【withE通信:法律クイズ!解説編】
この記事は,前回の「法律クイズ!」の答え合わせ&解説になります。何問正解できましたか?
まだやってないよ! っていう人は,ぜひチャレンジを!
クイズをやらなくても,この記事を読んで,ぜひ一緒に法律について勉強していきましょう!
はじめに
今回の法律クイズは,『こども六法(山崎聡一郎著,弘文堂)』を参考に作成しました。
本来法律の条文は,難しい言葉で書かれているので,なかなか理解しづらいものです。『こども六法』は,そんな法律の内容について,小中学生でも理解できるような言葉づかいや,イラストを用いてとてもわかりやすく解説しています。
今回のクイズで法律に興味を持った人は,ぜひ調べてみてくださいね。
法律の種類
法律には,数え切れないくらいたくさんの種類がありますが,今回はその中でも特にメジャーなものや,小中学生のみなさんに関わりの深いものを取り扱っています。以下の7つになります。
憲法:国の仕組みや,人権などの理念について定めている。国の最高法規であり,全ての法律は,憲法に反することができない(最強のルール!)。
刑法:犯してはいけない犯罪について定めている。刑法に反すると,刑罰を受けることになる。世の中の安全を守るためのルール。
刑事訴訟法:犯罪の捜査や,裁判の手続きなどについて定めている。加害者の人権も守りながら真実を追求し,本当に罪を犯した人だけに,適切な刑罰を与えて裁くためのルール。
少年法:罪を犯してしまった子どもに関することについて定めている。罪を反省させ,教育や環境の調整を行うことで,子どもにもう一度やり直すチャンスを与えるためのルール。
民法:人と人との争いを解決する方法などについて定めている。「あたりまえ」を条文として定めており,トラブルが起こった時に判断の基準となるルール。
民事訴訟法:民事裁判に関することを定めている。トラブルが話し合いで解決できなかったとき,裁判で決着をつけるためのルール。
いじめ防止対策推進法:いじめの定義や,いじめを防止・解決するために,国,学校,保護者,小中学生のみなさんが果たすべき責任や義務を定めている。いじめを無くすためのルール。
以上を踏まえて,それでは,早速答え合わせと行きましょう!
初級編
1.法律を知らなかったら,罪を犯しても罰せられない。
→ ✕:法律を知らなかったとしても,それだけで罪を犯す意識がなかったとは認められません(刑法38条3項,故意)。ですから,私たちは法律についてある程度知っておく必要があります。「知らなかった」では許されないのです。
2.警察や先生など,公務員の仕事を邪魔してはいけない。
→〇:公務員の仕事を邪魔するために,暴力をふるったり,脅迫をしたりした人は,3年以下の懲役か禁錮,または50万円以下の罰金に処されます(刑法95条1項,公務執行妨害及び職務強要)。例えば授業中に寝てるのを注意されたからといって,先生の胸ぐらを掴んだり,ものを投げつけたりするのは立派な犯罪です。反撃で先生が殴るのは,もちろん体罰ですけどね。
3.イタズラで相手に水をかけても,殴ったり蹴ったりしてるわけじゃないから暴行にはならない。
→✕:人に乱暴なことをしたけど,ケガを負わせなかった場合は,2年以下の懲役,または30万円以下の罰金か拘留,科料に処されます(刑法208条,暴行)。水をかけることはもちろん,耳元で大声で騒いだり,当たらないように石を投げつけたりすることなども,立派な暴行にあたります。
4.お店にあるコンセントで勝手にスマホを充電しても,罪には問われない。
→✕:電気は物として扱う(刑法245条,電気)ので,もし勝手に使うと窃盗罪(刑法235条,窃盗)になります。
5.逮捕された人は必ず犯罪者である。
→✕:「逮捕」とは,事件の被疑者が犯罪の証拠を隠滅したり,逃亡したりすることを防ぐために,被疑者を強制的に拘束して,留置施設に連れて行き,留め置くことをいいます(刑事訴訟法60条,199条)。あくまで犯罪捜査のために行うことであり,逮捕されたからといって,すぐに犯罪者となるわけではありません。犯罪を犯したかどうかは,証拠に基づいて裁判で判断されます。
また,テレビでよく聞く「容疑者」という言葉も,法律で決まっている言葉ではありません。法律的には「被疑者」といいます。
世の中の人は,逮捕されたり,被疑者とされたりしたら,必ず犯罪者であるかのように扱いがちですが,これは大きな間違いです。逮捕はあくまで犯罪捜査のために行う行為であり,被疑者が犯罪を犯したかどうかは裁判で判断します。このような偏見は,日本の社会の大きな問題点です。
6.目の前で犯罪を犯している人を見つけても,警察官じゃなければ逮捕できない。
→✕:今,犯罪を行っている最中の現行犯ならば,誰でも逮捕することができます(刑事訴訟法213条,現行犯逮捕)。万引,ひったくり,暴行,痴漢など,犯罪行為を見かけたら,勇気を出して捕まえましょう。また,現行犯逮捕をした後は,速やかに警察の人に引き渡す義務があります(刑事訴訟法214条)。
7.落とし物は交番に届けなきゃいけない。
→〇:当たり前のことですが,ちゃんと条文があります(遺失物法4条1項)。もし3ヶ月以内に持ち主が見つからなかったら拾った人のものになります(民法240条,遺失物の拾得)。なお,届けずに自分の物にしてしまった場合,犯罪になります(刑法254条,遺失物等横領)。
8.悲惨な事件を起こしたのであれば,どんな罪でも必ず死刑にできる。
→✕:誰であっても,法律の定める手続に基づかなければ,生命や自由を奪われたり,刑罰を科されたりはしません(憲法31条,法定の手続きの保障)。これを「罪刑法定主義」といいます。
罪の内容は,条文によって定められています。この範囲の中で,その人の刑罰を決定します。
ですから,「あいつはひどいやつだ!」といって勝手に死刑にすることはできませんし,裁判もしないのに,一般人が勝手に誰かに罰を与えることはできません。
9.他人の物を壊したら,弁償する義務がある。
→〇:これも当たり前ですね。わざと,または不注意によって,他人の権利や,法律によって守られる利益に損害を与えた人は,損害に対してお金を支払わなければなりません(民法709条,不法行為による損害賠償)。
10.誰にでも幸せになる権利がある。
→〇:すべての国民は,かけがえのない個人として尊重されます。そして,生命,自由,幸福を追求する権利は,他の人や社会に迷惑をかけない範囲で,最大限に尊重されます(憲法13条,幸福追求権)。誰にでも幸せを追求する権利があるわけですが,「他人に迷惑をかけない範囲で」というのがポイントですね。これを「公共の福祉」といいます。例えば,銀行のお金100億円を盗んで,大金持ちになって幸せになろうとすると,多くの人の財産に損害を与えることになります。こういうのはダメということです。
中級編
1.線路の上に石を置いても,ただのイタズラなので犯罪にはならない。
→ ✕:鉄道やその標識を壊すなどして,電車などの運行に危険を与えた人は,2年以上の有期懲役に処されます(刑法125条1項,往来危険)。ちなみに有期懲役は,最大で20年です(刑法12条1項)。
また,もし線路に石をおいたことで電車が脱線・横転し,それによって人を死なせてしまったら,死刑か無期懲役に処されます(刑法126条,往来危険による汽車転覆等)。刑法の中でも特に厳しい罪状です。決して,イタズラで済まされることではありません。
2.自分がふざけて「死ね」と言った相手が本当に自殺してしまっても,ただ言っただけなので罪には問われない。
→✕:人に自殺をすすめたり,手伝ったりして自殺をさせた人,または本人に頼まれたり,殺してもいいと同意を得たりして殺した人は,6ヶ月以上7年以下の懲役か禁錮に処されます(刑法202条,自殺関与及び同意殺人)。「死ね」という言葉は相手に死ぬことをすすめているわけなので,立派な自殺教唆(自殺をそそのかすこと)であり,犯罪です。
3.多くの人たちの前で「アホ」「ブス」などと誰かをバカにしても,特に罪には問われない。
→✕:多くの人の前で人を馬鹿にしたり悪口を言ったりした人は,拘留か科料に処されます(刑法231条,侮辱)。関連して,誰かの名誉を傷つけて評判を落とすようなことを,多くの人に知らせることは,事実かどうかに関わらず犯罪です(刑法230条1項,名誉毀損)。
この2つの罪は「親告罪」といって,被害を受けた本人が訴えなければ罪には問われません。やられた人は,弁護士などに相談しながら,勇気をもって自分で訴えましょう。
4.罪に問われても,保釈金を払えば許される。
→✕:保釈金は,「私は逃げません」という裁判所との約束です。そもそも逮捕・勾留は,被疑者が証拠隠滅をしたり,逃亡したりすることを防ぎ,犯罪捜査をしっかり行うためにするので,被疑者が証拠隠滅や逃亡をする恐れがないなら,捕まえておく必要がありません(池袋の事故で被疑者が逮捕されなかったのはそのためです)。
初級編の5問目で述べたとおり,逮捕は裁きではありませんよ〜。
もちろん,罪は裁判によって認定され,裁かれるので,罪自体が消えることはありません。きちんと償いましょう。
また,保釈金は裁判が終われば返ってきます。もちろん,保釈されて逃亡したら,没収になります(国外逃亡したどっかの車会社の社長さんがいましたね…)。
5.どんな法律であっても,違反すると罰せられる。
→✕:例えば民法は,違反したからといって,刑法のように「懲役〇年」などと裁かれるわけではありません。罰則は法律の条文ごとに決まっています。
6.例え赤ちゃんがしたことであっても,他人に損害を与えたら弁償しなければならない。
→✕:赤ちゃんは自分がした行為の責任を理解できないと考えられるので,損害を償う責任を負いません(民法712条,責任能力)。ただし,保護者は赤ちゃんが他人に損害を与えないように見張っている義務があるので,赤ちゃんの代わりに損害を償う義務を負います。十分に対策をしていたのに,それでも防げなかった場合は除きます(民法714条,監督責任)。
7.自分が相手から損害を与えられた場合,精神的な苦痛なども考えて,好きなだけ賠償金を請求することができる。
→✕:損害の金額は,主張の内容や,証拠の内容などをもとに,妥当な金額を裁判所が決定します(民事訴訟法248条)。もちろん,精神的な苦痛も損害の対象になります。しかし,好きなだけ賠償金を請求できるわけではありません。
8.みんなと違う考えを持っていてもいい。
→〇:思想と良心の自由を侵してはいけません(憲法19条,思想および良心の自由)。他人と違う考えを持っていても,それはあなたの自由であり,尊重される権利です。心の中では,何を思っていてもいいということです。
極論,「人殺しはしてもいい」と思っていても構いません。思うのは自由ですから。しかし,それを実際にやろうとすると,誰かの生命に損害を与えることになります。だから罰せられます(刑法199条,殺人)。あくまで,心のなかで思うことが自由というだけで,他人の権利を侵害してはいけません。
9.悪いことをした人は,みんなからいじめられてもしかたない。
→✕:誰であっても,法律の定める手続に基づかなければ,生命や自由を奪われたり,刑罰を科されたりはしません(憲法31条,法定の手続きの保障)。初級編の8問目でもやりましたね。
悪いことをしたからといって,いじめていいわけでは決してありません。裁きを下すのは裁判所であり,勝手に刑罰としていじめを行うのは,ある意味憲法違反です。
10.学校と先生たちは,保護者や地域の人たち,児童相談所などと協力しながら,いじめを防止したり,いじめが起こった時には速やかに対応する責任と義務がある。
→〇:問題文の通りです(いじめ防止対策推進法8条,学校及び学校の教職員の責務)。
いじめ防止対策推進法では,いじめの防止や対策について,小中学生のみなさんや,学校や保護者,国や県などの果たすべき責任と義務が定められています。
例えば,児童・生徒はいじめを行ってはいけません(いじめ防止対策推進法4条,場合によっては刑法適用も)。
いじめは,加害者側がいじめをしたと思っていなくても,「被害者側が身体的・精神的に苦痛を感じたら」いじめになります(いじめ防止対策推進法2条)。
いじめを見てみぬ振りをすることもいけません(いじめ防止対策推進法3条,最悪刑法62条の犯罪幇助)。
保護者は,子どもがいじめをしないように指導する努力義務があります(いじめ防止対策推進法9条)。
いじめは犯罪です。もし,この文章を読んでいる人で,今いじめに悩んでる人がいたら,勇気を持って相談してください。必ず誰かが助けになってくれるはずです。
それに,いじめ防止対策推進法に責務が定められているのですから,保護者,先生,地域の人,児童相談所の人など,力にならなかったら法律違反です(刑罰は課されませんが,責任は問われます)。
自分がいじめを受けている場合だけでなく,友人やクラスメートがいじめられている場合でも,勇気を持って大人に相談しましょう。もし周りの大人が信用できないなら,警察に駆け込んでもいい。解決の光を掴むのは,あなたの行動です。
上級編
1.二人で犯罪を犯したら,責任は半分になる。
→✕:一緒に犯罪を犯した人は,一人でやったときと同じだけの責任を負います(刑法60条,共同正犯)。また,犯罪をするよう指示をした人や(刑法61条1項,教唆),犯罪をするのを助けた人(刑法62条1項,幇助)も,罪に問われます。
2.盗まれた物をもらっても,それが盗まれた物だと知らず,また知ることができなかったのならば,罪には問われない。
→〇:盗まれた物だと知りながらタダで受け取ると,3年以下の懲役に処されます(刑法256条1項,盗品譲り受け等)。また,盗まれた物と知りながら,お金を出して買ったり,売ったり,運んだり,保管したりすると,10年以下の懲役と50万円以下の罰金の両方に処されます(刑法256条2項,タダで,単に受け取るよりも重い罪になってます!)。
もし,盗まれた物だと知らなかったのなら,罪には問われません。ただし,後から知ったのに継続して盗品を持っていた場合などは,罪に問われます。
3.14歳未満であれば,まだ子どもなので犯罪を犯しても謝れば許される。
→✕:14歳未満の人には刑罰が与えられません(刑法41条,責任年齢)が,犯した犯罪は捜査されます(少年法6条の2,警察官等の調査)し,場合によっては少年院に送られます(少年院24条3項,保護処分の決定)。また,保護者は賠償責任を負うことがあります(民法709,712,714条)。
さらに,何人もの人を殺害したなど,あまりにも罪が重い場合は,大人と同じ罰を受けることもあります(少年法40条,準拠法令)。過去には,19歳など成人に近い年齢で悲惨な事件を起こした場合,未成年でも死刑になった例もあります(永山則夫連続射殺事件など)。
4.成人のフリをして契約を行い,良くないことが起こっても,本当は未成年なのでいつでも契約を取り消すことができる。
→✕:未成年者が,自分は成年であると嘘をついて契約を行った場合は,その行為を取り消すことはできません(民法21条,制限行為能力者の詐術)。だって相手は,あなたが成人だと思って契約してるんですから,「嘘ついてたので契約解除して」なんていうのはひどい話ですよね。
5.お年玉は子どものもらったお金なので,親が預かって管理することは許されない。
→✕:親権を行う人(親など)は,子どもの財産を管理し,その財産に関係する契約を代わりに行います(民法824条,財産の管理および代表)。
もちろん,財産は子どものものなので,親が自分のために勝手に使うことは許されません。このように,子どもが何かしなければいけない債務(お金を支払う義務)が生まれる場合には,本人の同意を得る必要があります。
作・ねむねむ(理科担当)
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