白と黒5



〜都内某所〜

無線〔ザゾッ 真岡及び岡淵を捉えたッ 安村は見つけ…〕

女「残るは安村のみのようです…」

男「また、公安部の無線を傍受してんのか…ほどほどにしねぇとお前も検挙されるぜ」
 
女「大丈夫ですよ、私の無線機は履歴が残らないようにしてますので。ご心配なく」

男「相変わらずすげぇもの作るな。本当に新聞社に潜入させとくのが勿体ないよ」

女「あらぁ、心配なさってくれるんですか。」

男「まぁな、俺の相棒だからな。」

女「まぁ、男らしい事ですこと」

男「茶化すな、あくまでお前は俺の相棒それだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

女「分かってます。それより…我々の対象にもかかわらずよく彼は生き残りましたね…」

男「仮にも奴は俺と同じ警察官だからな、それに…ただの警官じゃない。これを見てみろ」スッ

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20XX年 警視庁 警察学校 入校  

警視庁 麻布警察署 六本木交番 勤務

警視庁 池袋警察署 所轄 勤務

警視庁 新宿署 刑事部捜査1課 勤務

警視庁捜査一課強行犯係(SIT)

警部 安村 柊甫 32歳

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ここだけを見れば立派な経歴である。
しかし気になる点が一つある…

女「出来過ぎてますね…これだけ見れば清廉潔白ですが…何かありますね」

男「察しが良いな、こっちも見てみな。」スッ

先ほどと同じ顔写真と経歴が記された紙だが
どうやら安村が警官になる前の経歴のようだ…

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警察学校入校前…

アフガニスタン民主共和国 反政府軍参加

反政府軍第15 歩兵大隊 所属
 
シューホ・チェン・ヤスムラング 少佐

湾岸戦争、イラク紛争、ナイジェリア抗争
イタリア地下鉄テロなど…

(特記事項)

入国後、闇ブローカーを使い日本国籍及び偽名を取得 傭兵時代以前の経歴無し。
日本国籍に帰化

警視庁池袋署勤務時代に捜査能力を買われ池袋署刑事部捜査一課に異動。

捜査一課強行犯係特捜班班長 
〔小6男児誘拐監禁事件〕の捜査指揮を執るも
男児は殺害され
事件後、籍は捜査一課強行犯係特捜班に在るものの警視庁内で彼の姿を見る事は少なくなった

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女「彼は元傭兵だったのですね…しかし、これだけの情報を一体どこから…まさか…」

男「おいおい、仮にも俺も警官の端くれだぜ?他省庁の同業者を使えば出てくるものは出てくるものよ…」

女「と言いますと…外務省や内調ですか?」

男「アタリだ。嫁の勤め先が外務省でね。知り合いが多くて助かったよ。」

女「そういえば、唯湖さんは外務省職員でしたわね。優秀ですね」

男「そう言う、お前の旦那も陸幕2部だよな?自衛隊内の情報なら筒抜けなんじゃないの?」

女「まぁ…ウチの旦那は主に中東情勢が主ですからね…内部の事はあまり出てきませんわね。それに、私達の身分は表舞台には絶対に出てきませんからね…」

男「そうだな、俺たちはあくまで表向きは一般の会社員及び警察官を装っている。だが実際は、国家安全保障局(NSA)だ…その事を忘れるなよ。これは身内にもバレてはならない。」

女「分かってます。
でも、松原さんアナタ…もう一つの顔がありますよね?確か…防衛省情報本部情報6課」

玄武「まぁな、そう言う晶だって…内務省警保局警務課特別調査室(S班)だよな?」

彼女は…吉野 晶
俺の相棒で普段は一般の新聞社に勤めている。

晶「ええ、色々と調べさせて頂いてます。しかし、身内を騙して任務に就くのはね…」

玄武「まぁ…アイツは真面目だから少し心配だな。それに…」

晶「直枝さんの事ですか?」

玄武「大事な同期だからな…俺のメッセージに気付いてくれてればええんやけど…」 

晶「メッセージ?ですか?」

玄武「ともかく…任務に専念する。」

晶「了解」

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ー情報本部ー

三四「スズちゃん、状況はどうなってるのかしら?」

スズ「はい、現在メンバーで逃走中なのは安村のみのようです。川口、塩見、安田、宮下
岡淵、真岡を逮捕。飯山は何者かに射殺された模様です…恐らく〔ゼロ〕の仕業かと…」

三四「そう…動き出したのね。他に動きは?」

スズ「はい、〔ゼロ〕の他に警視庁公安部と共に妙な部隊も動いています。」

三四「妙な部隊?」

次郎「それについては僕の方から報告するよ
まずは、コレを…」スッ

三四「これは?」

次郎「信じがたいと思うけど、彼の…安村の過去の経歴を調べたんだ」

そこには…

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アフガニスタン民主共和国 反政府軍参加

反政府軍第15 歩兵大隊 所属
 
シューホ・チェン・ヤスムラング 少佐

湾岸戦争、イラク紛争、ナイジェリア抗争
イタリア地下鉄テロなど…

(特記事項)

入国後、闇ブローカーを使い日本国籍及び偽名を取得 傭兵時代以前の経歴無し。
日本国籍に帰化

警視庁池袋署勤務時代に捜査能力を買われ池袋署刑事部捜査一課に異動。

捜査一課強行犯係特捜班班長 
〔小6男児誘拐監禁事件〕の捜査指揮を執るも
男児は殺害され犯人は逮捕された。
主犯の小島、川口、塩見は逮捕後懲役15年の実刑判決を受ける。
しかし、数ヶ月後に釈放される。

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三四「まさか、中東帰りの傭兵だったとはね…」

スズ「どおりで…国テロメンバーとも繋がりがあった訳ですね。」

三四「そうなるわね。それで、妙な部隊とは?」

次郎「それなんだけど、銃器対策部隊って聞いた事はあるかい?」

三四「確か、警察の特殊部隊の筈ね。SATが出動する事案に治安維持及び支援する部隊よね
その部隊がどうしたの?」

次郎「その銃隊の中から選任されたメンバーで諜報を主とした課が新設されたって噂で聞いてね。確か…警視庁警備部諜報課…通称〔SiCO〕」

三四「主要メンバーと構成人員は?」

次郎「人員規模については不明だね。非公式に創設された部隊だからね。ただ、現在、公安部と一緒に動いているのは彼らで間違い無さそうだよ。ウチの中にも紛れ込んでたりしてね」

三四「それはあり得るかもしれないわね。でも、良いわ…彼らも我々と目的は同じよ…裏切り者の捕獲に全力を上げなさい。」

スズ「本部長ッ 間島3佐から通信です!」

三四「繋いでちょうだい」

スズ「はい…どうぞ」

僚一〔間島から本部へ、安村を発見しました。現在、直枝と仲村を使い尾行しています。〕

三四「了解、アナタ達以外にも公安とゼロも安村を追ってるわ。注意してちょうだい」

僚一〔了解しました。〕 プツッ

スズ「本部長、他の諜報関係者と接触した場合の対処はどうされますか?」

三四「そうねぇ…あくまで私達は別件で別の人物を追っている事にしましょう。」

スズ「分かりました。」

三四「SFの方はどうなってるの?」

次郎「小此木くんからの情報によれば
安村以外のメンバーは全員、警察に連行されたみたいだね。SF隊員にも負傷者及び殉職者は居ないみたいだよ。撤退させるかい?」

三四「そうね…無駄に戦力を割くのは得策じゃないわね。安村は…間島くんと直枝くん、ゆりちゃんに任せてSFは撤退させましょう。」

次郎「了解した。萩村くん連絡を」

スズ「了解しました。」ピッ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 

〜現場指揮所〜

小此木「了解しました 撤退させますんね」ピッ

隊員「小此木隊長…姫様は何と?」

小此木「現時刻をもって、我々の任務は終了
速やかに撤退する。」

隊員「了解しました。各部に伝達します」

小此木「頼むんね」 

数分後、SITFは撤退を完了
今回はあくまで治安出動らしい…

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〜現場〜

くそッ…追いかけても距離が縮まらない…
それどころか少しずつ離されているように感じるぞ…

理樹「くッ…見失う前に捕らえなければ…」

ゆり〔直枝さん、撤退してください。単独では危険ですッ…直ぐに応援を…〕プツッ

仲村さんから無線が入るが…それを無視した。

理樹「僕が捕まえなければ…僕が…もう悔しい思いをするのは…ハァハァ」

早足で安村3佐の後を追うも駅を少し離れた裏路地で見失ってしまう…
周囲を見渡してみるが見当たらない…ふと背後に殺気を感じ振り向く…が…誰もいない。 

その時…


???「いやぁ、実は部外者に私らの任務の邪魔はしてほしくないんですよ…」

理樹「え…? ッ…」

直後、身体に電流が走ったような痛みが走り
僕は意識を失う。


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〜現場〜

直枝さんの後追って来たが…安村どころか直枝さんの姿も見えなくなった。

ゆり「仲村より指揮所 」

スズ〔こちら指揮本部、どうしました?〕

ゆり「申し訳ありません。直枝さんの単独行動を許してしまい 姿が…見えなくなりました!」

三四〔何ですって。わかりました…ゆりちゃんは、安村の追跡を中止して窪田くん、高崎くんと合流してちょうだい。〕

ゆり「分かりました。失礼します…」プツッ

私の勘が正しければ 直枝さんは恐らく〔零〕の連中に拉致された可能性が…
しかし…確証が無い。
公安1課の大山くんと竹山くんも安村を見失った様子だ…

祐介〔ザザッ…高崎よりゆりへ、間もなく合流ポイントに着く。〕

ゆり「了解、お待ちしております。」

数分後…私は高崎1尉と窪田3佐と合流した。

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〜別ポイント〜

晶「どうやら、安村を追っていた直枝さんが何者かに拉致されたようです…」

玄武「犯人は?」

晶「特定されていないようです。恐らく〔零〕の仕業かと思われます…」

玄武「そうか…日本の警察も優秀だな…
移動するぞ。」

晶「了解です。」

その時…英語で無線が入った。

ザザッ

通信〔アルゴ各員に告ぐ、対象αが空港にて確認された。至急向かわれたし。以上〕

玄武「空港だと?まぁいい 俺らも向かうぞ」

晶「了解 しかし、対象が2人…もしかして…」

玄武「ああ…現場付近に潜伏している安村は偽物だ…さしずめ空港内のカメラをハックしたら映ってたんだろ本物の安村が…厄介な事になりそうやな…」

晶「急ぎましょう」

玄武「おう」

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〜都内某所〜

太一「課長、どうやら…公安及び情報6課が共に安村を見失ったようです。」

樹〔どうします?課長〕

沙都子〔駅から1kmほど離れた、中央連絡広場で見失ったようですわ…〕

課長〔うむ…その件についてはゆり君から報告を受けている。あと…6課の直枝捜査員が何者かに拉致されているとの情報も入ってきた。狙撃手の君たち2人は合流して羽田に向かってくれ。島田君には私から連絡しておく。」

太一「了解です。お願いします。」

樹〔太一、合流ポイントはG2で頼むわ。〕

太一「あいよ」

沙都子〔私は、どうすればよろしいですか?〕


課長〔沙都子くんには引き続き外事4課の指揮下で動いてくれ。他の協力者及び共犯者が居ないか分かり次第教えてくれ。〕

沙都子〔分かりました。情報が入り次第お伝えしますわ。〕

課長〔頼む。〕

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〜港湾倉庫〜

理樹「クッ…ここは…」

男「お目覚めかい?直枝巡査長…いや、今は
直枝2等空尉だったね」

理樹「貴方達は…?」

男「そうだねぇ…とある諜報機関とだけ」

理樹「まさか…(ゼロ)」

男2「お…我々の事を知ってるのかね」

理樹「ええ…この仕事をしてると嫌と言うほどあなた方の噂を聞くもんですからね…」

男3「手荒な歓迎ですまないねぇ直枝くん…」

理樹「安村課長ッ」

そこに現れたのは…安村3佐?だった…

男3「君はまだ分かってないようだね」ビリッ

しかし、変装マスクを取るとそこには…見覚えのある男が現れた…

理樹「あなたは…古賀警部…」

古賀「久しぶりだねぇ」

男2「シャオ・ジャン 準備が出来ました…」

古賀「そうか、すぐ行く」

理樹「少将?…どういう事ですか…」

男1「君が知る必要はない…」スッ

古賀「まぁ待ちたまえ、李中尉」

李「しかし…」

古賀「何度も言わせるな。私は彼と話をしている、邪魔をするなら君も消すぞ」

李「分かりました…申し訳ありません。」

理樹「古賀さん…あなた方は(ゼロ)ではなさそうですね…」

古賀「察しが良いね。そうだ、我々は〔零〕であって〔ゼロ〕に在らず。」

理樹「つまり偽の〔ゼロ〕という事ですか…」

古賀「簡潔に言うとそうだね。」

理樹「一体何者なんですか…」

古賀「それを君が知ってしまうと…君の命を頂戴しなければならなくなるが構わんかね?」

理樹「いいでしょう…」
(沙耶、理沙…ごめん…どうやら僕は君達にもう会えないみたいだ…)

僕は目を閉じ…覚悟を決めた…

古賀「では…」

バタンッ

???「その必要は無いぜッ」

李「何者だッ!?」スッ

???「銃を下ろせッ!貴様らは既に包囲されている。大人しく投降せぇッ」

そこには、特殊部隊のような姿をした男達が…

李「このままでッ」

古賀「やめろッ!李中尉ッ銃を下ろすんだ。」

李「……しかしッ」スッ

タァァンッ


李「ぐっ……」

隊員「致命傷は避けている、大人しく銃を下ろせ…何度も言わせるな」

古賀「ここは大人しく言う事を聞きなさい。」

李「分かりました…」

古賀「外に居る、もう1人は大丈夫なのかね?」

隊員「もう1人の男も制圧しているが命に別状は無い。安心しろ。」

古賀「そうか…」

コツコツコツコツコツコツ

???「まさか、我々を騙る組織が出てくるとは…一杯食わされましたよ。」

古賀「貴様は…窪田」

渉「お久しぶりですね。古賀さん…いや、中国軍参謀部第2部部長 張功朗 少将さん」

古賀「なぜそれを…」

渉「我々の仕事を侮ってもらっちゃ困ります。しかし、ここまで調べるのに時間がかかりましたね…それと…李情報中尉に樊少尉ですか。」

古賀「貴様は一体…」

渉「あなた方が騙った組織の者とだけ…」

李「まさか…ゼロ」

渉「そうですね。本来なら我々の存在を知った者は殺さなければならない規則ですが…今回は特別に生かしてあげましょう。ただ、私の質問に答えて頂けたらですね…」

李「分かったッ 答える。なんでも聞いてくれッ」

古賀「李ッ!馬鹿者ッ」

李「…ここは彼らの言う事を聞くのが得策でしょうッ! それで…何を知りたいんだ…君らは」

渉「そうですねぇ…我々を裏切った安村は今どこに居るのですか?」

李「それは…」

渉「答えることができないのならそれでも構いません 彼のお命を頂戴する事になります…」スッ

そう言うと窪田3佐はボールペンのような物を
樊少尉に突き刺した。

樊「ヒィッ…」

短い悲鳴と共に樊少尉は意識を失った。

古賀「分かったッ、喋るから命だけは…」

渉「最初からそうしておけばいいんですよ。」

古賀「詳しいことは聞いてないが…奴は国外に逃亡を図ろうとしている…」

渉「ほぅ…それで奴はどこに逃げようとしてるのですか?」

古賀「それは…私にもわからない…ただ南米の方に飛ぶとだけ聞いた…」

渉「分かりました。ありがとうございます。約束通りあなた方を解放します。」

理樹「え…良いんですか!?」

渉「構わん、彼らを解放してやれ。」

隊員「分かりました。」

古賀「ありがとう…ありがとう…」

渉「礼なら必要ありません。外にボートを用意してます。早くお逃げなさい」

古賀「了解した。行くぞッ」

2人「はい…」

渉「妙な勘ぐりや、変な行動をされるとどうなるか…覚悟しておいて下さい。」

理樹「ッ…」

表情を一切変えずに淡々と喋る窪田3佐に思わず寒気が走った。

古賀「それでは失礼する…」ガチャン

そう言うと古賀達は倉庫を出て行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜港湾倉庫街〜

理樹「ありがとうございます。助かりました…」

渉「礼なら、間島課長に言ってくれ。
それと…ここで見た事聞いた事は全て忘れろ。何を聞かれてもそんな事はなかったと答えるんだ。いいな?」

理樹「分かりました…あの彼らは…」

僕は特殊部隊風の男達について聞いた。

渉「あぁ、彼らは俺の部下だよ。(ゼロ)の中に存在する特殊部隊とだけ言っておこう。」

理樹「そうですか…最後に1つ聞いても?」

渉「なんだ?」 

理樹「古賀……いえ、あの中国人スパイを逃しても良かったのですか?」

渉「ああ、それについては心配ない。」

理樹「どう言う事ですか?」

渉「直ぐに分かるさ。とりあえず、君は任務に戻りなさい。恐らく、6課は羽田に向かっている筈だ。高崎や仲村に何か聞かれたら適当に誤魔化しておいてくれ。健闘を祈る。」ビシッ

理樹「ありがとうございましたッ」ビシッ


窪田3佐に答礼を返した後、僕は倉庫を出て羽田へと向かった。道中、港から少し離れた海上で炎上する小型ボートを見つけたが…窪田3佐の(直ぐに分かる)と言う言葉を思い出し、僕は目的の場所へと急いだ…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

渉「窪田から間島課長へ、直枝を解放しました。やはり裏切り者の行先は羽田空港で間違いないそうです。」

僚一〔分かりました。窪田班は現時刻を持って任務を終了し通常業務に戻ってください。〕

渉「分かりました。通常業務に戻ります。」

僚一〔ご協力感謝します 健闘を祈ります〕プツッ

渉「ふぅ…二重スパイで優秀な部下を騙すのも胸が痛むなぁ…」

智樹「え?持病…?」

渉「ちゃうわ…大した事は出来んかったけどこんなもんでええかな?」

智樹「ああ…上出来や渉」

渉「小田ちゃんこそ…トカゲ役に徹してくれてありがとうね。」

智樹「同期とは言え、ここまでさせたんや何か見返りあるん?」

渉「黒髪の綺麗な婦警の愛人さんはお前とワシだけの秘密やで」

智樹「あ、それでお願いします。」(////)

小田切 智樹 警部補
表向きは 警視庁 新宿署刑事部捜査3課 所属で
直枝や松原の直属の元上司にあたる。
しかし 、実際は警察庁警備局警備企画課〔ゼロ〕
窪田班のメンバーで公安の実働部隊である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜車内〜

樹「やっぱ太一も勘づいてたんか…」

太一「ああ、間違いない。渉が〔ゼロ〕や」

樹「しかし、なぜ直枝を拉致る必要が?」

太一「いや、直枝を拉致った〔零〕は偽物やな」

樹「零…まさか…直枝を拉致ったのは中国軍参謀部第2部…通称〔零〕か…」

太一「そう言うことになるな…しかし、その〔零〕の人間が一体、誰なのか渉とその場にいた奴しか分からない。」

樹「なるほどな、これで新宿で起きた飯山の射殺も辻褄が合うな」

太一「そうやな、誰が撃ったんかは特定出来てないけどな…」

樹「俺達〔SiCO〕も諜報活動についてはまだまだって事やな…」

太一「しゃあない、俺たちはあくまで本業は銃隊の人間じゃけぇね本職には敵わんね。」

樹「祐介とゆりからの連絡は?」

太一「現在、羽田に急行しているようだ。直枝が解放された事を伝えたら安堵してたよ」

樹「そうか…俺たちも羽田に急ぐぞ。公安よりも先に奴を捉える」

太一「ああ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜羽田空港〜

晶「安村は、この中のどこかに…」

玄武「そうだな、奴のことだ大っぴらには動かんだろ。現在、唯湖に頼んでセキュリティシステムをハッキングしてもらってる。」

晶「あら、いつの間にそんな事を?」

玄武「ここに来る途中に頼んでおいた。晶の方はどうだ?」

晶「現在、内調S班の同僚に調べてもらってます。しばしお待ちを…」

玄武「そうか…准将からの連絡は?」

晶「定時の連絡以降は何の指示も来てません。安村を見つけ次第拘束しろとだけ…」

玄武「了解した。」

その時… priririri

玄武「唯湖か?結果はどうだ?」

唯湖〔玄武くん、数十分前に貨物センターの監視カメラに安村らしき男が映っていた〕

玄武「でかした、流石は俺の嫁だ。礼を言うよ」

唯湖〔玄武くん…無茶はするなよ?〕

玄武「分かった。ありがとう唯湖」pi

晶「見つかったんですか?」

玄武「ああ、数十分前に空港の貨物センターにそれらしき男が写っていたらしい。」

晶「なるほど…となると変装している可能性がありますね。」

玄武「そうだな、俺たちも二手に分かれて奴を探すぞ。」

晶「了解しました。」

玄武「何かあればすぐに連絡しろ。いいな?」

晶「分かりました。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜空港内〜

理樹「お待たせしました。」

祐介「無事だったか、直枝君」

ゆり「無事で何よりです。」

理樹「ご迷惑をおかけしてすいません。」

祐介「気にするな。俺たちも分散して奴を探すぞ。直枝君とゆりは一緒に東側から動いてくれ。俺は西側から探す。」

2人「分かりました。」

祐介「あと…直枝君、単独行動はするなよ?」

理樹「分かりました。気をつけます…」

祐介「うむ。ゆり、先輩たちに連絡を」

ゆり「了解、サイコ05からサイコ02熊岡警部補へ」

樹〔こちらサイコ02 直枝と合流できたか?〕

ゆり「はい、これより空港内の捜索に入ります。高崎さんが西側から私と直枝さんは東側から動きます。」

樹〔了解、我々も到着次第合流する。奴を見つけても手を出すなよ?〕

ゆり「了解」

樹〔あと…祐介ここだけの話だが…〔ゼロ〕は6課潜入工作課長の渉こと窪田3佐だ注意しろ。〕

祐介「やはり窪田3佐が…」

樹〔もし仮に、鉢合わせしても邪魔はするなよ。奴とついでにお前らまであの世に送られちゃ堪らんからな…〕

祐介「了解、気をつけます。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜警視庁公安部〜

1課長の島田警視が珍しく声を荒げていた。

島田「先輩ッ、我々はこの件から手を引けということですかッ」

男〔すまないがそういう事になる…君達が諜報のスペシャリストなのは重々承知している。
しかし、これは国家存亡の為なんだ…分かってくれ…島田くん〕

島田「そんな…我々は何の為に動いてきたと思ってるんですかッ」

男〔君たちの気持ちも分かる…君は大切な部下を失いたくはないだろう?分かってくれ…
以後の捜査はこちらで指揮を執る。〕

島田「分かりました。失礼します…」pi

舞「課長…大林警視正は何と?」

島田「この件から手を引けとの事だ。悔しいが我々は現時刻をもってこの件の捜査を終了する。以後は別命あるまで待機しておけ。」

舞「分かりました。あの…」

島田「どうした?熊岡の事か?」

舞「ええ…先輩は大丈夫なのでしょうか?」

島田「アイツなら心配ない、大林さんの指揮下で動いているとだけ伝えておこう。」

舞「そうですか…」

島田「心配するな、アイツの生命力はゴキブリ並に強いのは君も知ってるだろ?w」

舞「そうですね。先輩はちょっとやそっとで死んだりしませんよね。」

島田「分かってるじゃないかw 話は以上だ任務に戻りたまえ。」

舞「分かりました。失礼します」ガチャッ

〜廊下〜

舞「ふぅ…立ち聞きとは趣味が良くないわ。
梨花、沙都子ちゃん」

2人「ひっ…」

舞「怒ったりしないから出てきなさい。」

梨花「失礼しました」ソロソロ

沙都子「やはり舞先輩には敵いませんわ…」

舞「それで、2人ともどうしたの?今後の任務について?」

梨花「それに関しては、別命あるまで待機と聞いてます。」

沙都子「私たちが知りたいのは…舞先輩と」

舞「私と先輩…いや、熊岡警部補の関係について知りたいのね…いいわ、待機でやる事もないし ついて来なさい。」

2人「はい!」

2人を連れて、カフェスペースに来た。

舞「はい、2人とも。」

梨花「ありがとうございます。」

沙都子「ありがとうございますですわ。」

私は2人に缶コーヒーを手渡す。

舞「それで…私と熊岡先輩の出会いについて聞きたいのね?」

沙都子「はい!」

梨花「凄い食いつき様ね…」

舞「ふふ、私もびっくりだわ。まず、私と先輩が出会ったのは…大学を出て警視庁の湾岸署の所轄配置だったの。その当時、私の相棒だったのが熊岡先輩よ。」

沙都子「熊岡警部補が所轄の元敏腕刑事だったなんて想像できませんわ…」

梨花「沙都子は会ったことあるの?」

沙都子「ええ、一度だけお会いしたことがありますわ…」

舞「そういえば、沙都子ちゃんも元湾岸署だったわね。でも、配属されてすぐに機動隊に異動になったんじゃなかった?」

沙都子「そうですわね。私が配属されたと同時に確か…第1機動隊に転属されました。」

舞「当時、今では考えられないほど取っ付きにくい性格だったわ。なんて言うか…事務的な会話以外ほとんど喋ることが無かったわね…」

梨花「さっきの会話からは想像できないです…」

舞「無理もないわ、先輩はかつて…捜査中の事故で相棒を失ってるの…」

沙都子「捜査中の事故…?初めて聞きますわ」

梨花「確か…数年前に連続通り魔殺人事件の犯人を追跡中の警察官が乗用車に撥ねられて亡くなったって…」

舞「そう…その亡くなった警察官が当時、先輩の相棒だった澤田 康平 巡査部長よ。」

梨花「ニュースでも大きく取り上げられてましたね。当時の見出しは〔警官異例の殉職者〕だったはずです…」

舞「よく覚えてるわね。その事故の後からね…先輩は笑うことがなくなったのは。でも、当時の私も嫌な後輩だったと思うわ…プライドだけ一丁前のキャリア組だったし、相棒として認めて欲しくてがむしゃらに仕事してたわ…」

梨花「なかなか壮絶ですね…」

舞「先輩と距離が縮まったのは、ある事件がきっかけね。とある事件で張込みをしてる時だったかしら…相変わらず事務的な会話以外喋らない先輩に嫌気がさして、命令を無視して
1人勝手に突っ走ってたの…当時の私も若かったから冷静さを欠いた事もあったわね…ふふっ」

沙都子「今の魚見先輩からは考えられない過去ですわね…」

舞「先輩の待ての指示を聞かず突っ走って、犯人を追ってたまでは良かったのだけど…もう1人の犯人に後ろから殴られて、そのまま気を失ったの…次に目が覚めた時には、2人の犯人は白目を剥いて伸びてたわ…私は何が起こったのか分からなくてしばらく呆然としていたら…先輩に声をかけられたの…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(舞の回想)

樹「大丈夫か?」

舞「ええ…まぁ…」

樹「そうか…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

舞「先輩の顔をまともに見ることができなかった…私の命令無視を怒ってた思うけど、それよりも凄く悲しそうな顔をしていたわ…
その時、気付いたの…本気でこの人は私の事を…こんな生意気な後輩を大切にしてくれてたって事を…その後に先輩が…」

梨花・沙都子「………。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(舞の回想2)

樹「お前が無事で良かったわ…」

舞「え………。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

舞「その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが砕けた…それと同時に頬を涙が伝ってたわ。
気付いた時には先輩に抱きしめられて、泣いていたわ…大の大人が大粒の涙を流しながら…今思い返すと恥ずかしいわね…」

梨花「壮絶すぎますよ…」

沙都子「そうですわね…」

舞「あの一件以降、私と先輩の距離は縮まって恋人同士みたいって揶揄されてるわ。」

沙都子「そうですわね!先程の会話を聞いてたら淡いウブなカップルの様でしたわ!」

梨花「こ、こら沙都子…すいません沙都子が」

舞「良いのよ。実際にカップルと言うか…婚約者だから、気にしてないわ」ニッコリ

2人「はぇ?婚約者?」

舞「え?言ってなかった?」

梨花「聞いてませんよ!そんな話!先輩と熊岡警部補が婚約者!?」

舞「梨花、声が大きいわ…」シーッ

梨花「し、失礼しました…びっくりして つい」

舞「そっか、この事知ってるのは課長と一部の人だけだものね…仕方ないわ。」

沙都子「式はいつ挙げるんですの?」

舞「それについてはまだ未定ね…今は目の前の事件を解決することが最優先事項ね…」

沙都子「そうですわね…」

梨花「そうですね。」

舞「その時が来たら、また皆に報告するわ。
だから2人共無茶はしないでね…?約束よ?」

2人「分かりました!」

また「元気があってよろしい。それじゃ私は先に戻るわね…」コツコツコツ

そう言い残すと舞先輩は休憩室を後にした。

沙都子「羨ましいですわね…」

梨花「ええ…」

沙都子「私たちも恋人見つけたいですわね…」

梨花「そうね…」



      

         続く…

        


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