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【英語本】『上級英文解釈クイズ60』北村一真【ブックレビュー】

kindle版がGW期間の割引(2040円→1040円)になっていたのでこれを機会に購入し、さっそく全60問解いてみた。

母語であれ外国語であれ基本的に「読解力」というものは結局は多読で身につけるしかないとは思うけれども、外国語の場合、母語干渉や学校文法などの影響で癖になっている勝手読みがどうしてもあって、それを矯正する良い機会を提供してくれる作りとなっている。例えば、might as wellを「...したほうがよい」とだけ硬く日本語訳を暗記していると、They might as well have been strangers.「彼らはまるで赤の他人のようだった」のような用法のときに苦戦してしまうといった具合のものを。

クイズ形式なので、あえてここで問題にしてくるということはパッと見とは違って、、、といったメタ読みや各所にあるヒントで「正解」することはできても、なぜそうなるのかとか全文の正確な解釈といった部分まできちんと分かっていないことも多く、学びがたくさんあった。

個人的にまったく初耳の文法用語としては「統語的融合体」というのがあった。認知言語学で有名なGeroge Lakoffによる1974年の'Syntactic Amalgams'という論文に紹介されているようだ。

https://escholarship.org/content/qt2m76j5j8/qt2m76j5j8.pdf?t=obhue3

↑古い論文だからか、端も見切れているし異様に読みづらいけれど(笑)、John invited you'll never guess how many people to his party.「ジョンは、想像もつかないほど多くの人をパーティに招待した」のように、太字の疑問詞節の前にさらに節を加えて一つのカタマリを作るような形のことを言うとのこと。

これはAIも訳しにくいタイプの文のようで、手元のChatGPT3.5に聞いてみると、

といった風に間接疑問文ではなく感嘆文のような解釈ミスをしていて興味深い。さらにレイコフが同論文で作っているネタのような次の例文を訳してもらうと、

と完全に精神崩壊をおこしている(笑)

「統語的融合体」とAI翻訳の相性は掘り下げてみると興味深いテーマとなるかもしれない🤔

クイズの出典は18-19世紀の文章から近年のベストセラー、またテリーザ・メイ元英首相や故エリザベス女王のスピーチといった話し言葉からも採られている。

個人的には著者の北村先生が『リコカツ』を観ておられたいうのがちょっと意外な感じがして可笑しかったりもした。That others may live!


※追記
著者の北村一真先生からX(twitter)でこちらのnoteに言及いただきました!


ご夫妻で『リコカツ』鑑賞というのはちょっとシュールというか一層意外な感じもしますが(笑)、そこから著書のアイデアが出てきていたというのは貴重なエピソードですね!

調べてみたところ、これはジョージ・バークリーの『ハイラスとフィロナスとの三つの対話』"Three Dialogues between Hylas and Philonous"(1713)という18世紀の対話形式の哲学書からの一節のようです。このような古典の実例が瞬時に出てくるというのは凄いですね。。

AI翻訳との相性問題も含めて「統語的融合体」というのは興味深い言語事象なので、今後も見かけたら実例の収集・分析などしてみたいと思っています!

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