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ソゾの佃煮

2月18日。まるで春の陽気なので海を見に行った。海の活動拠点にしている宇日の舟屋の前は昔ながらの石ころ浜。この季節はたくさんの漂着物が押し
寄せてくる。
 漂着物には良いものと悪いものがある。良いものとは生活に利用できたり、見ていて気持ちが休まったりするもの。生活・ロマン系とでもいおうか。
 いっぽう悪いものとはもろにゴミであり、気持ちが暗澹とするものたちだ。漁業ゴミやペットボトルなど捨てられた空容器が大半を占める。厄介ゴミ・非ロマン系だ。
 舟屋の道向かいにお住いの95歳の女性がせっせと掃除をしてくださるのがありがたい。大量の海藻が漂着すると電話を下さり、行ってみると石ころ浜に干してあって「畑の肥やしに持って帰んねえ」とにっこり笑顔。
 この日もすっかり浜はきれいになっていた。
 舟屋に置いてあるシーカヤックを引っ張り出して、海に出てみた。乗りなれていないのでどうも居心地が悪く、うっかりバランスを崩しそうになる。
 途中で上陸して調整しなおし、数か所のポイントをまわって帰ってくると
地元のWさんが浜から手を振ってなにやら叫んでいるけど聞こえない。
 上がって車(軽トラ)に戻ると荷台に白いレジ袋がおいてあった。中を見ると海藻「ソゾ」だった。
 ソゾは地方名で標準和名は「ユナ」。湯女と書くらしい。
 まったく流通に乗らない地元の人にしか食べることができない海藻だ。
 独特の臭気があって、好きな人と苦手な人に二分される。筆者の率直な感想は「ヒメウ」のにおい。学生時代に島根半島の漁師さんからもらって帰ったという友人からもらったヒメウを解剖したときのにおいだ。水かきの開閉の仕組みをしきりに試した記憶はあるけど食べたかどうかはよく覚えていない。が、においは覚えている。
 イノシシの匂いにも似ているような似てないような。とにかく「けもの臭」のある海藻であることは間違いない。
 どうやらハロゲン化合物が含まれているのが原因のようだ。納得する。
 さていただいたソゾ、どうしようか。味噌汁に入れるには多すぎる。
そうだ 佃煮にしよう! と決めた。
 冷蔵庫に入れたままにしていたら妻が「匂いが充満しているよ」と言ってきたのであわてて調理にとりかかる。
 ①ザルに入れて熱湯をかける。②裏返してほぐし、再度熱湯をかける③まな板の上でざっくりと切る。縦横4等分。③少し水を足し、自家製調味料(みりん、しょうゆ)を加えて煮る。④冷ます  以上でできあがり。
 しばらくは磯の香りを楽しめるぞ。ありがとうWさん!


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