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往年ファンには懐かしい『異世界ドロンジョの野望』

 木曜恒例、ライトノベル愛を語ります。今回は、私はキライではないけど、売れてなさそうな作品を紹介します。
 その少々残念な作品、それが『異世界ドロンジョの野望』です。あの「タイムボカン」シリーズの名作『ヤッターマン』に登場する悪役、ドロンジョを主人公にした作品で、令和5年5月に発売されました。
 ヤッターマンとメカバトル中に、平行宇宙である異世界から干渉を受けたドロンジョは、干渉によって発生した事件に巻き込まれていく…という物語。タツノコプロが監修しているだけあって、物語のノリは『ヤッターマン』そのもののドタバタコメディです。
 私は、『ヤッターマン』を夢中になって視聴していた世代。正直に告白しますが、セクシーな悪役ドロンジョ様は大好きでした。ですから、この本を書店で見つけた時は、もう何も考えずに購入してしまいました。
 読み終えて冷静になると、私的には一応面白かったですが、好き嫌いが大きく分かれる作品だと感じます。その大きな要因は、少々子供向け書籍っぽい文章…つまり文章の子供っぽさにあると考えます。
 文章が子供っぽいため、大人は読みにくさを感じでしょう。実際、最初の内は私も物語に入り込みにくかったです。そして、これは大きな戦略ミスだと思うのです。何故なら、この作品の主要な購買層は、私の様な往年の『ヤッターマン』ファンだと考えられるからです。そう考えると、大人でも読める程度には、文章の書きっぷりを調整してほしかったです。
 また、ただでさえライトノベルは御都合主義が激しいのに、この作品は御都合主義のオンパレード状態です。「まぁ、『ヤッターマン』だから何でもアリだよね」と思えれば、ドロンジョらしい活躍を楽しめるでしょうが、受け入れられないなら全然面白くないでしょう。
 それと、ライトノベルは物語の展開を楽しむ部分が強いので、主張点というか、テーマというか、メッセージ性は強くないのが一般的です。そのメッセージ性が『異世界ドロンジョの野望』では結構強く、ある種の道徳性さえ感じる程です。
 私は、「ああ、これ、日本の子供アニメっぽい」と感じました。日本の子供アニメは、「努力は大切だ」とか「友情を大切にしよう」などのメッセージ性が強く、下手な道徳番組より道徳っぽい事が多いです。そのため、そんなアニメっぽい部分が好きではない人には、面白い作品とは感じられない事でしょう。
 これらのクセ強な部分を克服できれば、『ヤッターマン』らしさを懐かしく楽しみ、ドロンジョの悪女っぷりに惚れ直し、最後の胸アツ場面に涙できます。かなり読者を選ぶ作品ですが、ヤッターマン世代でドロンジョが大好きだった方には、一応オススメしておきます。一応…ですよ、一応。

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