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📘牛柄の猫

目が覚めたら猫になっていた。
「どうして猫なんだよ💢」
俺は憤った。

せっかく生まれ変わったというのに、
すぐ人間に殺されておしまいだろ。

前は人間だったのに、動物に格下げとは何だ💢
俺は憤っていた。

石畳の家。

20代後半くらいの女と、その母親がいる。

殺される‼️

そんなことを思っていたが、若い女は俺をみて、ニコニコと笑っている。
殺気を感じないのだ。

俺が何かに反応すると、一々喜ぶ。

わーわー喚いてたら、女は俺を抱き上げて膝に乗せた。
温かい手で頭や全身を撫でてくる。
それでなのか、緊張がほぐれてきた。
喉が鳴った。

飯や飲み物も毎回欠かさずにくれる。
飢えからくる、不安や心配はなくなった。
気持ちや怒りが安定した。

ガミガミ言うことはなくなった。

ある時、もう一匹の猫がこちらを見ていた。
「お前は誰だ❗️」
俺は言った。
白と黒のマダラ模様。
牛みたいなやつだ🐮

背中を丸めて、毛を逆立てて、尻尾は下がっている。
「ふっ、ビビってんな。ダサいやつめ」

俺が右へ動くと、奴も同じ動きをする。
反対に動いてもそうだ。
「こいつ、舐めてんのか?」

俺は戦った。
取っ組み合いをして、羽交締めにしてやろうとけしかけた。

相手も、ビビってた割に乗ってきやがった。

やってやろうじゃないか。

だが、手を掴もうとするが、一向に捕まえることが出来ない。

こんにゃろ‼️
こんにゃろ💢
こんにゃろ💢‼️

横の方で、人間の笑い声が聞こえてきた。
また、女たちはニコニコしながら、こっちを見ている。

知ったこっちゃねー❗️

俺は戦った。

奴はしぶとくて、一向に捕まらない、小賢しい奴だった。少し休憩をして、また挑んでやる‼️
水を飲み、一通りペロペロして、気持ちを落ち着かせた。

いざ‼️勝負‼️

奴がいたところへ勇ましい気持ちで戻ると、もうそこにはいなかった。

灰色の冷たい壁がそこにはあった。

「まぁいい。今度現れたら、打ちのめしてやる‼️💢」

そう思いながら、女が作ったフカフカのタオルでできた寝床へ戻って眠った。

次の日、奴は現れた。
今度はビビっている様子はない。

「お前何なんだよ💢」と言うと、同じ言葉を同時に被せてくる。
猫の話を聞かない猫だ💢

俺が飯を食うと奴も食う。
俺が毛繕いを始めると、やつもやる。
真似ばっかしやがる。
嫌味な奴だ。

女たちはコソコソと話している。

「やっぱり、あっちの部屋の方がいいんじゃない?」
「そうね〜」

女が奴の前に立った。
女のスカートで奴が見えなくなった。
女が何かを運んだ。

女がいなくなると、奴もいなくなった。またグレーの冷たい壁だった。
女がいる、薄暗い寝室にそーっと入って、
女の背後に立った。

女がその場を離れると、奴は現れた。

移動しやがったな❗️

それからしばらく数日は戦いが起こった。

ある日女達は言った。

「うん。やっぱりこっちの方がいいわね」
「そうね」

俺は牛柄の奴が現れることに飽きていた。
もう、奴が目の前に現れても、動じない。
「俺なんだろう?これ」
そんな事を思って、どうでも良くなった。

それを見て、女達は言った。

「あらーこの子、これが自分だってわかってるのね。賢い子ねー」
ニコニコしながら、誇らしげな表情をしていた。何だか褒められて、俺って頭がいいんだな。と誇らしい気持ちになった。

俺は女達に、心を開きかけていた。
飯が途絶えるわけではないし、怒鳴ったり、俺を蹴ったりすることもない。
この前なんかは、寝床のタオルをもっとふかふかの真新しいものに変えてくれた。
とにかく、俺の嫌がることどころか、喜ぶ事をする。

だから、俺は勇気を出して、座っている若い女の膝に飛び乗った。
すると女はそのまま俺が座るまで待った。
「あら、膝に乗って来てくれたの。可愛いわね」
相変わらずニコニコして、頭や体を撫でた。
あったかくて気持ちがいい。
俺は気がすむまで、そこで眠った。

俺は次第にやることがなくなって、毎日ご飯を食べて、トイレに行って、窓の外を眺めて、母ちゃんが遊んでくれて、たまに洗われて、フカフカの布団で寝る。
そんな毎日を過ごしていたが、母ちゃんを見てると、母ちゃん達は、食べ物を外から持って来たり、食器を洗ったり、掃除をしたり、布団を干したり、丸いコインを出しては悩ましげにしてたり、俺のトイレを綺麗にしたり、何だか毎日忙しない。

ある日、母ちゃんと婆ちゃんは夕飯を作りながら話していた。

「あそこんとこの野菜、高くなったのよ」
婆ちゃんが言った。
「だったら、もう少し遠出して、隣町の市場にでも行ってみないとね」
「今月も切り詰めないといけないからね」

悩ましげな会話をしていた。
どうやら、問題が起こったらしい。
お金の話をしているのは、なんとなくわかった。
お金とは何か、俺は知っている。
丸いコインのことだ。

丸いコインをどうやって使えばいいのか、考えているようだ。
だったら、俺は賢いから、うまいこと考えてやろうと思った。

俺はフカフカの寝床にいながら、考えた。
けれど次第に、あれはどこどこと比べていくら安いとか高いとか、計算をし始めた。

一緒に考えるつもりでいたが、ずっと話を聞いてるとちんぷんかんぷんで、眠くなってきた。
どうにも人間は難しいことを容易く考えられるようだ。
俺の頭は疲れて、眠ってしまった。

それからも、平穏で豊かな日々は続いた。
これといって問題もない。

ご飯もあって、トイレも綺麗で、僕自身も痒いところはない。甘えたい時はいっぱい撫でてくれて、ママとばぁばは、ひたすら僕を愛してくれる。
僕が唯一やれること。
それは、ママやばぁばが元気のない時に、側にいて、頭をスリスリと擦り付けることだ。
そして、側から離れないこと。

僕はずっと一緒だからね。
寂しくないからねって、側にいるんだ。
そして、たまにプレゼントもあげるんだ❗️
いつも、ご飯をもらってばかりだから、家に出てきた虫を捕まえて、ママと、ばぁばの所へ持っていく。

ママは何かいつもと違って、笑顔が引き攣ってる。いっつも僕が何かすると、とっても嬉しそうなのに。
でも、笑ってるみたいだからいっか💡
ばぁばはとっても褒めて、頭を撫でてくれる。
「あら、上手にとってきたのね。くれるの?ありがとうね」
そう言って、僕のプレゼントを受け取ってくれるんだ❗️✨

ばぁばは手に取った虫を、玄関のドアを開けるとポイッとした。

僕はまんざらでもなく、自分の手や顔をペロペロした。
ふふん✨僕がとっておきのプレゼントを捕まえたことを褒めてくれて、僕は自信がついたし、喜んでくれたことが何より嬉しかった。

んまっ、自信なんてものは生まれた時から持ってるけどね😼✨
ママやばぁばの役に立ってるみたいだ✨

ある時は、知り合いの子猫をママとばぁばは預かった。茶トラの子だ。
僕はその子が可愛くて、ずっとペロペロしていた。
その子は僕のご飯も取ろうとするから、譲ってあげたし、フカフカベッドで一緒に寝た。

それを見て、ママとばぁばは言った。
「まぁ、優しいお兄ちゃんね」
そう言って僕を撫でで、茶トラも撫でた。
狩も教えてあげたし、窓からの警備の仕方も教えてあげたんだ❗️
一緒に戯れあって、キャッキャ言って遊んでた。
僕はママやばぁばからもらった愛情を、その子にもあげたんだ❗️

愛情をあげるっていうのは、なんていいことなんだろう✨
茶トラは、ずっと兄ちゃん兄ちゃんと、ニコニコしながら僕についてきて、ずっと一緒に遊んでた。弟みたいで可愛くて仕方がない✨

でも、別れが来てしまった。
飼い主さんが戻ってきた。
「また遊ぼうね」
お互いスリスリしあった。

ママとばぁばと茶トラの飼い主のおじさんは、微笑ましい顔で僕たちを見ていた。

それからも、僕は変わらず
ママとばぁばの家にいた。

段々と体は動かなくなって来て、一日中ベッドで寝ている日が増えた。
ママやばぁばは、食べられない僕に、ご飯を液体にして食べさせてくれたり、トイレに行けない僕の汚れを綺麗にしてくれたり、ずっと側にいて、看病してくれた。

動かない体や足をさすってくれたり、優しく話しかけてくれる。

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