星からおちた小さな人

コロボックル物語の3冊目。起承転結の文字通り「転」の部分である。

 コロボックルのサクランボ技師はミツバチくんと一緒に、羽ばたき式飛行機の実験飛行を試みる。その実験飛行最中にとんでもない事故が発生して・・・。

 「星からおちた小さな人」は、コロボックル物語でもっともスピーディで、かつ、ミステリーな冒険譚である。行方の消えた仲間をもとめるコロボックルに疾走するマメイヌの姿が目に浮かぶ。とにかく、話はどんどん加速度的に進み、人間に捕まったコロボックルと捕まえた人間、そして仲間のコロボックルを救おうとするコロボックル、せいかさん達の活躍を描く。そしてあっという解決方法で、物語は急展開を迎える。また、せいたかさんや、ママ先生、フエフキや風の子をはじめとする、前二冊の主人公に再会できるのもうれしい。

 コロボックル物語としては異色の作品である三作目の「星からおちた小さな人」である。他の作品には、ちょっとのんびりした部分もなくはないのだが、「星からおちた・・・」は、ジェットコースターのように駆け下りる作品である。佐藤さんの「ちょっとおしゃべり風」な、語り口も面白い。ワクワクドキドキの連続で、あっという間に読み終えた初読の時が、今によみがえる。

 後の2つの作品への筋道をつけたこの作品。コロボックルにとっても、コロボックル物語にとっても重要な「ミツバチ事件」の全貌を語る一冊、秋の夜長にもう一度読んでみてはいかがでしょうか?

 なお、9月15日現在、息子と娘に読み聞かせ中の一冊でした。

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今から二十年近い前の記事である。コロボックル物語風に言えば「二十年以上前だから昔と言ってもいいかもしれない」という感じになるだろう。「だれも知らない小さな国」が十数年、「豆つぶほどの小さな犬」が数か月の期間を語ることにくらべると、本作はわずか数日。しかも、コロボックルが遭難するという事件を追う。そして、その解決策の意外性はミステリーかと思うほどである。再読には相応しい。



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