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伊月一空の心霊奇話 ―いわく付きの品、浄化します―

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霊が視えることが悩みの静森紗紀は わけあって 一軒の骨董屋を訪れる。店の名は『縁』。その店は店主である伊月一空の霊能力で 店に並ぶ品たちの過去の縁を絶ち さらに新たな縁を結ぶとい…
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#因縁

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第1話

 その店は、いわくつきの品を浄化する、骨董店であった プロローグ  暗闇の中、部屋の隅に髪の長い女が立っている。  まるで、何かを訴えかけるような目で、こちらを見据えながら。  顔も見たことがない、知らない女性であった。  なのに、時折こうしてその女は姿を現しては、もの言いたげな目で見つめるのだ。  また現れたの。  あなたは誰。  どうしてそんな目で私を見るの。  そう女に問いかけようとしたが、声が出なかった。  指一本、動かせない。  金縛りだ。  ゆっくりと、そ

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第4話

◆第1話はこちら 第1章 約束の簪3 縁 出会い 「おい、大丈夫か?」 「やめて!」 「しっかりしろ!」  頭上から落ちてくる声に、紗紀は目を開け顔を上げる。  目の前に若い男が立っていた。  立てるか? と訊ねられ、腰をあげようとした紗紀の腕に、男の手が添えられた。 「すみません……突然、具合が悪くなって」  紗紀はもう片方の手でこめかみの辺りを押さえる。  頭痛はおさまったが、目の奥がまだチカチカした。  そのせいで、少し吐き気がする。  それにしても、今のは何だ

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第5話

◆第1話はこちら 第1章 約束の簪4 買い取ってください! 「ご迷惑をおかけしてすみません。突然、貧血を起こしたみたい……」  カウンターの側に置かれたアンティーク調のテーブルセットに腰をかけた紗紀は、頭を下げ弱々しい声で呟く。  本当のことを言えば、貧血ではなく突然、おかしな声や映像が頭の中に流れ込んで混乱したといったほうが正しいのだが、そのことは口にはしなかった。話したところで信じてはもらえない。笑われるだけだ。  いきなりお店で倒れるなんて恥ずかしすぎる。 「無