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バレット、ブレットorブリット?

遅ればせながらNetflixで伊坂幸太郎原作、ブラッド・ピット主演の映画『ブレット・トレイン』を観ていたのですが、そういえば「弾丸、銃弾」を意味する英単語bulletのカタカナ表記って「ブレット」と「バレット」がありますよね。あと、より本来の英語の発音に寄せたものとしては「ブリット」もあるか。

個人的には塚本晋也監督の『バレット・バレエ』が思い出されます。BLANKEY JET CITYの中村達也とか出ている。1999年かー、懐かしい。。これはあきらかにバレバレで日本語での頭韻を狙ってつけられたタイトルですよね。

これらの語は言葉の響きやその喚起するイメージなどからある種の映画のタイトルによく使われている語なので、ふと思いつきでallcinemaという映画のデータベースサイトで検索にかけて比べてみました。

まず、「バレット」について、製作年の新しい順に並べます。英題のあるものはそれも付けています。

『グリーン・バレット』(2022)
『バレット・シティ 狂弾の絆』"Punish Evil"(2022)
『リーサル・バレット』"Panama"(2022)
『エクストリーム・バレット 極限死闘』(2020)
『デート・ア・バレット デッド・オア・バレット』(2020)
『デート・ア・バレット ナイトメア・オア・クイーン』(2020)
『ラスト・バレット』"Cold Blood Legacy"(2019)
『タイガー・バレット』"Baaghi 2"(2018)
『デス・バレット』"Let the corpses tan"(2017)
『ホワイト・バレット』"Three"(2016)
『コールド・バレット 凍てついた七月』"Cold in July"(2014)
『バレット・オブ・ラヴ』"The Necessary Death of Charlie Countryman"(2013)
『バレット』"Bullet to the Head"(2012)
『バレット&チェイス』"The Legattee Brigada: Naslednik"(2012)
『バレット・イン・ザ・フェイス』"Bullet in the Face"(2012)
『バレット・ヒート 消えた銃弾』"The Bullet Vanishes"(2012)
『THE BULLET ザ・バレット』"The Kate Logan Affair"(2010)
『バレット・ライン』"Across the Line: The Exoudus of Charlie Wright"(2010)
『ビットバレット』(2008)
『フォーク&バレット 〜サヨウナラ戦争〜 / Twilight File V』(2008)
『バレットレイン 美しき暗殺者』"Final Engagement"(2007)
『バレット・ブレイク』"Bullets, Blood & A Fistful of Cash"(2006)
『ワイルド・バレット』"Running Scared"(2006)
『バレット・フィスト』(2005)
『バレットダウン』"Moscow Heat"(2004)
『34バレット』"Guilty by Association"(2003)
『バレット・ブレイク 死のカード』"Bite Till Die: Card or Death"(2003)
『バレット・ブレイク 謎のボックス』"Bite Till Die: Killing Box"(2003)
『バレット・モンク』"Bulletproof Monk"(2003)
『ガンズ・アンド・バレット』"Shooters"(2002)
『処刑人 アナザーバレット』"Whacked"(2002)
『バレット・オブ・ラブ』"Bullets of Love"(2001)
『バレット・トレイン』"Tunnel"(2000)

↑なんと!『バレット・トレイン』なる映画があったんですね!!もっとも英題は"Tunnel"「トンネル」ですが(笑)

『バレット・バレエ』(1999)
『BULLET バレット』"The Real Thing"(1997)
『魔獣学園/ラスト・シルバー・バレット』"Lone Wolf"(1988)
『リアル・バレット/真実の銃弾』"The Ambush Murders Real Bullet"(1981)


以上、「バレット」入りの映画は37本。
何の映画かよくわからん口にしただけで笑ってしまうタイトルやらそもそも英題にbulletの入っていないものがやたら多いですが(笑)昔のフィルムノワールの「暗黒街のナンタラ」みたいなジャンル映画にはよくあることではあります。あれも英題と全然違うものばかりだったし。

では、続いて「ブレット」も同様に列挙していきます。

『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』"Bullet Train Down"(2022)

↑いや、似たような時期にこんな作品があったんか! しかも英題"Bullet Train Down"。Amazonレビュー⭐️1.0。。

『ブレット・トレイン』"Bullet Train"(2022)
『ロストブレット2』"Lost Bullet2: Back for More Balle Perdue2(2022)
『ロストブレット -窮地のカーチェイス-』"Balle Perdue Lost Bullet"(2020)
『ブラック・ブレット BLACK BULLET』"Black Bullet"(2014)
『ライディング・ザ・ブレット』"Riding the Bullet"(2004)
『レイジング・ブレット 復讐の銃弾』"Eye for an Eye"(1996)
『ハート・ブレット/仁義なき銃弾』"Bullet"(1995)

以上、「ブレット」入りの映画は8本。
「バレット」の37本に比べるとかなり少ないが、1990年代〜2020年代の現在までの同じ時期にある種のB級映画に好んで使われている傾向は見られる。こちらは『レイジング・ブレット』以外は英題にもbulletが入っているのが特徴。

最後に、「ブリット」も挙げておこう。

『バイオレンス・ブリット』"Straightheads"(2007)
『ラヴ&ブリット』"Love and a Bullet"(2002)
『ザ・ブリット』"When the Bullet Hits the Bone"(1995)
『ワイルド・ブリット』"Bullet in the Head"(1990)
『キルライン/復讐の弾丸(ブリット)』"Kill Line"(1989)

※『大脱走』でお馴染みスティーブ・マックイーン主演の『ブリット』という1968年の有名な映画があるが、あれはBullittで警部補の名前から来ている。

以上、5本と数は多くはないが、特筆すべきは1989年の段階ですでに英語の本来の発音に最も近い「ブリット」表記もあったということだ。にも関わらずその後は総じて「バレット」が好んで使われるようになっていったというのは不思議ではある。

【とりあえずのまとめ】
1980-90頃にはすでに「バレット」「ブレット」「ブリット」3つの表記が出揃っていたが、「バレット」が銃弾映画のジャンル表現としてもっとも普及した。映画のタイトルではないが『マトリックス』シリーズのいわゆる'bullet time'が「バレット・タイム」と表記されたインパクトも大きかっただろう。

そういった傾向を反映してか、映画以外でも手帳術の'Bullet journal'は「バレット・ジャーナル」などと表記されている。

しかし英語本来の発音に近い「ブレット」や「ブリット」も消えてはおらず、冒頭の『ブレット・トレイン』なような近年の映画だけでなくむしろそちらが好まれる文脈もありそうだ。

ふとした思いつきから手短かに投稿するつもりだったけど、何の役に立つかは不明ながらついつい長くなってしまった。。それでも個人的にはいろいろ興味深かったので今後もこれらの言葉の実態調査や変遷を追っていきたい。

※追記
Filmarksのコメント欄でこの記事に関連して教えていただいたことを追記します!

確かにルフィの技は「ゴムゴムの銃弾(ブレット)」で「ブレット」表記ですね!

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