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●地元特有の訛りを武器にする●

喜風さんも新庄の老舗の大衆割烹
お昼は焼鳥弁当やソースカツ丼弁当、夕方からは和食、洋食、刺身、肉オールマイティに楽しめるお店。

ラジオCMの案件をいただいて、
ヒアリングのお約束まで1週間ほど時間がありました。

その間に当ラジオ局「あすラジ」のパーソナリティ、生き字引 加藤吉次 氏に「昔の喜風さんってどげだったなんですや?」と聞くと、

「なんでも美味い。特に刺身はじょんだ(上手だ)。昔っからみんな言ってだっけ」

ふむふむ。

確かに妻も「なんでも美味しい」と言ってた。
ソースカツ丼に焦点を当てるか、刺身に焦点を当てるか迷っていましたが、まだその段階ではないか。と詰将棋のように頭の中で色んなパターンをポヤポヤと考えていました。

用事で前述の梅寿司さんにお邪魔した時に、喜風さんのCMを頂いたことをお伝えすると、
「どんなおもしぇなでぎっか楽しみだ〜♫」
と女将さんキャッキャしておりまして笑

なんというプレッシャーか笑

ヒアリングの日、お昼の営業が落ち着いた時間にお店に行くと、ジャンル多彩なメニューがお品書きとして掲示してある。
店主の矢口さんにヒアリングをしていく中で、USP(ユニークセリングプロポジション:独自性)となりうるところを拾えました。

「旬のものは、出始めた瞬間にオーソドックスな食べ方を楽しんでもらって、たくさん出回るようになったらすぐに創作料理を楽しんでもらう。」

里芋が出始めたらまずは【芋煮】その後すぐに【里芋の包み揚げ】など、家庭でなかなかやらないよ。という手をかけた料理で提供する。

大衆割烹とはいえ、割烹の名に恥じぬ心意気。

「梅寿司さんが喜風さんのCM面白いの期待しているって言ってましたけど、面白く作って大丈夫ですか?」
と確認すると、
「あんまりわがんねがら任せるよ笑」
と笑顔で任せていただきました。

御礼をして店を出ました。
車までは約10歩。
その間で思考がめぐる。

喜風さんのイメージを看板メニューに絞り過ぎるのももったいない。
和も洋もバラエティに富んだ板前さんの料理を楽しめる。
でもソースカツ丼食べたい。食べて欲しい
それでいてインパクトのあるラジオCM
地元の人が食べ慣れた食材を斬新な食べ方。
老若男女楽しめる割烹。
それでいて老舗。なんでも美味しい老舗……

車の扉をバタンと閉めた時に一つの案が浮かびました。

きふう→ちふう

新庄にも訛りの中の独特の発音があります。
「き」が「ち」に近い発音になったりする田舎独特のあれですね。ローマ字化すると【kschi】ですかね。
それを言う新庄人と聞き取れない非新庄人。
堂々と訛っても放送されるのは新庄。
みんな聞き取れちゃう。
これおもしろいかも。

いや、あかんあかんあかんあかんあかんぞ。他を出せ他を出せ他を出せ

紙にしたメモなら消せますが、降って来てしまった案が消せない。この間店を出て3分ほどなのです。
シミュレーションしていた詰将棋が全く意味をなさない。でもおもしろいかも。

あまりにも「思いつき」すぎて制作プロセスに論理性がないので不安が拭いきれず、
「ソーッスね」編、「割烹」を鹿威しの音にしてみようか鳥のカッコーにかけてみようか…など
色々考えても脳内で再生される【kschi fu】が強すぎる。
なんてことを考えているうちにスタジオに戻ってきてしまいました。

同僚の武藤さんに案件の報告と共に「ちふう」編を発案しました。
「だいぶインパクトあるね。こびりつくわ。むしろそれいいんじゃない?」
と言ってくれました。

背中を押してもらう形ですぐにコピーを書き始めました。

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喜風 20秒CM「ちふう」編

都会娘  あのー、この辺で美味しいオススメのお店ありますか?
新庄人 きふうだな。
都会娘 ちふう?
新庄人 ちふうんねきふう さすみもぬぐもなんでもんめさげ
都会娘 あああそうなんですね。ちふう…
新庄人 きふうだっつってっぺなきふう!
都会娘 ちふう…

Na      喜風です
         ソースカツ丼も季節の味も豊富なメニューも楽しんで!鉄砲町の大衆割烹 喜風

CM制作例

音声はこちら↑#3
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数日後、収録編集を終え、喜風さんに聴いてもらうべくお邪魔しました。

夕方の準備をしている大将が
「ちょっと待ってけろな」
明るく優しい声をかけてくれたが、内心はドキドキ。
今まで幾度となく、お客様に自分達の作ったCMを聴いてもらってきたけど、この瞬間ばっかりは慣れない。ドキドキが止まらない。

大将が手を止めて、女将さんと揃って
「んじゃ聴くか!」
私はいつも心の中で「ええいままよ」という言葉を叫んでからiPhoneに入れた音声ファイルの再生ボタンを押します。そこからたった20秒ですが、お客様と一緒に聴いている20秒はとても長く感じます。

私          「どうでした?」
大将       「…いいんねがや?」
女将さん 「いいんねがじゅ?」

喜風のお客様は「なに食べても美味い」って喜んでくれるし、刺身も肉もソースカツ丼も旬のものも全部入ってるし、良い良い。
と喜んでくれました。
その瞬間の安堵感と感謝ったらありませんね。
息吸うのを思い出す感じ。

その後大将にエアドロップなんてハイカラなテクノロジーを教えてデータをお渡しして、その日から放送になりました。

楽しみにしていらっしゃった梅寿司さんも大層喜んでくださいました。

今ではクスっとくる思い出の一本になりましたね。
ただ…。
書いた時点では、書いたのはいい。
書いたのはいいけどまだ不安。
そして苦し紛れにその日の晩に書いたのが↓
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喜風 20秒CM「なんでもうまい」編

タコと竹とんぼ
どちらも飛ぶほどうまいでしょう

ほっけ焼きと流通
どちらもおろしが大事

ソースカツ丼と紙芝居
とじずに完成です

割烹と魚市場
どちらもあじに自信があります

なんでもうまいな

na 喜風です。
愛されて28年
季節の味と豊富なお品書きを楽しんで!
大衆割烹 喜風
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ボツ

凝りすぎて不自然なんですね。
そもそも「うまい推し」のコピーは前述の通りでね。
「オススメ」って言葉が推されてる方が多くの人の経験に触れられる言葉なんではないかな。と。

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