前のめりに倒れた男
「他に好きな人ができたの」
以前目の前で聞いたフレーズ。
彼女に告白したら、その時付き合っていた彼氏に目の前で電話をかけて言った言葉。
その時は私が奪う側だった。
それから3年半後。
今度は電話越しにこの言葉を聞く側になった。
因果応報?
略奪したら、いずれは略奪されるというのか。
それとも彼女が次の恋をフライング気味にスタートさせる性質なのか。
彼女は続ける。
「相手は研究室の先輩でね、、」
こいつ正気か?と思った。誰が自分の次の話を聞きたいというのか。
「良い人がみつかったんやね。幸せになってね。」そう言いながらこの人は自分が1番なのだと悟った。
「私の話をきいてくれ」
全てはそこなのだ。
🟰🟰
初めての恋だった。
初めてだから距離感が分からなかった。
それまで大切にしていた家族、友人、テニス部の活動、そういったものを全て押し除けて私は彼女の優先順位を上げた。
結果、テニス部長の責任より女をとった私を部員は皆で責めた。
当たり前の話だ。
遠征先の宿泊所では1人孤立し、団体戦どころではなかった。
信頼を取り戻すにはそこから1年かかった。
それでも彼女が大事だったし、彼女も友人より私を大事にする性質だったから2人して孤立していった。
共依存?
2人で泣きながら、世界がどうなろうと2人いれば大丈夫だね、と抱き合った。
その人がいともあっさりと次に寄りかかる木を見つけたと半分嬉しそうに報告している。
全てがあほらしくなった。
薬剤師の国家試験を控えていたがそれもどーでもよくなった。
実際その年は落ちた。
一緒に買った安いシルバーの指輪はその日のうちに鴨川に投げ捨てた。
そして私は私の気持ちを納得させる理由を探した。
🟰🟰
彼女は甲賀の出身だった。
もしかしたらくのいちだったのかもしれない。
実は大切な任務があって、泣く泣く私と離れたのかも。
伊賀忍者との大決戦を間近に控えていて長老から急遽召集されたのかも。
忍びの世界では私の足が速いことが有名で 将来の忍び候補として期待されていたけれど、3年半の見極め期間で「やっぱこいつ素質ねーわ」ってなったのかも。
だとしたら、そもそもこちらとしては忍びとして生きていくつもりはなかったわけで、両者win-winの結末だったのかも。
彼女のテニスラケットは持つところを外すと小刀になっていて、だから彼女はいつもラケットを持ち歩いていたのかも。
いつも隠しているおでこには特別な印が入っていて不意に見てしまったら術が発動して私の命は無かったのかも。
だとしたら、死ぬ前に別れられてよかったのかも。
でも水の上は歩いてみたいから それだけは教えてもらっとけばよかったかも。
なんだ、そーか。
いや全く納得できねーわ。
早く次の恋を探そう。
そう決意し、翌月には新たな恋が始まるのである。
何故なら私は前のめりの男マイトンだから。
なんのはなしですカップル
🟰🟰🟰
今日はこちらの続きの話でした。
まだ読んでない方は一度見てみてください。そしてこの話はまだ続きそうです。
気が向いたらまた書きます。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
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