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工房名は「Wired(ワイヤード)」

前回、工房について触れたので
改めて少し書き足してみます。

そもそも「工房」というのは、
「もの作りをおこなう仕事場」という意味ですが、
何を作るかで、揃える材料や道具が違うので
必要な広さは色々です。
合わせて、どう作るかが問題で、
工房での「もの作り」は手作業が中心です。
対して機械を中心とした「ものつくり」の場所は
「こうば」であり、さらに規模が大きくなると
「こうじょう」と呼ばれます。
この「こうば」と「こうじょう」は
漢字で書くとどちらも「工場」ですので
ややこしいですね。

話を戻して工房についてですが、
一般的に「手芸」と呼ばれているものは
あまり広い場所を必要としない気がします。
逆に陶芸などは作業の行程が多そうですから、
ある程度の広さが必要なのではと想像します。
ではワイヤーワークはどうかと言うと、
これも「どんなもの」を作るのかで違ってきます。
振り返ってみると、私が最初に作っていたのは
ミニチュアの椅子でした。
作ったものは片手に乗る程の大きさでしたから
小さな作業台的なものがあれば十分でした。
その後、制作する環境の諸々が変わり、
最後はワイヤーアーティストとして、
40畳ほどもある専用の工房で
もの作りをしていました。
ワイヤーワークと言っても
ひとくくりには出来ないのですね。
ちなみに、現在は3畳程の小部屋を
一応工房として使っています。

さて、話が逸れてしまいましたが、
本題である工房名「Wired」の由来です。
ワイヤーを使った「もの作り」を初めたのは、
当時経営していた店が忙しくなかったからで、
正直に書けば、まさに暇つぶしのためでした。
ワイヤーワークを生業にするなんて、
つゆほども考えていなかったのですが、
その後、あくまで店の集客の手段として
「教室」を始めることになりました。
となると、カリキュラムをどうしようか、
月謝はどのくらいが良いかなどと、
様々な準備が必要になります。
そこで、はたと
「教室の名前が必要だ!」
ということに気がつきました。
ネーミングは大切です。
通ってみたくなる「名前」にするために
散々考え、最後は2つの候補の中から
最終的に2つの理由で「Wired」に決定しました。
最初の理由は、何といっても、やろうとしていることが、
主にワイヤー(wire)を使った制作教室だということ。
そこで辞書に「wired」という単語を見つけ、
「有線の」という意味を知り、
「ふむふむ」と、とりあえず有力な候補に。
次に、これこそが決定的な理由ですが、
当時、ふとレコードを聞きたくなって
何を聴こうか選ぼうとしたところ、
パッと目に飛び込んできたアルバムが
Jeff Beckの「WIRED」だったのです。
 *注:写真
当時、すでにレコードを聴くことはほとんどなく、
もっぱらCDばかり聴いていましたし、
そもそもこのアルバムは、
買ったまま、ほとんど聴いていなかったので、
アルバムタイトルすら覚えてないという1枚だったのです。
「あれっ!こんなん持ってたっけ」という感じですね。
今考えても何だか不思議な気がしますが、
ジャケットを見た瞬間「これだっ!」ということで、
教室名は「Wired」に決定し、
ついでに工房名としました。
その後、頼んであった「wired」のロゴが出来上がった頃、
久しぶりに訪ねてきた知り合いにそのロゴを見せたところ、
何とアメリカに「WIRED」という
インターネット関連の雑誌があることを教えくれました。
 *注:1993年、サンフランシスコで創刊。
    現在は日本版も刊行中。
    綴は全て大文字で「WIRED」です。
さらに「wired」には繋がるという意味もあって、
それは雑誌のコンセプトでもあるとか何とか…。
そもそもワイヤーワークとは
切ったワイヤーを繋ぐことの連続ですし、
作品を通して誰かと繋がれるのは素敵なことと、
改めて「Wired」にして良かったと思いました。
そして2000年のこと、
あのSEIKO(時計)が新たなブランドを立ち上げたのですが、
そのコンセプトは「世界とつながることを目指して」とあり、
驚くことにブランド名は「WIRED」でした。
ちなみに雑誌も時計も「WIRED」ですが、
カタカナ表記は共にワイアードとなっています。
ところで、
工房名で最後まで悩んだ、もうひとつの候補名は
「Garden Junk」でした。
実際、当時作っていたもののほとんどはガーデン関係。
使用する鉄のワイヤー(針金)の質感は
チープというよりジャンクといった方がピッタリきます。
さらに「Garden Junk」とは、
所蔵していたお気に入りの洋書のタイトルでもありました。
半ばこれで行こうと決めていた時、
親しい友だちに
「Garden Junkってどうかな?」
と綴りを書いて見せたら、
少し考えてから「ガーデン・ジュンコかぁ…」と、
呟くのを聞いて、こりゃあダメだとパスしました。
ネーミングって難しいですね。

それでは、また。

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