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規程類の内部監査_きれいに言うだけではダメ

 内部監査は大きく2つの分野に分かれています。一つはJ-SOX、もうひとつは業務監査。J-SOXは監査法人とのやりとりの中で決めていく事が多い分野ですが、業務監査については内部監査室の計画で適宜に実施していく分野です。


私は1人内部監査人の為、計画も実施も1人で決定しています。どの分野をやるか?リスクアセスメントしながらも、でも普段の業務部門がされている内容を横で見ていると気づく分野がたくさんあります。あるべき姿ではないなと。


こういう時にどこから着手するか?を考えた場合、私は「規程通りに整備・運用出来ているか?」からはじめます。


会社組織って「〇〇さんがやっている仕事」という事が結構あって、ひどい時はその方が異動になっても、その仕事をもったまま続けるというケースもあります。人に仕事が付く、と言われるやつです。または、その人が退職した途端、誰もその業務をしなくなるケースも。(ただ、誰もしなくても会社運営に支障が無いという事もあって、「あれって一体何だったの?」なんて事もあったりします。


規程に準拠しているか?で監査すると、たいがい従業員の方々は規程を読んでいないです。先輩からの過去から脈々と受け継がれてきた伝統芸能を口述で引継ぎ今に至る、という事も珍しくありません。


規程に準拠していませんよ。それって本来は〇〇課がやる業務ですよ。と言っても、「〇〇課で誰も受け取ってくれないんです」「だから仕方なしにやっているんです」たいていこうなります。「一生懸命仕事をしているのに、監査はああでない、こうでないって言うけど、どうしようもないんです。じゃあなんですか、やらなくていいんですか?」いうような意見をいただく事もあります。本人は本人なりの責任感で業務をしていただいているのに、ルールありきで頭ごなしに言う事は監査人として正解ではないです。規程通りにする事が最終的な目標であるけれど、その過程において従業員の方々のモチベーションを下げてしまう事は決してやってはいけない事だと思っています。

会社の業務運営(特にバックオフィスと言われる管理部門系)って、このように規程やルールが整備されているけれど、守られていない。でも業務が破綻しているわけではない。何故運営出来ているのか?従業員の責任感やモチベーションに依存して、会社の業務が回っている事がリスクの本質だと思います。極論、個々のモチベーションで業務品質が左右されてはいけないのです。加えて人に仕事が付くのは、統制面から見ても十分ではないですね。


監査人として何が出来るのか?もちろん「規程と整合してください」はやるべき事のひとつではあるけれど、唯一ではないと思います。これだけだと監査人が「監査の仕事をしています」アピールの為の監査です。今まで無理してやっていただいている事に感謝し、敬意を表した上で、でもこれから会社が大きくなっていく事を考えた時にあるべき姿は、今の状態ではないですよねと言いながら、ひとつひとつを丁寧に指摘していき、納得いただいた上でどのように変化をさせていくかを業務部門と一緒に考えていく事が必要です。なので私はアシュアランスを始めたつもりが結果としてコンサルティングに繋がってしまうという監査ばかりになってしまいます。


どう伝えるか?伝える事がゴールではなく、伝わって納得して変化を期待する。期待し続ける。監査人もなかなか孤独な仕事です。全国の1人監査人の方へ何かの気づきになれば幸いです。


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