【創作夢小説】サイバーランカーズ

『サイバーランカーズ』
ある秘密組織のこと。
それは最高現代技術、『サイバー』を用いて最古の能力、『ランク』を極限まで膨張させ、ランクを使用することのできる『ランカー』を覚醒させて、(サイバーランカーズに入隊させて)サイバーを使ってランカーを滅ぼそうとする、『バグ』を駆逐させる組織である。
具体的には『サイバーラクション』という現代技術を用いた武器に『ランク』詰め込み、『ランク』の能力を最大限までひきだせるというもの。
それぞれの『ランカー』には支給される『サイバーラクション』が違い、それぞれの『ランク』にあったものを渡される。
また、『浄化テクノイズ』と言うバグを浄化するものもある。

まとめ

『サイバーランカーズ』バグを駆逐する秘密組織。
『サイバー』現代技術。
『ランク』最古の能力。(炎、水など)
『ランカー』最古の能力(ランク)を使える人。
『バグ』サイバーを悪用してランカーを滅ぼそうとする魔物。元は反ランク組織の人間。
『サイバーラクション』サイバーを使った武器。ランクを封じて攻撃できる。
(例 電気のランクの場合、サイバーラクションに電気のランクを封じ込み、電気が使えるサイバーラクションを使える。)
『浄化テクノイズ』バグを浄化するノイズ。これを大量にバグに浴びさせると、人間になれるという。その特性を使ってサイバーランカーズは、ランクを使えるバグをサイバーランカーズ隊員に変えているらしい。


キャラクター

水穂 せいな(みずほせいな)(ただの人間)

ランク 無し
サイバーラクション 金棒 鬼神(かなぼう きしん)たたくと自動で浄化テクノイズが発生する特性を持っている。
性格 まっすぐで堂々としている。怒りやすい。
「無能ですけど何か用?」

猿山 ルキア(ましらやまるきあ)(ランカー)

ランク 毒
サイバーラクション 大鎌 古冬(おおがま こふ)振ると斬撃が飛び、その斬撃に毒を載せることができる。載せ方は、予め鎌の手持ち部分に毒を注入しておくこと。
性格 短期だけどツンデレ。実際やさしい。
「あぁ?お前も溶かしてやろうか?」

歌霞 ちなつ(かがすみちなつ)(ランカー)

ランク 音
サイバーラクション 音響スピーカー 未来(おんきょうすぴーかー みらい)音を出すことで拡大でき、6つのスピーカーを自由に操れる。
性格 無口でクール。
「………反響…………」


電小 わかば(でんしょうわかば)(ランカー)



ランク ペット(電気)
サイバーラクション 弓 鼓動式(ゆみ こどうしき)放ったビームに電気が込められている。当たった場所の周りは常に感電している。
性格 元気すぎる妹。
「エイムの腕は宇宙一。おっと、地球を一周回って君の後ろに。」


秋原 やよい(あきはらやよい)(元バグのランカー?)



ランク ノイズ(斬撃)
サイバーラクション 二刀流妖刀、瑕疵(にとうりゅうようとう かし)ノイズの入った刀。当たるとその部分にバグが生じる。
性格 ちょっとうざいお姉さん。
「斬撃を兼ねたノイズのランク…さあ、勝てるかな?」

小泉 めい(こいずみめい)(人外ランカー(猫)



ランク 変身(メタモンみたいなかんじ)
サイバーラクション 柔槍 伸(じゅうし そん)、弓刃 伸(ゆりば そん)
伸ばして突く柔軟な槍。両方に刃が付いている弓。
性格 元気っぽい不思議ちゃん。
「変身できるから槍を増やして動かしてるんだ!」

藤叶 キル(ふじかなきる)(バグ)



サイバー ハッキングサイバー
サイバーラクション 槍 振子(やり ふりこ)
普通の槍として機能するが、振り子のように使って相手をハッキングできる。
「ここではバグは有害として処理されて、なかったことになるんだよ!」





私…秋原やよいは、超高層マンションからの夜の夜景を眺めながら小さな冷蔵庫を開く。
中からジンジャーエールを取り出し、開けたときの香りを楽しむ。
上がった冷気の煙の先を見ると、埃やちりが集まった都会が目に入る。
グラスに氷とジンジャーエールを注ぎこむと、氷がからからん、と鳴る。

楽しんでいたところで、スマホがぶんと鳴って震えた。
キルからメールが届いていた。
内容は、
『無事にバグ浄化のふりできた?もしかしてガチめに浄化されてたりしない?』
そしてさらに通知が届く。
『既読無視厳禁。』
私は呆れながらスマホのキーボードを打つ。
ぽっ、ぽっぽっ、と。キーボードを打つ間抜けな音が響く。
『大丈夫。ギリ乗り切れた。まだまだバグとしての能力とかは消えてないよ。』
『よかったわ〜』
『しかも高層マンション借りれるしさいこー』『まじ!?いいな〜』
グダグダの口調だが、これはボスのキルとスパイとして送り込まれたしもべの私、やよいの会話だ。
ここは、『サイバーランカーズ』。
『バグ』と言う人間を殺したりバグに変えたりする有害として扱われる物を退治する団体だ。
そしてこの団体では近年、『バグ』を浄化する、『浄化テクノイズ』と言う物を使って、バグをサイバーランカーズ隊員に変換するということが行われている。
中でも強いバグだけが選ばれる。
そのうち、私は1号。秋原やよいと名付けられた。

もとの名は───「斬撃」

コンコン、と扉が叩かれる。
『ごめーんよばれた』
私はスマホを隠し、「どうぞー」と返す。
「今日から秋原様の執事になりました。冬乃木ちときです。」
黒いロングヘアを後ろで1つに束ねた姿は、執事ではなくメイドのようだった。
「よろしく〜」
その後沈黙が続いた。口が少ない方なのだろう。
「……やよい様。バクから浄化される前に、左目が黒かったのですが、浄化されたあとに白くなったのはなぜですか?」
私は、うーん、と続けて口を開いた。
「あの目はバグの時は黒ノイズって言う強いバクにある特徴だったんだよね。それが無くなって浄化されて。白なのは盲目の印。」
「大丈夫なのですか?」
「うん。元バクだから見えなくても戦闘に支障はない。」
「了解です。」
話が終わったところで、耳障りなサイレンが響いた。
『江戸川区西小学校体育館、その他周辺の企業のビルや公園、マンションなどにバグ核が…それぞれ5つ発生!!直ちに出動してください!!』
「お、行くか。」
そこでちときがささっ、と隊服を準備した。
「こちらにお着替えください。」
さっきまで私服に近い服だった私は、フード付きの赤と黒で作られた服を掴み、羽織り、履いた。
「VRサポートゴーグルをお付けください。」
ちときが差し出したのは、片目しかない薄めのVRゴーグル。
どちらかというとただのレンズだ。
かちゃり、と。接続イヤホンとレンズを装着すると、近代的な音が耳に響いて、レンズの色が赤色に変わった。
ちときはまた、紫色のシートを準備した。
「初任務でございましょう。サイバーラクションをお選びください。」
「えぇ…」
ちときは槍、弓、剣、刀、爆弾、その他いろいろの武器たちを紫色のシートの上に並べた。
これが、『サイバーラクション』。
浄化された時に自動的に脳内に響いた知識だ。
武器と言ったところだろう。
「じゃあ…おお!この二刀流の刀いいね!」
「ではこちらでお決まりですか?」
「おけー」
ちときは、まず、と続けた。
「急いでほしいのですが、武器のお名前を伝えいたしますのと…あと武器にランクを載せる方法など…」
「うーん。じゃあまず名前は?」
「二刀流妖刀 瑕疵でございます。」
カチャリ、と。ちときは鞘に包まれた二本の刀を持つ。
「にとうりゅうようとう…かし?お菓子ってこと?」
「いいえ。瑕疵とは「ノイズ」や「バグ」のことです。元バグ隊員の1号にはこちらが最適かと。」
「ほう。」
私はちときに渡された刀を腰のベルトに刺す。
「ランクの入れ方ですが…おっと、やよい様はランクをお持ちですか?」
「うん。持ってるよ。バグでは珍しい方だけどね。」
「そうですか。ではいつもランクを使うかのように力を込めてください。それだけです。」
「うんおっけー」
「では出動までは私は部屋で待機させてもらいます。」
「分かった。」
私は声のトーンを低くして目つきを変えた。
今から、仲間を殺しに行く。
(もちろん、承知の上だ。)



「やばいやばーい!」

私───水穂せいなは、サイバーランカーズの新隊員だ。と言っても、ランクは使えない。ただ『浄化テクノイズ』というバグを浄化するものを使って倒すってだけだけど。
たった今初任務のサイレンが鳴って、新入生が出動しろと言われた。
「たしか体育館?!だよねぇ?!」
「たしかね。」
だらしなく高い声で喋ったのは、私のメイド、「春菜」。
私のメイドはなぜかだらしなかった。
でも、普通が人なのかは分からないけど。
「早く行きなよー金棒持ってさ。」
「分かったって!焦らすなよー…!」
私は細い黒色の棒を掴んで隊服を着て、VRサポートゴーグルを装着した。
1から学んだ知識。勉強するのにまる二年はかかったと思う。

部屋から出ると、横に長く伸びる廊下に、数々の扉があった。他の隊員の部屋だろう。
その廊下のずっと先には、鉄でできた古めかしい大きな扉があった。

後ろから、小さなドローンが飛んできた。
『今回皆さんを見守らせていただきます。名前は言えませんが、ドローン、と呼んでください。』
ドローンは、手のひらくらいの大きさで6体ほどあった。
いつの間にか私の周りにたくさん人が集まっている。
猫耳のある人。ちびっこの小学生。目つきの悪い男の子。小さいマイクをつけた人。不穏な空気を漂わせるフードを被った人。私。
「み、みんな、よろしくねー…」
誰ひとり口を開かない。
気まずい雰囲気だった。
『では、扉を開きます。エレベーターに乗ってヘリコプター駐車場まで行ってください。』
すると、ぎしし、と音がして、扉が重く開いた。
「っ…油断すんなよ…」
男の子が始めて口を開いた。
エレベーターは、音もなく上へと上がった。

6人はヘリコプターに乗り、空から都会を見渡した。
「わわわわわ!すごい!」
小学生が窓に顔をつけて言った。
「しーっ!静かに…!」
もう一人、猫耳の女の子が注意した。

『現場の屋上です。各自荷物を持って着地準備をお願いします。』
フードがヘリコプターから落ちた。下を見ると、しっかりと着地していた。
(す、すごい…)
その後に続き、いろんな人が降りる。
私の番になった時、戸惑っているうちにヘリコプターは屋上の床についていた。
「おいそこの凡人。ランクは?弱すぎんだろうよ。」
男の子が聞いた。
「ランクは…ないです!!」
「はぁ?ない?お前それでよくサイバーランカーズに入隊できたな。」

「親が2人バグに殺されて!!」

そして全員がはっとした。
「その代わりサイバーランカーズから浄化テクノロイズを預かってるんです!!」
「ほう。」
納得した、と男の子が呟いた。
「とりあえずオレは行く。」
まるで二人の会話だった。

私は体育館にふわりと着地する。
(懐かしい…)
体育館の端に追いやられた跳び箱。閉まっている体育倉庫。そしてステージ……には、心臓のような、私の身長ほどある巨大なコアが浮いていた。

どくん、どくん、と大きくゆっくりと鼓動している。
あれは、「バグコア」。

ほっといていたらあそこから永遠とバグが召喚される。

先生に言われた言葉を頭の中で繰り返す。

あれさえ壊せばバグは出てこない…

「ふぅ…」
震える体と息を整えて金棒を右手の中で握りしめる。
戦闘態勢に入る。
「…行くぞ…!」
私はステージ向かって突進した。
するとコアからバグが現れた。
増殖するように。ぼん、と。

それはクラゲが巨大化したかのような、虹色と水色を帯びた色のクラゲだった。
すぐに金棒を振り上げ、ジャンプしながらクラゲの傘を叩く。
ぶよん、と。
バチッ、とした打撃は感じられなかった。
今までの訓練とは違う。
本当にバグと戦っているんだ。
手が震えだした。
しかも今、私はバグの傘の上にいる。

クラゲのような生物は私を乗せたままふわりと浮遊しだした。
「…え、ちょちょ???」
そのまま触手の先の毒針を私に向けた。
「このっ!」
金棒で、ばちん、と弾き返す。
そのまま衝動で触手は切れて遠くに飛んでいった。

するとイヤホンから音が響いた。

『…オレはルキア。猿山ルキアだ。聞こえるか?こいつらの弱点は「触手」だ。分かったか?』
少しノイズがかかっている。
すぐに、ぶぶ、と言う音が聞こえた。
『おけーです。私はめい!小泉めいです!』
『歌霞ちなつ。』
ちなつちゃんは小声だった。
「わ、私は水穂せいな。です。」
『私は電小わっかばっだよーっ!』
『私は秋原やよい。』
『…ああ。分かった。これで全員か?……触手を全部抜けばコアも一緒に出てくる。とりあえず参考にしとけ。ガキ共。』
『くちわるーい』
そしてまた、ぶっ、という音が聞こえて会話が終わった。
(…触手か…)
私は深呼吸をして、金棒を握る。

目をカッと見開きクラゲに向かって突進する。
「このっ…!」
金棒を触手に絡める。
「人殺し…!」
ぐるりと空中で1回転してそのまま、触手が絡んでいる棒を下投げした。
まさに、引っ張り手のいない「凧」だ。
そのままクラゲは棒に引っ張られるように遠くへ飛んだ。
どし、と重い音がして、クラゲの触手がだらりとたれた。というか、外れた。
その触手についてくるように、30cmほどあるコアがずるりと落ちてきた。

クラゲは傘だけになった。
そのままどす黒い色に変わり、力を無くす。
(やった…!じゃない…コアを潰したら終わりだ!)
クラゲについていた小さめのコアをごりごりと踏み潰し、ステージの上のコアに走る。
高くジャンプして、右足を突き出し、そのまま空中蹴りをする。
左足を着地させ、ぐるりと1回転すると、その勢いでコア地面に叩きつけた。
水風船が割れるように、コアはしぼんだ。
(…報告しないと。)
私はイヤホンを軽く押す。
「こちらせいなです。聞こえますか?」
『聞こえるよー。なに〜?』
『なんだよ?』
『どうした』
「体育館のコアを潰しました。」
『え?私は今公園です。コアはまだです。早いですね。』
めいが喋ると奥から血が飛び出る音がした。
『私は青山スーツのビル。バグ排除はまだだ。』
やよいが喋ると風の当たる音がする。
『…』
ちなつちゃんは何も喋らない。
『オレはマンション。オレもまだ。』
ルキアが喋るとクラゲの断末魔のような音が響いた。
「ええ?えええええ?」
『んーたぶんね、それコアじゃないよ〜』
「どういうことですか?!」
『コアしぼんだ?』
「………はい。」
『ああ!』『あーあ』『え〜』『はぁ』『…』
「えぇ?!なんか悪いことしましたか?!」
『あれ…』
私はごくりと喉を鳴らした。
『エンドコアだよ…』
「えっ!エンドコアって…なんですか…ね?」
『エンドコアは…壊すとそのバグたちのボスみたいなものが出てくるコアですかねぇ〜』
めいが説明をした。
『あれ壊すとエンドコア現れる』
ちなつが抑揚のない声で言った。
『あぁ〜だから最後に壊すべきなのになァ?よくもやってくれたなァ?』
「ごっ、ごめんなさい!」
とりあえず、とめいが続けた。
『全員が各自の場所を討伐し終わったら、体育館に向かうね。』
「はい…」
ぷつん、と。電話が切れる音がして数秒。

しぼんだコアの右側が、ぷくぅと膨らんだ。
(やばい…みんな早く…!)
そのまま左側も膨らむ。
ぼん、ぼん、ぼん、と。段階的にどんどんと大きく膨らんでいく。
やがて膨らみすぎて、体育館に詰まった。
私は膨らむ前に校庭に出ていたが、体育館の窓という窓から赤色の生々しい物体が覗いている。
(怖い…)

どごごごご、と音がしたかと思うと、体育館が大きさに耐えられずに爆発し、粉々に散った。
「あ〜!やばーい…!どーしよー…!」
棒読みと本気を混ぜ合わせた絶望の叫び声。
私は校庭のど真ん中で立ち尽くす。

『ねぇ待って!すごい爆発音が聞こえたけど…!』
耳からめいの声が響いた。
『あぁ。オレの所もだ。ちょっと小さかったけどな。』
『私も聞こえた。少しだけだ。』
『わかばも!』
「エンドコアが体育館をパンパンにして壊してしまったんです…!その音です!」
「…ところでちなつちゃんは?」
『…学校の目の前』
「えーと?」
『もう学校の目の前にいるから知ってるだとよ。察しろよ。』
「ごめんなさい…っ!」
「って、ちなつちゃんはなにしてんの?!」
『エンドコアを壊す』
「…とりあえずありがとうございます…」
誰もいないのに校庭のど真ん中でお辞儀をする。

ぶつ、と音がして会話の終了を私に伝えた。
見上げると、すでにエンドコアは怪獣のような形を成していた。

細く長い、片腕だけで10mほどもある手足四足歩行。
体全体はくすんだ桃色。
顔は干からびたようにやせ細っていて、白目。
髪はない。
歯は隙間があき、大きく顎が外れている。
背中に、クラゲの傘がイボのようにくっついている。

「ぜんっっっっぜん可愛くない!クラゲはどこよ?!ただの巨大ゾンビじゃない?!」

『が…あああ…がああああ!!!!』

悲鳴に似た声を上げながら四つん這いで高速でこちらに向かってくる。
「ひゃああああああ!こわああああああい!」
ドタドタと首をかしげたりしながら怪獣が口からよだれを垂らす。
すると濡れた地面が、じゅわああと音を立てて1mほど溶けた。

……………溶けた…………………

「いやああああああああああああ!!!!」
私は悲鳴を上げる。



『右腕爆発』




聞き覚えのある声。
声が響いたところ───ジャングルジムに目をやると、そこには歌霞ちなつがいた。
マイクを手に、1つの円盤を浮かせている。
その円盤はスピーカーだ。
見た目からしてなんとなく分かる。

ばごん、と音がして、体育館があったところを見ると、怪物の右腕が爆発して吹っ飛んでいた。

『ぎやあああああああああああ!!!!』

怪物は断末魔を上げ、もがく。

『左側…腕…切断……』

すると怪物の左腕は真っ二つに切れた。
「ちなつちゃん!!」
ちなつちゃんはジャングルジムから飛び降りて私のところに来た。
「水穂。」
「何そのランク!かっこいいじゃん!」
「説明…いる?」
「ほしー」

『がああああああ!!』

「…一回あれ倒してから」
ちなつちゃんはマイクをポケットから取り出し、後ろに浮いていたスピーカーを手招きした。
さらにマフラーをずらして口を出した。

『頭蓋…骨…粉…砕』

「…wow」
ちなつちゃんの声は少しかすれていた。
ばこ、ばこばこ、と。怪物の頭が砕けた。
「ヤッター!」
「まだ」
これは「まだだ」を意味しているのだろう。
もう一度マイクに顔を近づける。

『せなか…かさ…ばく……』
『ぐはっ!!』


ちなつちゃんは口から血を吐いた。
「大丈夫?!」
「…がっ!む゙り゙だ………助けを…ま…て…」
バタリとたおれて、マイクを落とす。
「ちなつ…!」
ちなつはびくともしない。

「おーい!」

わかばが怪物のクラゲの傘を、
ぶち、ぶち、ぶち、とリズムを刻んで両足で潰す。
「弱点を先に壊しなよー」
呆れながらわかばが弓を引いた。
ばち、と。電気を帯びた矢が胴体だけになった怪物の中心を貫いた。
「はい終わり〜やで」
「…はや…」
「まぁ、ね。みんないるし。」
「え?」
「やほー」
影から小泉めいがのぞく。
「…はぁ…」
後ろにはやよい。
「よいしょっと」
ヘリコプターから落ちてきた、ルキア。
「えぇー?!」
「いや、今ついたばっかりだし?別にずっと見てたわけでもないからね?」
「…へ、へぇ。」
「ま、とりま一件落着ってことで。ヘリで帰ろ〜!」
そのまま私達はヘリコプターに乗って帰った。




寮での昼食の時間。
新入生専門の寮だからか、昨日の夜のメンバーしかいない。
『昨夜、西小学校を中心とした地区でバグが発生。サイバーランカーズが向かったところ、誤ってエンドコアを───』
ぷっ、と。やよいが食堂のテレビを消した。
「今は食事中だからテレビは見ない。」
やよいはスーパーで買ったのか、たらこパスタを食べている。
この食堂には豪華なバイキングがあるというのに。
「はいはい。」
わかばはバイキングで相変わらずポテトとミートボールを山盛りに盛る。
「………」
ちなつの口周りには包帯が巻かれ、点滴で栄養を摂取ている。
昨日の戦闘で喉を潰してしまったそうだ。
「そーいえばさ、サイバーランカーズって任務が来るまで自由なの?」
めいは納豆ご飯に紅茶。
「確かそうだった気がするよ」
私は鮭おにぎりとうどん。
「ええ?!暇じゃん…」
「でも訓練とかあるしね。」
「わかば。フォークを人に向けない。」
「あれ?やよいさんって左利き?」
「あ、うん。」
「わかば少しは野菜食べな。」
「えー無理。」
気まぐれな会話を交わしているうちに、私達は仲良くなっていた。
「…せいなの失敗のせいで新入生組はしばらく任務無さそうだよね〜」
「はぁぁあ?!」

『特急部隊員に任務です。ネズミーランドでバグが発生。直ちに向かってください』

そこでやよいが立ち上がった。
「あ、ごめん。今日から私、特急部隊員になるんだよ。」
「え?!」
特急部隊員とは、サイバーランカーズの中でも最上級に強い隊員のことだ。
「ばいばーい」
やよいは武器を手に取り、出口へ向かった。
「…………あおいあ、うおいああ…」
ちなつがぎこちない口調で言った。
「やよいは、つよいから?」
「うん」
「へぇ」
「しょうがない。ね。」
また明日に備えるか、と。
ルキアが小声で口にしてから私たちは解散した。


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