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”核心突き過ぎて”主な意見に一つも採用されなかった総務省「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関するとりまとめ(案)」に対するワイズ・メディアのパブコメと検討会の返答を悔しいので自分なりにまとめてみた

独立して6年。総務省の放送関係の検討会や研究会には技術系のものを除いて大体パブコメを送り続けて参りました。これまで複数主な意見に採用されたり、意見を取り入れてもらい修文してもらったりしたのですが、今回「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関するとりまとめ(案)」に対する弊社パブコメは、ひとつも主な意見に採用されませんでした。

悔しい!


パブコメをある種のマーケティングと考えると一敗地に塗れた感は拭えません。しかも110件の意見のうち、67件が主な意見として取り上げられたのに、弊社意見が全く顧みられなかたっという惨敗ぶりです。ただ読んでいただければ分かる通り、検討会より何歩も先を行った(と自己評価している)内容ですので、事務局もさぞかし扱いに困ったのではと思います。とはいえこのままでは埋もれてしまうので、弊社意見(5点)と検討会の見解。それに対する塚本の感想を以下にまとめて列記します。

ちなみに大前提として、今回の検討会の方向性は賛同しております。ハードソフト分離も、IPユニキャスト活用も、マス排緩和も何年も前から塚本が折に触れ主張してきた事項ですので、「ようやく時代が追いついてきた」という自画自賛をしておりました。しかし当事者じゃないんだから「賛同します」なんて意見を言っても意味ないじゃんね。と考え、足らざるべきところを指摘したつもりです。

「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(案)」に関してワイズ・メディアが提出した意見とそれに対する検討会の考え方とさらにそれに対する塚本の感想

⑴ 第2章 デジタル時代における意義・役割
【ワイズ・メディア意見】
「情報空間全体におけるインフォーメーション・ヘルスの確保の点で、むしろこのデジタル時代においてこそ、その役割に対する期待が増していると言える」という文言について 「その役割に対する一定の期待が現状でも維持されている」とすべきだと思います。 新聞通信調査会の「メディアに関する世論調査」によれば「NHKテレビや民放テレビなどの信頼度は長期的に見れば下落傾向にある」(2021年11月)とあり、その他各種調査でも放送の信頼度が向上したという結果はなく、「期待が増している」という文言は業界の手前味噌と受け取られかねません。抑制的な表現に止めるべきだと考えます。 
【本検討会の考え方】
情報空間が拡大し、インターネット空間ではフェイクニュース等の問題が顕在化しています。そのような中、放送は、取材や編集に裏打ちされた信頼性の高い情報発信等を行っており、その果たす役割への期待は大きくなっていると言えます。
【考え方に対する塚本の感想】
本当にそうなんですか?NHK「河瀬直美が見つめた東京五輪」では裏付けのない誤った字幕をつけ、数年前、MXTV「ニュース女子」で米軍基地反対行動に日当をもらっていると根拠なく伝え、自民党からは「BPOは機能しているのか」とか言われ続けるなど、放送の信頼性はそんな盤石ではないと思うのですが。他の意見はみんな放送局なんで「ご期待に応えます」みたいのしかないんだけど、危機感持っている局はないのでしょうか??

⑵「この将来像の実現時期は、第3章で述べる放送ネットワークインフラの更新時期を踏まえ、2030年頃が想定される」という文言について 
【ワイズ・メディア意見】
「…2030年頃が想定されるものの、急変するインターネット環境に合わせ、可能な箇所からすぐにでも着手されることが考えられる」とすべきです。 
スマートフォンが世界に登場してわずか15年。この間のメディア環境の変化を省みると、8年後のマスター更新などテレビ局側の都合に社会は待ってくれず、それまでに経営が立ち行かなくなる可能性があり、できるところから次々と着手する前提で施策を考えるべきだと思います。
【本検討会の考え方】
本案は、放送事業者等におけるインフラ・設備の更新時期を踏まえて、実現時期を設定しておりますが、各社の経営判断において、着手時期を早め、早期に取り組むことを否定するものではありません。
【考え方に対する塚本の感想】
テレビ西日本さんも同様のご意見でした。当たり前の質問とお答えでした。

⑶ 第3章2. 小規模中継局等のブロードバンド等による代替について
【ワイズ・メディア意見】
小規模中継局等の前提を外し、「ブロードバンドによる拡幅」と言い換えるべきだと思います。 
経済合理性を前提とした代替可能性だけを探るのではなく、都市部等大規模中継局による送信が可能な地域においてもIPユニキャスト方式による伝送を併せて可能にすることで、テレビを持たない世帯や個人にも放送コンテンツを届けることが可能となります。 
【本検討会の考え方】
ブロードバンド等代替については、放送ネットワークインフラに係るコスト負担を軽減し、コンテンツ制作に注力できる環境を整備するために検討したものであり、インフラにかかるコストが大きい比較的受信世帯数の少ない小規模中継局等について検討を行ったものです。
ブロードバンド等代替の拡幅に関する御意見については、今後の放送行政に対する御意見として承ります。
【考え方に対する塚本の感想】
総務省の本音も同じなはずなんですが、まだ禁句なんでしょうか。もうちょっと踏み込んで回答いただけたらと思うと、ちょっと残念です。

⑷ 第4章 放送コンテンツのインターネット配信の在り方について
【ワイズ・メディア意見】
「放送コンテンツのインターネット配信の在り方」について「同時配信」は「同時再送信」と言い換えるべきです。 
奥律哉構成員による「何も足さない。何も引かない」という例えの通り、放送と同一地域における同一内容の“配信”は放送法上も著作権上も“放送”と定義し、IPマルチキャスト放送における同時再送信と同様の規律と権利処理により運営されるべきだと思います。 
また飯塚構成員の報告には、欧州において放送と同一のコンテンツ規律であればRFであれIPユニキャストであれ同じ扱いとされるとあり、日本でもVODとは別扱いとした上で、制度設計すべきです。
【本検討会の考え方】
放送の同時配信における放送法、著作権法上の取扱いについての御意見に関しては、今後の放送行政に対する御意見として承ります。
【考え方に対する塚本の感想】
これは結構妙案だと思うんだけどなあ。2006年放送法及び著作権法改正でIPマルチキャスト(ひかりTV)の扱いがケーブルテレビと同等になったのをIPユニキャストに広げるだけで全て解決するんだけど、その割に塩対応だなあ。民放も自分達でやらなくていいんだし、ケーブルと同じ様にPFから金取れればそれにこしたことないのにね。

⑸ 放送に準じた公共的な取組を行う放送同時配信を後押しする方策について
【ワイズ・メディア意見】
「その際、当該配信サービスは放送の補完であることに留意し…」の文言について「その際、当該配信サービスは放送と同等であることに留意し…」とすべきだと考えます。 
趣旨に異存はありませんが、そもそもハード・ソフト一致の提供を前提としているように読み取れます。ハード・ソフト分離の運用も念頭においた当該取りまとめ(案)においては、ソフト免許はコンテンツ規律を前提としたものにならざるを得ず、放送であろうと配信であろうと同等の内容を求めるべきです。その上でインターネットの特性を考慮した許容はあって然るべきだと考えます。
【本検討会の考え方】
放送に準じた公共的な取組を行う放送同時配信等については、放送事業者において個社の判断のもと行ってきたインターネット配信について、災害時、見逃し時、チューナーレステレビ利用時等における従来の放送の「補完」として、可能な範囲で有効に活用するものであります。
本取組における検討はコンテンツ規律を行うものではなく、配信における一定の品質や機能についての検討を行うものです。本案においては、検討に当たって、コストや普及の実現性等を考慮し、公共性を求め過ぎることにより、サービスの普及自体に支障が生じないことに留意する必要があるという趣旨で、放送の「補完」であることに留意する必要がある旨を記載したものです。
【考え方に対する塚本の感想】
この検討会は伝送路の検討をしているので、放送に課せられた規律の検討をしているのではないということでしょうか。一方で「放送の役割に期待」って伝送路じゃなくて信頼性って言ってますよね。だったら放送と同等の規律を配信(僕は再送信と言いますが)にも求めるべきではないでしょうか?大切なことはテレビを持たない人たちにも放送を観てもらうことなのですから。
 

弊社パブコメに対する検討会の回答全般について


よく読んでみると、主な意見にはひとつも採用されなかったけど、ひとつひとつに丁寧に返答してくれていました。今回の検討会ではまだ時代が早かったかなあと思いつつ、NTTなんかは「IOWN構想」とか打ち出しているし、5年後にはIPユニキャスト再送信も当たり前の議論になると、多分検討会の有識者も事務局も同じ思いだと信じて、これからも節目節目で発信していきたいと思っております。
駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。



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