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📗雲の上の世界〜ここが人間が来る天国か〜

ガッカリしているところに、もう一人大人の人が歩いてきた。

大学生くらいのお兄さんたちは、その人のところへ駆け寄った。

「この子が、あそこへ行きたいって言うんだ。でも僕らこれから用事があって、一緒に行けないんだ。あなた連れて行ってやってくれないか?」

そういうと、歩いてきた男の大人の人は言った。

「ああ、わかったいいよ。ただし、橋の麓までな」

僕は青年たちと別れて、男の人と一緒に歩いて行ったんだ。

ここに、悪い人はいない。
殴ったり声を荒げたり、持っている物を取ったり、騙したり、殺めたり。
そんなことをする必要がないし、そんなことをしたい人はまず、ここには来られない。

男性と歩いて行って、辿り着いたところは虹の橋の先端。

男の人は言ったんだ。

「もう、この橋を渡ると着くから、行っておいで」

僕は男の人にお礼を言って虹の橋を渡った。

渡った先に深緑の車体に黄色のラインがアクセントのチンチン電車があった。ちゃんと紺色の制服をきた車掌さんもいる。
僕は乗り込んだ。

終点に辿り着いて、僕は石畳の小さな駅を降りた。

僕の住んでいるところには一つもないものが、たんとある。

ここで言う、モロッコのアイト・ベン・ハッドゥのような四角い二階建ての建物が並列していて、その前に建物に沿って続く二段くらいの階段がある。

二階以上の建物はない。
だから、圧も不思議と感じないんだ。

ここは皆んなが集まる憩いの場。広場なのかもしれない。

ここではみんな、男性も女性もベージュ色の布衣を着ている。ワンピースみたいな感じ。

人が沢山いて、でも混み合っているわけではない。楽しい雰囲気、賑やかな雰囲気で満たされて、活気付いている。

僕は何だかワクワクした。

男性が階段で寝ていたり、
階段の前で男性四人が麻雀みたいな遊びをしていたり、女性同士で楽しくおしゃべりしたり、
演劇をやっていたり、奥の方で、家を建てていたり、
各々がやりたいことを、ここではしている。

麻雀をしている男性の一人がこっちをみた。
顔はコワモテ。

ガッチリした体格に、目に刀で斬られた跡が痛そうに残ってる。

男性は僕を見て、ニッコリと笑ったんだ。
「僕、あっちから来たのかい?」
「うん!」
楽しそうに笑っていた他の三人もこっちを見た。

「そうか、そうか。楽しんでくといい」

男性達は笑って談笑しながら、また麻雀を始めた。

僕は思ったんだ。
このコワモテさんはきっと、ここまで来る間に多くのことをしてきたんだろうって。
修羅場ばかりだったんだろうって。
沢山傷つけられて、酷い目にあって、過酷な人生を送ってきたんだろうって。

それが目の傷の証拠。
コワモテが物語っている。

でも腐らなかったんだ。

コワモテさんに怖さは微塵も感じない。
優しさと温かさしかないんだ。

だからコワモテさんはここにいる。
心穏やかに楽しく、嫌なことなど何一つない、温かい世界に来られた。

大事なのはどんなことがあっても、なるべく腐らずにいること。
そして、精神をなるべく綺麗に保っておくこと。

それがここへ来るための秘訣なんだ。



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