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📘人間になった物語・前編

岩になった後は、ちゃんと人間になった。

ー1回目は縄文時代の女性🧊

洞窟に旦那とその両親と四人で住んでいたんだ。洞窟の奥に湖の氷を持ってきて、壁に敷き詰めて、冷蔵倉庫みたいなのを作ったんだ。そこに取ってきた獲物を解体した後は、保存をしてたんだよ❗️
でも、ちょっと家族で揉め事があって、旦那が痛く傷ついたんだ。それで旦那は両親に怒っちゃって、家である洞窟から追い出しちゃったんだ。でも、その後僕たちはラブラブだったんだよ❗️反省した両親は洞窟に戻ってきて謝ったんだ。やっぱりそんな簡単に住処は見つからなかったみたい。旦那も両親を許してまた一緒に皆んなで暮らすようになった。
そして、僕は女性だから、身籠ってたんだ❗️でも、寒さや栄養不足やらで、子供を産みながら死んじゃった。

ー2回目は貴族のお嬢様👸👗

悠々自適、ヨーロッパ 地方の洋城に住んでる位の高い一族のお姫様だったんだよ❗️
可愛いドレスを着て、美味しいお菓子を食べて、広いお城の中を弟と一緒に駆け回って、ママはいつもニコニコして僕を見てたんだ。
怒ったりしないし、いつも優しかった。代わりに怒っていたのは30代くらいのすっぴんでいつも不機嫌なふくよかなメイド。僕はそいつが大嫌いだった。ママに言いつけたら少しは大人しくなったけど。8歳くらいのある時、僕は体を壊して寝たきりになってしまったんだ。
赤い天蓋ベッドにずっと横たわって、朦朧としながら、ママを呼んでた。始めはきてくれたんだけど、次第に全く来なくなって、看病してくれたのはその嫌いなメイド。嫌そうにタオルを差し替えたり、薬を飲ませたり。その間もずっとママ、ママって呼んでた。
けれど、とうとうママは来なかった。死ぬ間際、ツンケンして愛想が悪かったメイドも愛着が沸いたのか、最期には優しいけれど、悲しい顔をして最期まで手を握って、頭を撫でてくれたんだ。ママにしてほしかったことを。その時初めてメイドの優しさを知ったんだ。本気で接してくれたこと。最後の最後に心が通じ合ってポカッとしたんだ。

ー3回目は出稼ぎの旅人🚂

これも多分西洋にいた頃。
田舎町で生まれた男性だった。お家は貧乏で、でも子沢山。父親の稼ぎだけじゃやっていけなかったんだ。だから僕は、大人になって街に出稼ぎに出たんだ。ちょうど蒸気機関車ができた時くらい。街へ出て、働いて、実家に仕送りをしないといけないと、その蒸気機関車に乗って故郷を離れたんだ。
苦労ばっかりしたよ。肉体労働から、こき使われ、でも全く裕福にならない。唯一の糧は母からの手紙だったんだ。母もとても心配してたし、僕に感謝をしてくれた。だから頑張れたんだよ。
でもある時、働き者で誠実だった僕を見て、裕福な紳士が僕を引き取ってくれたんだ。若い頃の紳士にそっくりだって言ってね。社会での稼ぎ方や、嗜み、色んなことを教えてくれた。僕はその紳士から信頼されて、仕事も任されたんだ。お陰でたんまりと仕送りをすることも出来て、僕の体と心も余裕を持つことが出来たんだ。ある時、女性にも恋をした。お金を稼ぐことだけに必死になっていたし、そんな縁もなかったから、初めて恋した女性だった。結婚とまではいかなかったけど、彼女も僕を愛してくれた。一緒にいられる時はお互いに幸せだったよ✨母も父も亡くなって、恩人の紳士も亡くなって、僕も歳をとった。気がつけば高齢になってた。僕を面倒見てくれたのは家族のように、慕って、信頼して、ずっとついてきてくれた部下だった。僕はベッドに横たわりながら人生を反芻してたんだ。若い頃は苦労ばかりだったけど、人に恵まれてお金にも苦労しなくなって、愛する人ともいれた。
案外幸せな人生だったな。そう思いながら目を瞑って息を引き取ったんだ。

ー4回目は猟銃使い🐻

これはどこの国だったかな?
長い銃を持って、毎回動物を仕留めてたんだ。猪や熊、鹿。
生きていくために、狩りをしてた。
動物を解体することも何も思わなかった。
毎朝歯を磨くことくらいに、どうってことはなかった。
でも、ここら辺は僕の暗黒時代。
あんまり楽しい話じゃない。
猟銃での人生でか‥はたまたこの感覚を持ったまま生まれ変わった次の人生か‥わからないけれど‥
命を粗末にすることに対して、何も感じなかったんだ。
だから、死んだ時地獄へ行った。
両腕に縄を巻かれて、逮捕されたみたいな感じ。他にも魂は並んでた。
地獄の入り口付近で、軽く取り調べを受けるんだ。
その時、岩になった時のガイドの子天使が隣に来て、一緒に並んでた。
「大丈夫だよ。僕が何とかしてあげるから」
子天使は、地獄の番人に事情を説明してた。僕はその時も無感情だったんだ。怖さもないし、何も感じない。どうなってもいいとすらも思わない。岩になった時より感情がなかったよ。そして子天使の説明を聞いたら、すぐさま番人は言ったんだ。
「あ、何だ。君、天使なの?じゃあ、免除ね」
そう言って、僕はまた雲の上に戻ったんだ。

ー5回目、牛柄の猫に続く‥‥

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