『新しい街で』 今井美樹

KANさんが亡くなった。


不安で心が押し潰されそうな時にかぎっていつも脳内に『愛は勝つ』の最初のフレーズ“しーんぱーいないからねー♪”が浮かんでくるのが常だった(つい最近も)。
そしていつもKANさんは派っ手(ハッデ笑)で奇抜な衣装で“淡々と”弾き語りしているイメージ。
自然と笑みが溢れてしまう。


30年ちょっと前の大学時代、私はサークルでバンドを組みボーカル担当だった。当時お気に入りだった曲の中に今井美樹さんの『新しい街で』がありさっそくカバーした。

『retour』(フランス語で“蘇生”)というアルバムの中の一番ラストの曲。

どんなアーティストでもアルバムにはポップな曲やバラードなどバラエティーに富んだ曲が並ぶものだがこの『新しい街で』という曲、アルバムの中でも特に“浮いていた”のを覚えている。

何とも言えないメランコリックでセンチメンタルなメロディ。作曲は誰だろうとクレジットを見るとKANさん。
『言えずのI LOVE YOU』や『まゆみ』等明るかったりほんわか心が温まるような曲調のイメージ。
今井さんの曲にはKANさん作曲も多く『雨にキッスの花束を』が有名だったのであまりに意外だった。そしてこの曲の切なさにすっかりハマってしまった。


歌ってみるとかなり難しい。今思えば歌おうと試みるなんて非常におこがましい。
音の高低が意外と激しい。“光は~”の伸ばすところで音符が上がったり下がったり(表現が稚拙ですみません)。大サビも高い。後半の間奏のフェイクもやたら難しい。私頑張って歌った笑
この曲に作詞をつけたのも当時今井さんの曲常連の岩里祐穂さん。
フレーズには
“~わ”
“~ね”
“~よ”
と一般的に“女性らしい”といわれる語尾が全くない。
だが自然の中や都会に凛とたたずむ、誰かに依存せず自分の道を行こうと決意する”一人の女性の歌”であることがわかる。

“私はここにいる”という歌詞が自己主張や強がりに聴こえない、自然と流れるようなメロディ。たまらなくエモい。
小春日和の、明るいけどなんだか物悲しい今の時期にピッタリの曲だretour。


天国でもおっきな羽やら鎧とかつけて“淡々と”弾き語りしてるんだろうな~。

いいなと思ったら応援しよう!