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📗雲の上の世界〜これはアダムとイブのリンゴかな?〜

家がある向かい側は、マルシェになっている。

簡易テントが並んで、魚介類や、野菜、いろんなものが並んでいる。

ちょっと僕は不思議に思ったんだ。

僕は色々見てみた。でもどの場所にも店員がいない。

まぁ、勝手に取って食べていいんだけど‥。

僕は人と話がしたくて回った。

どこを見ても、物が置いてあるだけで、人の姿はない。マルシェなのに人がいないから活気もない。
反対側の階段の広場の方がよほど、活気がある。

そこで、やっと人がいる店を見つけた。
ビニール袋に品物を入れて、お客さんに渡していた。

明るい雰囲気でその場だけ華やいで見える。
僕はその店へ行った。

紅白のストライプのテント屋根に、ワゴンの中にリンゴが山積みになっている。
ここはどうやらリンゴ屋さんみたい。
店主はふくよかな女性で、金色をした天然パーマの髪はショートだ。

僕はリンゴをじっと見ていた。
ちょっと危機を感じたんだ。リンゴに。

「あはははは!大丈夫だよ。これはアダムとイブのリンゴじゃないからね!」

僕の感情を察したのか、快活に女性は言った。

ちょっと僕はホッとしてリンゴを手に取って食べた。
そして、不思議に思っていたことを、聞いたんだ。

「お金、稼がなくていいんだよ? どうしてお店をやってるの?」
そしたら、ふくよかな女性は明るく言ったんだ。
「これをやってるのが好きなんだよ!」


そっか。ここでは何をしていてもいい。
僕は振り返って、階段近くにいる人々を見た。

眠っていても、家を建てていても、それはその人達が好きでしていることだ。
義務も責任もない。
嫌だったら途中で放り投げてもいいし、始めたかったら何でもすぐにやることが出来る。
そんな世界。

本当は家なんてなくても、ここではそのまま住めるし、ご飯だって食べなくてもいいから、リンゴだってなくたっていい。

みんなはしたいことをしているだけだ。

すると、おばさんは話を続けた。
「さっきのお客さんもね、お菓子作りが好きなんだ。特に彼女のアップルパイはね、美味しいんだよ!だから、いつも彼女に渡すんだよ」

「他のお店の人たちはどこ行っちゃったの?」
「みんなはね、他にもやりたいことがあるから、そっちをやってるのさ。でも、もうちょいしたらここも活気付くよ」

もっともっと奥へ行けばきっと、釣りをしている人もいるだろうし、果物や野菜を育てている人もいるのだろう。

みんな、あの世界から学んで培ってきた技術。そして嗜好なんだ。

ふと、僕はパパと、ママのことが気になった。
ここでは時間と言う概念もない。
だからいたいだけいることは出来るんだけど‥

「僕、そろそろ帰ろっかな」
「そうかい。また来るといい」

おばさんは笑顔を見せてくれた。

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