熱中症の対策は正しい理解から 予防法や応急処置について解説

29〜39万人、これは日本の1シーズンの夏に熱中症で医療機関を受診する人数です。想像以上の数ではないでしょうか。さらに、熱中症は命にかかわる病気でもあります。熱中症とはどんなものか、予防策は、かかったときはどう対応するのか、について紹介していきます。

体に熱がこもってさまざまな異常が現れる熱中症

人間は暑くなると汗をかいたり、体の末端の細い血管を広げたりして、体内の熱を外部にに逃し、体温を一定に保っています。熱中症は、高温多湿の状態に長時間いることで、体温の調節ができなくなった状態です。その結果、体内に熱がこもり、さまざまな体の異常や症状を引き起こすのです。
熱中症シーズンは高温多湿になる夏です。気温が上昇している近年、やはり熱中症も増加しています。消防庁の調査によれば、熱中症の救急搬送は記録的な猛暑だった2010年に急激に増加し、現在も高いレベルのままです

熱中症の症状は軽いものから命にかかわるものまで幅広い

熱中症では、さまざまな症状が現れます。軽症は目まい程度ですが、重症になると命にかかわる状態になるため、十分な注意が必要です。

初めは目まいや立ちくらみから

熱中症の症状は重症度によって、I度からIII度の3段階に分けられています。
重症度によって症状は変わり、代表的な症状はこのようなものです。
I度:目まい、立ちくらみ、生あくび、大量の汗、筋肉痛、筋肉がつる
II度:頭痛、吐き気、吐く、体がだるい、集中力や判断力の低下
III度:意識障害、全身のけいれん、血栓や出血など血液の働きが障害される
I度とIII度ではかなり状態が違いますね。

重症になると命にかかわることもある

目まいや立ちくらみなどの初期症状であっても、適切に処置しないと、重症になってしまうことがあります。
重症は入院が必要な状態です。場合によっては、集中治療を受けることになります。つまり、命にかかわることもあるわけです。
実際、総務省の調査によれば、令和3年の5月から9月に熱中症で救急搬送された全国の人数は4万7,877人にのぼります。わずか4ヵ月でこの人数です。熱中症の重症化が、いかに危険かが実感できますね。
初期症状の状態で異常に気づき、早めに処置することが重要です。

暑い場所での屋外作業は要注意!対策は怠りなく

熱中症は高温多湿、風が弱い、熱が発生するなど、体が熱をにがしにくい場所で起こりやすくなります。
最近ではお年寄りが、屋内で熱中症を起こすケースも増えているものの、やはり屋外では、より危険度が高くなるようです。
日本救急医学会の調査では、スポーツや仕事での熱中症の屋外での発生数は屋内の2倍以上でした。
屋外で作業するお仕事の方は、積極的に熱中症の予防や対策を実行する必要がありますね。
屋外での熱中症を予防するために、下記のような方法があります。
・水分・塩分を定期的に補給する
・直射日光をさえぎる(帽子をかぶるなど)
・こまめに休憩を取る
・ネッククーラーや携帯型扇風機などの熱中症対策グッズを利用して体温を正常に保つ
身近なものから新しいグッズまでいろいろな予防方法があります。
また、熱中症の危険度を予測するデータも国から発表されています。
1つは、環境省が発表する「暑さ指数」です。気温、湿度、また熱いものから伝わる輻射熱という熱の3つで計算され、熱中症の危険度を表します。環境省の「熱中症予防情報サイト」では、全国840地点について、当日から後3日間の、3時間ごとの暑さ指数予測を知らせています。
もう1つは、より効果的な熱中症予防につなげるために、環境省と気象庁が連携して発表する「熱中症警戒アラート」です。こちらは、暑さ指数を利用して、全国を58に分けて、熱中症リスクが高くなると予測される地区を示しています。発表は1日2回です。熱中症警戒アラートでは、具体的な熱中症予防行動も提示しているので、さらに実用的だと思います。
環境省では、暑さ指数と熱中症警戒アラートについてメール配信サービスを行なっているので、利用してみてはいかがでしょうか。

熱中症の症状に早めに気づき、適切な対策で重症化を防ぐ

近年は気温が上昇するとともに高温の日が増えてきており、以前よりも熱中症にかかる危険が増えています。たとえ熱中症になっても、手遅れにならないよう、小さな変化にも気をつけて悪化を防ぐ必要があります。とはいえ、熱中症サインはどのようなものか、熱中症になったときは何をしたらよいのでしょうか。

初期症状なら、涼しいところに移動して水分と塩分を補給

目まい、立ちくらみ、筋肉がつるなどI度の症状がみられる場合は、涼しいところで休むようにし、水分と塩分を補給してください。これでも良くならなければ、病院を受診しましょう。
頭痛、吐き気、おう吐、体がだるい場合は、集中力や判断力の低下といったII度の症状が見られる場合は、水分と塩分の補給をした上で、衣服をゆるめ体を冷やします。
冷やす場所は、太い血管のある脇の下や両側の首筋、足の付け根です。その後必ず病院を受診しましょう。

意識がない、けいれん、高体温がみられればすぐ救急搬送

意識障害(意識がない)、全身のけいれん、全身が熱い(高体温)などIII度の症状がみられる場合は、かなり重症だと考えられます。すぐに救急車を呼びましょう。この状態になると患者さんが自分で処置することは無理かもしれません。その場合は周囲にいる方のサポートが必要です。

熱中症対策が命を守る

温暖化で暑い日が増加している最近の日本の夏、熱中症も大きく増えています。熱中症対策は、もはや日本の夏の大きな課題といえるでしょう。
熱中症は命にかかわる病気ですが、危険を予測して適切な予防法を実施すれば防げる病気でもあります。
病気を正しく理解し、最新の情報や対策グッズを活用して、熱中症を予防しましょう。とくに、リスクが高い屋外での作業をする方は、危険度を予測して対策を立てておいてはいかがですか。
(医学ライター 細田雅之)


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