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コロナ妊婦は帝王切開?治療法は?2022.1更新

2022年1月現在、新型コロナウイルスに感染してしまったの妊婦さん(中等症)の治療をしている「コウノドリ先生」に現場のお話(今回はメッセージ上で) を伺いました。

Q. 「コロナ妊婦さんは、帝王切開になってしまうか?」という質問が増えました。デルタよりもオミクロン感染が増えてきた現在、現場ではどういう判断基準で手術に切り替えていますか?
A. 濃厚接触者、陽性者共に隔離期間あけるまでに陣発したら基本は帝王切開です。デルタの時は本人もゼーゼーでどうにかしてくださいって感じの人が搬送されてきたのですんなり本人も受け入れてくれますが、今は、「なんで?怒」みたいな患者も増えてきて…説明するのが難しくなったな…と思います。確かにオミクロンだけならそこまで焦らなくてもいいのかもしれませんが、まだデルタもいるのと、今後毒性が強くなった新しい変異株が生まれるのも考慮しなければなりません。ご理解いただいて、なるべくコロナに感染しないようにご安全に過ごしていただきたいです。

Q.3回目のワクチン接種(ブースター接種)はいかがでしょう?
A.打てる時に打つのが1番だと思います。3回目を少し遅らせたいという場合はまだいいかもですが、1回も打ってないってのはやっぱりまずいです。妊婦だけでみても、ワクチン接種済みの人は軽症の中でも、ほぼ無症状に近いです。未接種の人は肺炎にはならないものの、咽頭痛や、咳が長引いている印象があるので、現場から診てもワクチン効果を実感し、ありがたいと感じています。

2022年1月14日、妊婦に対する新型コロナウイルスワクチン3回目接種の優先接種についての要望を、日本産婦人科学会や医会から厚労省健康局に提出しております。

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https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20220117_COVID19.pdf


Q.今後懸念されていることはなにかありますか?
A.陽性人数多すぎて陽性者の分娩を受けないクリニック等のかかりつけの人が今後行き先を失わないか危惧してます。陽性妊婦は赤ちゃんの隔離も必要になってしまうのでGCUベッドとかも足りないので、我々のところもなかなかカツカツです。(後述)

下記対談は、2021年8月のものですが、非常にまとまっておりますので、
妊婦さんはぜひ、お時間があるときにご視聴ください。

Q. 妊婦の感染経路は?

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A. 保健所でも感染経路を確認していますが、念のため当院でも入院時に確認しています。ほとんどの感染経路は「家族内感染」です。旦那さんに先に症状が出て、その後妊婦さんも検査を受けたら陽性だったというケースが大多数です。あとは、職場に陽性者が出てそこからのクラスター感染等です。
一般の方からすると、「遊び歩いていたに違いない」「会食したんでしょ」「旅行行ったんじゃない?」と思われがちですが、普通に気を付けていても感染してしまうことはあるのです (それがデルタ&オミクロンの世界)。

Q. デルタとオミクロンの感染力
A. ひとりが5人以上に感染させているため、家族全員感染ケースが増えています。オミクロンではデルタの4倍以上の感染力で、驚異的です。

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Q. デルタ&オミクロン妊婦の重症化のスピードは?

A. デルタ株以前は、一般的に妊婦さんも感染すると発症 7-10日 で増悪し、逆にそこを乗り切るとそこから急に悪くなる、という例は少なかったです。実際、妊婦さんの感染者は軽症でした。しかし、デルタ株に置き換わってから中等症・重症化する妊婦さんが増加。当院に入院した時点の胸部レントゲンで、明らかな肺炎像がある方はその数日後には酸素開始になってしまう事が続いており、重症化のスピードが速くなったように思います。
一方、オミクロンの場合は、ワクチン接種済みの妊婦さんは、軽症の中でも、ほぼ無症状に近いです。未接種の人は肺炎にはならないものの、咽頭痛や、咳が長引いている印象があるので、現場から診てもワクチン効果を実感し、ありがたいと感じています。詳しくはこちら↓

Q. 挿管例(人工呼吸器症例)は? (2021年8月当時)

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A. 当院でも挿管例は数例いますが、妊婦で挿管以上の処置が必要になる場合、基本は転院搬送先を探します。35週未満の赤ちゃんで妊娠終了(緊急帝王切開などで児を娩出する事)が必要になる場合は、NICUがある施設かつ COVID-19重症例をみられる所を探します。ただ、今はすぐに搬送難しく、従来は挿管していた症例でも、NHF(ネーザルハイフロー)という、1分間に30-60Lの大量の酸素を鼻から吸入するつらい治療をしながら改善を待ちつつ、搬送先も探していくという状態です。ネーザルハイフローで粘ることも増えていますが、どんなに状態がシビアでも、挿管されない場合は「重症ではなく中等症」扱いになっています。

Q. 妊婦の死亡例はありますか?(2021.8月当時)

A. 当院での妊婦、胎児の死亡例はありません。デルタ株以降のデータはまだ集計が取れていませんが、デルタ株以前でも、妊婦の死亡者報告は首都圏近郊では無かったと記憶しています。

Q.  妊婦さんがPCR陽性になったら?

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A. 
<中等症Ⅱの場合>
 ・35週以降 緊急帝王切開後お母さんの治療へ
 ・22-35週   中等症までは赤ちゃんに配慮しつつ可能な治療法を
 ・22週未満 重症化しそうであれば妊婦さんの治療最優先 (赤ちゃんへの悪影響がある可能性の治療も行う)

<重症の場合>
 ・26-28週 緊急帝王切開後、お母さんの治療を本格的に行う。場合によっては、人工呼吸器・ECMO等の治療を行う
 ・26週未満 妊婦さんの治療最優先(赤ちゃんへの悪影響がある可能性の治療も行う)

*注意* イベルメクチン、ダメ、絶対! 

Q.  コロナ陽性で帝王切開の分娩になったら?

A. 麻酔方法や手術の術式は通常通り。
赤ちゃんが生まれた後、通常ではお母さんが触れたり、枕もとに連れてきて会ってもらうことが多いですが、コロナ陽性での帝王切開では、傍での面会ができません…。生まれたら直ぐに、母体から距離を取ったインファントウォーマーの上で最低限の処置をした後、速やかに手術室を退室します。
お母さんがコロナ陽性でも、赤ちゃんは陰性であることがほとんどで、「胎盤や母乳を介した感染は今のところない」と言われています。出生後ウイルス暴露の時間を最短にすることで水平感染も防げると考えられています。適切な感染防御処置を取った児であれば、濃厚接触者には当たりません。
しかし、可能性は0ではないため 24時間以内と48時間以降の2回のPCRで陰性を確認する必要があります。(新生児学会)
お母さんの隔離期間が終わるまでは赤ちゃんと面会はできません。
授乳は直接でなければ、母乳から感染するリスクは非常に低いため、お母さんの状態が安定していれば、搾乳で届けることはできます。

Q. 通常のコロナ患者さんと、妊婦さんの治療法の違いは?

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A. 赤ちゃんがお腹にいる状態では、ステロイドやヘパリンなどがメイン。レムデシビルやバリシチニブは催奇形性などのリスクがあります。
イベルメクチンはコロナに効果はありません、予防投与はもってのほか…。
ただ、安心していただきたいのは、今のところ、オミクロンはデルタと違い、妊婦の症状が非妊婦に比べ特別重いという報告は今のところなく、肺炎の発症頻度も高くないので必ずしも入院が必要ではないと考えます。
また妊婦の治療方針は今までと変わらず、中等症以上で重症化リスクがある場合にはステロイド投与を行う形になります。
ここ最近軽症時に使われ始めているモラヌピラビル、ソトロビマブ等は妊婦には積極的には投与しません。

最後に・・・

2021年8月、自宅療養中の妊婦さんの搬送先がなく、自宅出産になり児が死亡してしまうという大変痛ましい事案が発生してしまいました。早産児の受け入れはNICUがある病院で無いと難しく、コロナ禍以前でも新生児科医の人数は少なく、ギリギリの状態でした。更にコロナ陽性という条件が重なり、悲しい事態になってしまったと思われます。新生児科の先生やスタッフは高い技術が必要で、当院でもギリギリの状態で搬送先が見つかり、安堵しているケースが続いています。いつどこの病院で同様の事態が起きてもおかしくないです。本当に今まで経験したことのない非常事態です。

オミクロン株の猛威がおさまるまでの「お願い」
1.不織布マスクを使いましょう!
  ウレタンマスクはスポンジを乗せているだけなので無意味。
2.同居家族以外との会食はしない!
  外食はできれば避け、テイクアウトを活用。
3.旦那さん・パートナーさんが家に持ち込んで感染が8割!
  赤ちゃんと奥さんのために、会食の誘いは断りましょう。
4.妊娠中だからこそ、ワクチンを積極的に打ちましょう!
  日本産婦人科学会でも、全週数において推奨されています。

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~本当に怖い「コロナ後遺症」~
脱毛・嗅覚味覚障害が有名になりましたが、休養しても回復しない「倦怠感」「ブレインフォグ」のせいで家事すら難しくなったりします。
みおしんの場合は、10年前にカンピロバクタウイルスに感染し、慢性疲労症候群を発症しました。半年間寝たきりになり、復職に20か月、週4勤務で安定するまで3年復帰にかかりました。未だに疲れやすくモビリティWHILLを使用しています)。

「コロナ後遺症」については,かんわいんちょー / Youtube医療大学 などで論文を紹介してくれています。
デルタ感染後の肺機能に関しては、20代,30代でも炎症がひどく、肺が真っ白になることがあり、一度器質化(線維化)してしまった肺はもとに戻らないので心配です。

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 「新規感染拡大の抑制・医療体制の確保・ワクチン接種の加速」

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