここの
中学出身?」

2週間程前に出逢った、少し女優の小芝風花に似た不思議な女の子が目の前に立っている。

「伊藤、彼女の話はもう少し後でするから、
今はこの会を始めよう!」

「フフッ、また逢えたわね!憶えてる?
私の事……」

「当たり前だよ。あれからまだそんなに経ってないんだから」

「違うんだ、伊藤」

二人の会話に岡田が加わってきた。

「ここにいるまりあは、お前の知ってる
あのマリアなんだよ!」

「どういう事だ?説明してくれ、岡田」

俺は岡田が何かを知っていると思い、尋ねた。

「マリア、もう話すよ」

そう言って岡田は同窓会には似つかわしくない話をボソボソと始めた。

僕も小さい時だったから全てを知っている訳
でもないし、どこまでが本当の真実なのか
どうかは分からない。
ただ自分の見た事、聞いた事は
隠さずに話すよ。

岡田は静かに語り始めた。
幼稚園の時にひっそりと転園していった
宮城野マリアはしばらく母の実家がある仙台で暮らしていたそうだ。
女手一つで育てるのは容易では無い事ぐらい
僕にも想像が出来る。

昼は工場、夜はスナックと寝る間を惜しんでは働いたそうだ。
僕と父親は転勤で仙台に来ていた際、
そのスナックでマリアの母親と知り合った。
僕の母親は僕を産んでから暫くして病気で
亡くなったそうで、父が男手一つ僕を育てて
くれた所はマリアと同じ様な感じかな。

そして二人は知り合い、恋をして子連れ同士
だけれど一緒になったんだ。
これはお祖母ちゃんから聞いた話。

3年ほど仙台にいたんだけど、また転勤となり
今の◯✕町に越してきた。
小さな頃からマリアとは一緒いるから本当の
兄妹のように思っている。
そのマリアが引っ越す前の事を父親がいない時に話してくれたんだ。

" 私には将来を誓いあった人がいる " って。

「ちょっと待ってくれ。じゃあ、まりあは
あの時のマリアなのか?そうなのか?」

「そうよ、しゅんちゃん!」

10数年振りに " しゅんちゃん " と呼ばれた。
そうだ!あの時俺も将来マリアをお嫁さんに
したいと思った。

そう、俺の初恋だった。

「でな、マリアから昔の話を毎日聞かされて
いたから、僕が入る余地など全然なかったよ。それで " しゅんた " という名前が記憶に定着
していたんだ。そしたら高校に入学したら、
同じ名前のヤツがいる。
" しゅんた " なんてありそうでないもんな。
容姿をマリアに伝えると、ほとんど毎日、
以前住んでいた所を訪れていた。そうだろ?」

「うん!駿ちゃんに会えるかもって」

「でも、それだけで俺とは分からんだろう?」

「入学してすぐに仲良くなって、お前がバイク好きでアルバイトをしてRZ250を買った事は
僕も知ってたから、その事はマリアに伝えた。会えるかどうかは、まぁギャンブルだったな」

「私、会える自信はあったよ!」

                  つづく


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