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三歳頃、折り紙工作にはまっていた。色とりどりの紙の中から、これだと思う色を選び、鋏で切って、折って、糊で貼り、働く車を作るのが好きだった。出来上がったいくつものカラフルな車で、ひとり遊びに興じるのが、保育園に行かない日のぼくの家での過ごし方だった。

ある時、母がいつもと違う紙を買ってきて、「これからは折り紙の代わりにこっちの紙を使ってね」と渡してきた。たしか折り紙よりも厚みがあった。作品が頑丈になるから壊れにくくなり、何度も紙を買い直さなくても済むという母の算段があったのではないかと思う。

ところが、それを機に創作意欲は永遠に失われてしまい、その後一切の作品は作られなかった。それどころか既存の作品も全て葬ってしまった。幼い芸術家がこだわった、折り紙の薄さ、繊細さは、一番身近な鑑賞者には理解されていなかった。

折り紙工作の成果は、数年後に小学校の算数の授業で、異様に展開図に強いという形で花開く。あの時、若い芽が摘まれなかったら、どんな風に育ったのだろうかと時々考える。

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