幼年期の終わり   アーサー・C・クラーク (光文社古典新訳文庫)

 何年振りかの再読で、改めて名作を堪能した。今回は、名訳と言われる福島さんのハヤカワSFではなく、光文社版で読む。解説もたっぷりだし年譜もある。お買い得。

 ある日、地球は巨大な宇宙船の来訪を受ける。未知の宇宙船は何事もなく、大都市の上空にとどまり人類との交渉役に国連の総長を選んだ。彼ら「オーバーロード」は何をするため、この地球に来たのか、何を人類に求めているか・・・

 クラークの名作SF古典と言っても良いだろう。文学に課せられた永遠の課題の一つ、「人は何処から来て、何処に行くのか」の一つの提案系ではある。読むたびに感想は変化し、蠢いていく。若いというか、幼い読者だった自分から変化秘、歳と経験を踏まえた今では、若いときには感じなかった点で、クラークが主張する事柄が染み入るように解るようになった気がする。人類の行く末と考えるか、はたまた違う観点からとらえるか、全く違う感想が持ち得る。

 同じ様な切り口の話はあるが、ここまで昇華された思想的・未来的結末の話は二度と出てこないだろう。結果的にクラークは読者に問いかけてくる。「人は何処から来て、何処に行くのか」と。

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 やっぱり、歳を経て受ける感情や印象は変化する。特にSFの名作は、その傾向が顕著だと思う。


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