音速のドラ猫17
〜三沢基地 官舎〜
とある休日の朝…
みゆき「おはよう…お母さん」
佳奈多「おはよう。みゆき」
眠そうな目を擦りながら娘であるみゆきが起きてきた。4月から中学生になると言うこともあり時間管理は自分で出来ているようだ。
佳奈多「顔を洗って、着替えてきなさい。」
みゆき「うん…」
夫である彼の居ない2人きりの朝
どうも会話が弾まない…
佳奈多「よし、できた。」
みゆき「いただきます。」
佳奈多「いただきます。」
味噌汁を啜るみゆき
佳奈多「どう?美味しい?」
みゆき「うん!お母さんのお味噌汁を飲んだらさ朝から元気が出るんだよね。」
佳奈多「そう…良かった。」
みゆき「お母さん?どこか痛いの?」
佳奈多「ううん、ちょっと眠れなかっただけよ…心配しないで?」
みゆき「うん…でも、無理は駄目だよ?」
佳奈多「ありがとう。」ニッコリ
ピンポーン
その時、玄関の呼び鈴が鳴った。
佳奈多「誰かしら?こんな朝早くに」
みゆき「私、出てくるね。」
佳奈多「うん、お願い」
〜玄関〜
ガチャ
みゆき「は〜い あ、葉留佳お姉ちゃん。それに、大翔くんも。どうしたの?」
葉留佳「やっほ〜みゆき久しぶりだネ」
大翔「おはよう…佳奈多姉ちゃん、みゆきお姉ちゃん…。」
佳奈多「朝早くからどうしたの、2人とも?」
葉留佳「やだなぁ、お姉ちゃん忘れちゃったの?今日は一緒に買い物行くって行ったじゃない」
佳奈多「あ、忘れてたわ。」
みゆき「私、着替えてくるねッ」
葉留佳「ボケるにはまだ早いですヨ〜」
佳奈多「ボケてなんかいないわよッ」
大翔「ママと佳奈お姉ちゃんって似てるね〜 」
葉留佳「そりゃ、ママのお姉ちゃんですからネ〜ママとお姉ちゃんは双子なんだよ〜」
大翔「そうなんだ〜」
佳奈多「あら、葉留佳 真人はどうしたの?」
葉留佳「真人くんなら今日は市ヶ谷、最近は忙しいみたいだよ」
佳奈多「そう…」
葉留佳の夫である真人は陸上自衛官である。
学生の頃から暇さえあれば筋トレしている変わった人だったと記憶している。
そんな彼も今は陸上自衛官として本省、習志野と青森を週に何度か行き来しているらしい。
みゆき「お待たせ〜」
大翔「みゆきお姉ちゃんも綺麗だね〜」
葉留佳「はは〜ん、惚れたね」ニヤリ
大翔「え、違ッ…(////)」
みゆき「うぇ?何のこと?」
佳奈多「ふふふ、何でも無いわよ。」
大翔は顔を少し赤らめており、みゆきの頭にはハテナが浮かんでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜太平洋上〜
訓練初日
いつものように機体をチェックしエンジンに火を入れ発艦に備える。
理樹「緊張するね…」
豊〔大丈夫だって。俺たちなら出来る〕
理樹「そ、そうだね…」
potato〔Altair03 standby lunch position〕
(アルタイル03、発艦位置に進め)
樹〔roger Altair03〕
編隊長である熊岡3佐の機体が電磁カタパルトに進む。護衛艦〔さつま〕には2基の電磁カタパルトが搭載されており1番カタパルトには3佐、2番カタパルトに音無1尉が待機中だ。
ウィィィィィィィィィィィィン ガコッ
防炎壁が上がり。甲板員の合図で3佐の機体からアフターバーナーが吐き出される。
数秒後…
樹〔final check clear〕
(最終確認終了)
potato〔roger good luck〕
(了解、健闘を祈るッ)
ガコッ ゴォォォォォォォォォォォォォォッ
瞬く間に35tあるF-14DJ戦闘機は大空へと舞い上がった。
いつしかの映画で見たことがある光景だ…
danger Zoneが流れてきそうなくらいリアルだ
間隔を置いて音無1尉の機体も射出される。
potato〔standby Altair06〕
理樹「roger」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ
甲板員のハンドサインに従いフットブレーキを緩めカタパルトへ機体を進める。
豊〔レーダーシステム、火器管制システム
誘導装置、各種計器異常なし。〕
理樹「了解」
ガコッ
機体に僅かな振動が起こる。
射出装置に機体の主脚が接続された。
甲板員〔アルタイル06、出力を上げ。〕
理樹「了解」グッ
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ
スロットルレバーでエンジンの出力を上げる…
口の中が酸っぱい…普段の離陸より緊張する。
甲板員が退避しシグナルマン(発艦士官)のサインでカタパルトが作動する。
ガコンッ
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
理樹「うぐッ…」
電磁カタパルト…噂通り凄い力だ。35tの機体をものの数秒で時速350kmまで加速させる
パワーを持っている。
豊〔gear up〕
理樹「roger」
ウィィィィン ガコッ
樹〔Altair各機、高度6000で編隊を組む〕
結弦〔了解ッ〕
理樹「了解!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜東京 市ヶ谷〜
ー防衛省ー
コンコン
男「入りたまえ。」
ガチャ
真人「井ノ原2尉、入ります。」
男「来たか。井ノ原くん」
真人「ご用件とは何でしょうか?課長」
重松航英2等陸佐 に俺は単刀直入 尋ねた。
航英「うむ、ここ最近君の近辺で黒服連中がうろついていると言う情報を得てね。それを知らせるために君を呼んだのだよ。」
真人「黒服の連中ですか…?」
俺には思い当たる節があった…葉留佳の姉貴である佳奈多が居た二木本家が闇の執行部(中国情報局外事3課)と深く関わりがあると言う情報を俺は得ていた。
航英「思い当たる節があるようだね?」
真人「はい。確証は得られていませんが…中国情報局外事3課…通称(闇の執行部)が絡んでいると思われます。」
航英「そうか…君に特命を与える。出来るだけ、その闇の執行部について情報を集めてくれ。それと、君と共に行動する諜報員を紹介しよう。入りたまえ。」
女性「失礼します。」
航英「紹介しよう、魚見 チヒロ君だ。階級は君と同じ2等陸尉だよ。彼女は元警視庁公安部の人間でね裏社会については詳しいと聞いている。協力して捜査にあたってくれ。以上だ」
真人「了解しました。2等陸尉 井ノ原 真人
他1名、特殊任務に着手しますッ」ビシッ
航英「うむ。よろしく頼むよ」
2人「はいッ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜廊下〜
チヒロ「よろしくお願いします。井ノ原2尉」
真人「堅苦しい挨拶はいいよ。同じ階級なんだし…それより、腹減ってねぇか?」
チヒロ「食事なら済ませてあります。」
真人「そ、そうか…」
どうもエリートと言うか…堅苦しい奴は苦手だ
学生の頃からバカやってきた俺はどこまで行ってもバカだから…
チヒロ「結婚されてるんですね。」
真人「え、ああ…息子が1人居るよ。」
チヒロ「奥さんは航空自衛隊の戦闘機パイロットの葉留佳さん、義理の姉である佳奈多さんは同じ航空自衛官でその夫である樹さんも航空自衛官…自衛官家系ですね。」
真人「恐れ入った、いつの間にそんな情報を…」
チヒロ「情報は速さが命です。敵を知るにはまずは味方を知っておかないと…」
真人「ぐぅ…」
ごもっともだぐうの音も出ねぇ…
チヒロ「しかし、井ノ原さん…幹部レンジャー課程を出て"S"に居た貴方が何故 陸幕2部にいらっしゃるのですか?」
真人「訳ありでな。あっちよりもこっちの方が俺には向いていると思っての選択だ。深い意味はねぇよ。」
現在、俺が勤めている陸幕2部とは…
正式名称、陸上自衛隊 幕僚監部調査部第2課
主にアジア圏の軍事情報(特に中国)や中東でテロリズムを行なっているテロ組織の情報収集などを行なっている。所謂、自衛隊内のスパイだ。
チヒロ「そうですか。仕事は適材適所ですからね。」
真人「そうだな。」
彼女が言う通り、俺は去年までSに居たが陸幕のリクルーターによるスカウトで諜報の世界に足を踏み入れた。
Sとは…陸上自衛隊の特殊部隊の事で。
SFGp (陸上自衛隊 特殊作戦群)の事だ…
真人「そう言う魚見は何故、公安からこんな辺鄙な陸幕へ?」
チヒロ「私の追っている獲物を追うには警察では限界があると感じこちらに来たまでです。」
真人「そうか…訳ありなんだな。」
それしか言葉が出てこなかった。
彼女はそれ以上は語ろうとしなかった…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は窓の外の夕陽を見ながら考えていた…アイツに頼まれてか奴らの動向を探ったが…まさかここで大物を当てるとは思わなかった。
航英「何を企んでいるんだ…闇の執行部め」
pririri
俺のスマホが鳴る。画面を確認すると…
航英「もしもし、あぁ…その件なら探りを入れている。お前の読み通り黒く服の連中は中国情報局の人間だ。」
⁇?〔やっぱそうか…了解、訓練があるから戻るわ。また陸に戻ったらゆっくり話そう〕
航英「ああ、気をつけてな。」pi
一介のパイロットである奴がここまで情報収集に長けているとは思いもよらなかった。是非ともこっちにスカウトしたい。
コンコン
男「失礼します。課長、定例会の時間です。」
航英「分かった。すぐに行く…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜護衛艦〔さつま〕BFR〜
祐介「気をつけッ 礼ッ」
全員「お願いしますッ」
樹「そんな堅苦しくせんでええのに…まぁええわ。訓練初日お疲れ様です。本日の発着艦訓練について何かある者は挙手を」
理樹「はい」
樹「お、理樹ちゃん 」
理樹「〔さつま〕の甲板ってあんなに短い物なんですか?」
豊「あ、俺も思った」
結弦「確か260mしか無いんですよね?」
樹「そうそう、本来のいずも型なら248mやったんやけど第一次改修工事で艦首部分が延長されて全長265mになっとる。」
祐介「米軍のフォードやレーガンは300m弱ありますもんね。」
樹「そそ、アメリカさんはでかい図体+原子力空母やけんガス艦の自衛隊じゃ逆立ちしても敵わんで。話が逸れてしもたけど…確かに短いってのはあるせやから着艦装置の1番艦尾側の索にアレスターを引っかけんと落ちる。」
風子「難しいですね…」
結弦「風が強すぎたら着艦できないな…」
樹「こればっかりは、回数こなして経験積むしか無いんよなぁ。せやけど、俺ら現場の意見が反映されて次期改装予定の〔いずも〕〔かが〕は強力な着艦装置が装備されるかもしれない」
祐介「今後の艦艇装備は俺たちの航空機運用試験の結界次第で変わってくるって事ですね。」
樹「そゆこと じゃ 各自本日の訓練結果をレポートにして後でPCに送っといてちょうだいね〜」
全員「うぃ〜す」
こんな感じで緩く訓練後のブリーフィングは終わった。
続く…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?