21.バリューチェーン分析
21.バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、自社の事業活動を価値の連鎖として分析するマーケティング手法です。以下に詳しく説明します。
バリューチェーン（Value Chain） とは、原材料を調達し、商品やサービスが顧客に届くまでの様々な企業の活動の連鎖を「物の連鎖」「価値の連鎖」として考えたものです
主活動と支援活動に分け、どの工程で付加価値を出しているのかを分析します。
★主活動
バリューチェーン分析の主活動は、5つの活動で構成されています。
①購買物流：原材料の調達のための活動
②製造：原材料を最終製品に製造するための活動
③出荷物流：最終製品を顧客に出荷するまでの活動
④マーケティング・販売：顧客目線で購買意欲を引き立てる戦略など
⑤サービス：より製品価値を高めるなどの質向上へ向けた活動
★支援活動：主活動をするために必要な以下の4つの活動を指します。
①設備、消耗品などの調達活動
②通信技術、会計ソフトなどの技術開発
③人材採用をし、育てる人的支援管理
④経営企画、法務、経理など運営に必要な企業インフラ
☆バリューチェーン分析の重要性とメリット:
•企業の強みと弱みを把握できる。
•競合の戦略を予測できる。
•効果的なリソースの分配によるコスト削減が可能。
⚫︎バリューチェーン分析のステップ:
①バリューチェーン内容の把握：自社の主活動・支援活動を詳細に理解する。
②各コスト把握：各工程のコストを把握し、無駄な部分を特定する。
③強み＆弱みの分析：自社と競合の強みと弱みを明確にする。④VRIO分析（ヴェリオ分析）：経営資源の競争優位性を分析する。
バリューチェーン分析は、自社の競争力を高めるために重要なツールであり、戦略的な意思決定に役立ちます。是非、参考にしてください。
バリューチェーン分析を同業他社と比較する際のポイントを以下にまとめてみました。
バリューチェーン分析と同業他社の比較ポイント
①主活動の比較:
•同業他社と自社の主活動を比較します。主活動は、直接的に商品やサービスに関わる工程であり、どの工程でどれだけの価値が生まれているかを評価します。同業他社との違いを特定しましょう。
②コスト構造の比較:
•同業他社と自社のコスト構造を比較します。どの工程でどれだけのコストがかかっているかを分析し、無駄なコストを特定します。同業他社との差異を把握し、効率的なコスト管理を目指しましょう。
③強みと弱みの比較:
•同業他社と自社の強みと弱みを比較します。どの工程で自社が優れているか、どの工程で改善の余地があるかを評価します。競合との差別化ポイントを明確にしましょう。
④VRIO分析の実施:
•同業他社と自社の経営資源をVRIO分析で評価します。Value (価値があるか)、
Rarity (希少性があるか)、Inimitability (競合が同じ資源を獲得できるか)、Organization (組織内で活用できるか)
の観点から自社の競争優位性を検討しましょう。
⑤付加価値の比較:
•同業他社と自社の付加価値を比較します。顧客に提供する付加価値がどの工程で生まれているかを評価し、差別化要因を明確にします。
同業他社との比較を通じて、自社のバリューチェーンを最適化し、競争優位性を高めるための施策を検討しましょう。
例 1
サイゼリヤのバリューチェーン分析を以下にまとめてみました。
サイゼリヤのバリューチェーン分析
①提供する価値
•サイゼリヤは、低価格で美味しい料理を提供するファミリーレストランチェーンです。提供したい抽象的な価値は、「手軽に美味しい食事を楽しむこと」です。
②コスト・リーダーシップ戦略
•サイゼリヤは、コスト・リーダーシップ戦略を実践しています。この戦略は、他社よりも低いコストを実現し、広い顧客層をターゲットにすることを目指します。
•サイゼリヤの低価格路線を支えているのが、徹底した効率化とシステム化です。自社農場を保有し、収穫直後の野菜を冷蔵庫で保管し、輸送するコールドチェーンシステムを構築しています。
③バリューチェーンの長さ
•サイゼリヤは「製造直販業」を目指しています。これは、自社で商品開発から食材の生産、加工、配送まで一貫して行う形態です。
•その結果、サイゼリヤのバリューチェーンは長く、在庫回転期間が他社よりも長いです。
•在庫回転期間が長い＝悪ではなく、より高い付加価値を提供していると好意的に解釈できます。
④地域別利益と海外展開
•サイゼリヤは海外展開に注力しており、アジアでの利益が増加しています。海外展開による成長を実現しています。
サイゼリヤは、独自のビジネスモデルと戦略により、低価格で美味しい食事を提供し、広い顧客層に支持されています。
例2
星乃珈琲店のバリューチェーン分析を以下にまとめてみました。
星乃珈琲店のバリューチェーン分析
①提供する価値
星乃珈琲店は、日本国内外で展開されているカフェチェーンであり、コーヒーを中心に軽食やスイーツを提供しています。
星乃珈琲店が提供したい抽象的な価値は、「くつろぎのひととき」です。
お客様に居心地の良い空間と美味しいコーヒーを提供することで、顧客のリラックスや癒しの時間をサポートしています,
②市場と競合
•星乃珈琲店は、カフェチェーン業界に属しています。
カフェチェーンの市場は、日本国内外で急速に成長しており、スタバやドトールなどの競合他社が存在します。
特に日本国内では、カフェ文化が浸透しており、多くのカフェチェーンが展開されています。
•星乃珈琲店の競合は、スタバ、ドトール、タリーズなどのカフェチェーンです。
これらの競合は「くつろぎのひととき」を提供するサービス全てであり、ブランドの差別化が求められます。
③星乃珈琲店自身
•星乃珈琲店は、日本国内外で多くの店舗を展開しており、地域ごとにカスタマイズされたメニューやサービスを提供しています。
また、店内の雰囲気やインテリアにも工夫が凝らされており、お客様にくつろぎの空間を提供しています。
星乃珈琲店は、自社の強みを活かして、顧客の期待に応える戦略を展開しています
④売上構造
•星乃珈琲店は、イートインを中心とした店舗ビジネスであり、店舗数の増加戦略が重要です。
お客様の数は座席数と回転率で決まりますが、星乃珈琲店は「くつろぎのひととき」を提供するため、回転率を上げる施策を実施することはジレンマがあります。
客単価は商品単価×購入点数で決まり、セットメニューの品ぞろえが大きく影響します
⑤さらなる成長
•星乃珈琲店は、海外展開を含めてさらなる成長を目指しています。市場の変化に対応し、新たな顧客層を取り込むために、メニューやサービスの改善、店舗数の拡大戦略などが考えられます。
星乃珈琲店は、独自のビジネスモデルと戦略により、多くのお客様に「くつろぎのひととき」を提供しています。
例3
コメダ珈琲店のバリューチェーン分析を行ってみましょう。
コメダ珈琲のバリューチェーン分析
①提供する価値
コメダ珈琲は、1968年に名古屋で創業され、現在も愛され続けている喫茶店です。
コメダ珈琲が提供したい抽象的な価値は、「くつろぎ」です。
決算資料から見ると、コメダ珈琲は日々の企業努力を重ねて、私たちに「くつろぎ」を提供しています。
②市場と競合
•コメダ珈琲は一般的に喫茶店業界に属しています。
•喫茶店の市場は、平成30年外食産業市場規模推計によると1兆6000億円ですが、直近の喫茶店を取り巻く市場は大きく変化しています。
•例えば、コンビニカフェや吉野家・マツキヨの一部店舗にもコーヒーマシンが導入されており、気軽に「コーヒー」を飲みたい人は喫茶店に行く必要がなくなりつつあります。
•コメダの競合は、喫茶店（スタバ、ドトールなど）、コーヒーマシンの導入店舗（コンビニ、吉野家、マツキヨなど）、ファミレスなどです。
•これらの競合は「くつろぎ」を提供するサービス全てであり、境界線が広すぎるため、一旦これらを競合と考えます。
③コメダ自身
•コメダ珈琲は、厳しい市場と競合環境にありながら、売上を伸ばし続けています。
その戦略として、地域を限定して出店するドミナント戦略を採用しており、東京でも50店舗以上を展開しています。
•店舗展開は住宅地に重点を置いており、日常的に使ってもらうことを意識しています。また、コメダのブランドを消費するよりも、居心地の良さに対して価値を感じているお客さんが多いです。
④売上構造
•コメダはイートインを中心とした店舗ビジネスであり、店舗数の増加戦略が重要です。
お客さんの数は座席数と回転率で決まりますが、コメダは「くつろぎ」を提供するため、回転率を上げる施策を実施することはジレンマがあります。
客単価は商品単価×購入点数で決まり、セットメニューの品ぞろえが大きく影響します。
⑤さらなる成長
•コメダ珈琲をさらに伸ばすためには、座席を細かく分ける施策やセットメニューの改善、店舗数の拡大戦略などが考えられます。
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