ひとつなぎの出会い
小学生になった頃僕の両親は離婚した。
父は本当に忙しい人だったからほとんど家に帰って来なかったし、そうなったのは当然だと思う。
父はワールド・ブルー株式会社の社員。
家族より仕事に生きる人だったらしい。
らしいなんて、笑えるよね。全く覚えてないんだから。
街にでっかく聳え立つ蒼いビル。
あれを見ていたら嫌でも別れた旦那のことを思い出すだろうし、そもそも自分の父親がその会社の社長なんだよ。
できるだけ距離を置きたいと母が思ったのもこれまた自然な話だと思う。
離婚が成立すると同時に母は僕を連れて誰も知らない土地に引っ越した。
そして小学3年の夏休み。僕はおじいちゃんに会いに生まれ育った街へ遊びに行くことになったんだ。
母は内心穏やかでは無かったはずだ。
元旦那が生活するその街に一時的でも戻るのは精神的にキツいよね。
それでも僕がおじいちゃんに会いたいという気持ちを尊重してくれた母には感謝している。
なぜかって?
あの時あの街に帰らなければ波に出会えなかったからね。
小学3年の夏休み。
ぼくはワクワクしながらおじいちゃんに会いに行った。
普段母と2人きりで寂しかったから、おじいちゃんと毎日虫取りしたりプールに行ったり釣りに行ったりしたかったんだ。
けれどおじいちゃんはとっても忙しくて結局のところたまにしか会えなかった。
母も外に出るのを嫌がったから、結局僕は1人で公園で遊ぶことになった。
近くの広い公園には緑がたくさんあって、真ん中に大きな噴水もあった。
そこはまわりの子供達の恰好の遊び場で毎日たくさんの子供がいたよ。
友達もいない僕は1人ブランコに乗ったり、草に隠れたカナヘビを探したりして毎日過ごしていたっけ。
ある日いつものように1人ベンチに座って子供達がボールで遊んでいるのをぼんやり見ていると5人くらいの小学生が近寄ってきたんだ。
「おまえいつも1人だな。ここはおれらの公園なんだよ。よそものは入ってくんな!」
突然浴びせられた強い口調にびっくりすると同時に、好きで1人でいるわけじゃない、おじいちゃんと遊びたいんだよ、という気持ちが大きくなってきたぼくは気付けば泣いていた。
「ボクは、ボクは蒼広樹の孫だからね。ボクは泣かない」
必死に虚勢を張って涙を拭きながら男の子達を睨みつけた。
「だれだよ、あおひろきって?この辺は蒼ってつく家多いんだよ。そんなことより帰れよ。家に帰ってママのおっぱいでも飲んどけよ」
一同が大声で笑い囃し立てた。
今ならぶっ飛ばすところだけど、当時僕はまだ弱かった。
もうなんなんだよ。こんなことならおじいちゃんのところに遊びに来なければよかったよ!
そんなふうに思って下を向いていると救世主が現れたんだ。
「ちょっとアンタたち!何よってたかって小さい子いじめてんのよ!一緒に遊んであげればいいじゃない!」
「うげ!波かよ。うるせーのが来た!にっげろーー」
呆気に取られる間に男の子達はどこかへ行ってしまって、その場には波と呼ばれた女の子だけが残ったんだ。
「あなた大丈夫?見かけない顔だけど名前は?何年生?お父さんやお母さんはいないの?」
矢継ぎ早に質問を受けアワアワしている様子に気付いたようで彼女はニッコリ笑ってこう言った。
「わたしは波。海賊専門の泥棒よ!」
「か、かいぞく?」
「いや、そこワンピースのナミかい!ってつっこむところやから!」
それが僕とゆかいな波姉ちゃんとの出会いだった。フフ。ほんと波姉可愛かったな。
この後ちょっとした事件が起こるのだけど、それはまた今度にしようか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
先日蒼樹というキャラを登場させましたが、彼がマイトンの父親だ!と思って作ったはいいけど、過去に自分が書いたお饅頭の話を読んで愕然としました。
蒼社長の娘がマイトンの母親、だと!?(自分で書いてて忘れてた)
というわけで何度も関連記事を読み直し一つの結論に辿り着きました。
もうこれしかない。
本文を見るとこれで矛盾はないはず。
リアル蒼さんへのコメントで、蒼樹はマイトンの父親だ、みたいなことを一文書いていたけどさっき消したから問題ないはず。
ということで間一髪気付いたので、マイトンの少年時代を書き始めました。
ここからマイトン少年がどうやって波の初恋の人になるのかは続きで書けたらと思います。
(ほんとはここからを書きたかった!)
ワールドブルー物語って何?という方はこちらにこれまでの記事をゆにさんがまとめてくださったサイトマップがあります。
マイトンの母親が蒼社長の娘という証拠がこちら↓↓
波との淡い思い出からここにつながります。
参加してます。
サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー