街で壁画を実現するための流れ

最近、壁画に関するお問い合わせをいただくことが多くなってきたので、ニッチですが、まとめてみました。
(写真は、一般社団方法CLEAN&ARTにて落書き消し&制作した渋谷センター街の壁画です。)

ニューヨークのブルックリンやロンドンのショーディッチなど落書きされていた壁面をアーティストや企業広告の壁画にする事例は海外にはたくさんありますが、日本ではまだまだ事例が少ないので、その理由とともに、日本で壁画を実現するための流れを記載してみます。

①壁画プロジェクトのパターン

壁画をつくる際に、自治体主導(ないし共催)の公共性が高いプロジェクトと、民間主導による広告宣伝を兼ねた営利性のあるプロジェクトに分けられるかと思います。今回は後者に絞って記載します。

②壁画制作の法規制

壁画制作で絡んでくる法規制は、屋外広告物条例、景観条例、道路法の3つが影響してくることが多いです。
壁の所有者の許諾が取れていたとしても適切な行政手続きを経ないで実施することはできません。

●道路法
工事用仮囲いなどにアートを実施する場合、仮囲いが敷地外(道路)にはみ出して設置してあることが多いです。(それ自体は道路占用許可申請をしていれば、問題ないです。)
このとき、道路占用している仮囲いには広告設置できないという規制があるため、アートであっても何かしらの図像を描くことは禁止されています。
(一部規制緩和による例外地域あり)

●景観条例
自治体によって内容は異なりますが、建築物の景観に関する届出などが必要なことが多いです。
関連団体および外部アドバイザーとの事前協議や、色味や文字高などに細かく規制が定められている場合もあります。

●屋外広告物条例
アートでも広告でも申請が必要です。
面積制限(東京都の商業地域は100㎡以内)や壁面全体の30%に抑えるなどの総量規制があったりします。
海外のようにビルの外壁全体を壁画にするというのは日本ではハードルが高く、どうしても看板っぽく見えてしまう一因になっています。

③壁画制作時の注意点

行政手続きが完了すると、実際の作業に関する段取りをします。敷地内で完結できる場合は不要ですが、道路上で作業する場合は警察への道路使用許可申請が必要です。また、塗料やスプレーはけっこう臭気がありますので、近隣に飲食店がある場合などは特に近隣への事前説明や作業時間の配慮などが必要です。

まとめ

壁画制作は、行政手続きに1か月程度はかかるため、それまでにデザインが固まっている必要があることも考えるとかなりスケジュールに余裕を持って進めないと実現が難しいプロジェクトと言えます。
また、景観条例と屋外広告物条例によるデザインや大きさに関する制約もあり、自由に表現できるわけではないというのを念頭にペインター(壁画制作者)に依頼する必要があります。
とはいえ、壁画は街の景色として溶け込みつつ、その存在感を発揮してくれますので、調整は少し大変ですが、挑戦してみる価値は大きいと思います。

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