好きな男の話 2️⃣
帰りの電車、ずっと考えていた。
「私、多分、いや絶対、あの男のことが好きだ」
いやいや。
なんで?
なにが?
タイプじゃないじゃん。
私は、AB型っぽくてメガネをかけたくせっ毛の男が好きじゃん。
そもそも、遊びの予定だったじゃん。
もう会わなくても、いいんじゃん。
帰りの飛行機、本当に飛ばなければいいのに。
帰り着いて、彼にLINEをした。
「楽しかった、ありがとう。」
すぐ返信が来た。
「俺も楽しかった!ありがと!寂しい」
嬉しかった。
誰かに求められる感覚、久しぶりだったから。
後悔した。
好きと言えなかったことを。
彼とは毎日LINEを続けた。
たまには電話もした。
酔った勢いでかけた電話にも出てくれた。
笑いながら
「飲みすぎたらあかんで」と言ってくれた。
彼が電話越しに笑う度に、私はあの笑顔を思い出して、胸をときめかせた。
あの笑顔がまた見たい。
私の前で笑ってほしい。それで抱きしめてほしい。
ある日の電話で私はついに気持ちを伝える。
「私、○○くんのこと好き」
彼は
「俺も好きだよ。両思いやな」
そしてこう続けた。
「会いたいなあ。次はいつ来てくれるん?」
私は、恋人になれると思っていた。
好きを伝えたら、恋人になれるもんだと思っていた。
ダメな私は、好きと言われたら、欲が出た。
「恋人になってほしい、って事なんだけど」
彼は黙り込んだ。
私はその沈黙が耐えられなかった。死にたくなった。
だから沈黙を破った。
「私も会いたいよ!変なこと言ってごめんね」
「ええで、次会うのが楽しみやなあ」
そのあとの電話は、
楽しそうに話す彼に聞こえないように
嗚咽を殺して泣いた。
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