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好きなアニメをおすすめするだけ。

↓こちらのアドベントカレンダー #漫画・アニメ に参加させていただいた記事です。


はじめに



 この記事は、当時深夜アニメに興味を持ちつつあった友人におすすめのアニメを布教するために書いた文章を再編集したものである。

 性質上、鑑賞に支障を及ぼすようなネタバレは含んでいない。むしろ「入り口」として読めるものを意識したつもりなので、安心して覗いてみていただければ幸いである。

 ちなみにその友人は、この中だと今のところ3作品観てくれた。アニメ1本見るってめちゃくちゃ労力の要ることだと思うし、布教されてくれる友を持つのは幸せなことですね。

 ※紹介した作品でdアニメストアのマイリストを作ったので、入会している人は是非。ネトフリ派その他の方は申し訳ございません。サブスクやってない人はこれを機に入るといいと思う。
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おすすめアニメ10選



・氷菓

放送年:2012年 2クール
制作:京都アニメーション
ジャンル:青春 日常ミステリ 小説原作

 原作は『インシテミル』『黒牢城』等でも有名なミステリ作家・米澤穂信のデビュー作となった小説シリーズ。
 ”省エネ主義”を自任する主人公・折木奉太郎が好奇心旺盛な少女・千反田えると出会い、ひょんなことから日常に潜む謎を解明していくことになる……という内容なのだが、ミステリとしての面白さはさることながら、青春ものとしてのクオリティがとにかく高い

 ミステリというからには事件があり、犯人がおり、隠された真相がある。そして探偵役である奉太郎が推理で真相を暴いていくのだが、事件の根底にあるのは必ずしもドラマチックな愛憎や殺意ではなく、思春期の少年少女であれば誰もが抱きがちな青い自意識だったりして、解決した後のちょこっとビターな後味が最高なのだ。
 最初は無関心・無頓着こそ至高と考えていた奉太郎が、千反田えるという存在に徐々に影響されていく様子をはじめ、登場人物それぞれの信条やその変化も丁寧に描かれており、短中編形式ではあるがシリーズ全体としての完成度も抜群。

 泣く子も黙る京アニの全盛期(と個人的には思っている)に制作された作品だけあって作画・音楽・演出どれをとっても最高品質で、特に文化祭編のモブ一人ひとりまで息づいている作画は神がかり的としか言いようがない

 老若男女どんな人にもシンプルにおすすめできる傑作だ。




・ウマ娘 プリティダービー

放送年:2018年(1期)、2021年(2期) 各1クール
制作:P.A.WORKS(1期)、スタジオKAI(2期)
ジャンル:擬人化もの 競馬 スポーツ キャラコンテンツ原作

 

 1期の放映と同時期に事前登録が始まったスマホアプリ版が3年経ってもサービス開始しなかったことで有名なアニメ。2期放映後にようやくリリースされたアプリ版の盛況ぶりを見れば、もはや基本的な解説は不要だろう。かのCygames資本を引っ提げ、満を持して世に放たれた競馬擬人化アニメである。

 競馬を擬人化ってそれただの陸上じゃん、と侮るなかれ。よく考えてほしい、ただの陸上アニメならそれはそれで面白そうじゃないか?レーススポーツ系のアニメや漫画にもアツくてエキサイティングな作品が沢山あることについては論をまたない所ではないかと思う。ウマ娘はそういったスポ根作品群のエッセンスを確実に受け継ぎつつも、その土台の上で競馬原作というオリジナリティを遺憾なく爆発させた、文字通りアニメ界のサラブレッドだ。

 筆者は原作未履修勢で、登場するウマ娘もハルウララくらいしか名前聞いたことないくらいだったが、それでも間違いなく楽しめた。このアニメ、とにかく演出が良いのである。
 史実をもとにしているということもあり、正直レース結果等はうすうす読めることが多い。けれども、そこに至るまでの各登場人物の気持ちやレース中の心情描写、競馬原作であることをフルに活かした実況・解説や観客の歓声など、胸が熱くなる演出がてんこ盛りで、結果が分かっていても思わず手に汗を握ってしまう。筆者は1期を見ながら何回も泣いたし、2期なんてほぼ毎話泣いてた

 お話だけでなく、ウマ娘たちもそのトレーナー(アイドルでいうPポジション)たちも全員ほんとに良いキャラしているので、擬人化ということで最初はとっつきにくくてもすぐにみんな好きになってしまうに違いない。

 一時期のブームがひとまず落ち着いた今だからこそ言う。ウマ娘を、見よう。




・少女終末旅行

放送年:2017年 1クール
制作:WHITE FOX
ジャンル:終末系 ポストアポカリプス 百合 漫画原作

 文明が滅んだあとの世界を、チトとユーリという少女2人が旅するという作品。

 大層な世界観設定だが、なぜ世界は滅んだのか、2人はなぜ生き残っているのか、以前はどんな文明が花開いていたのか、そういった点が詳細に語られることは(少なくともアニメ化範囲では)ない。作中の描写から読み取れるのは、もはや2人の世界には徹底的に絶望しか存在しないというただ一点のみである。
 そんな終わった世界を舞台にしながら、それでも2人の旅路は終始ほのぼのとした調子で進んでいくのが、そら恐ろしくもあり、ある種の絶対的な安心感を与えてくれるものでもある。個人的に暗い話はあまり好きじゃないのだが、『少女終末旅行』は設定と画面が暗いだけで、メッセージとしては「2人いれば世界の終わりなんてどうでもいいよね」みたいなある意味最強のポジティブ思想だから見てて気が滅入ることは不思議とない。

 身も蓋もない言い方をしてしまえば「雰囲気がすごく独特な百合アニメ」なので、上記のような設定に余程拒否感がない限りは見て損はないと思う。あとOP・EDが映像含めてはちゃめちゃに良いのも推しポイントだ。特にED映像に関しては全コマ原作者による描き下ろしアニメーションとかいう中々意味の分からない所業をやらかしてるので、是非1話だけでも御覧いただきたい。

 余談だが、2017年頃は『少女終末旅行』をはじめ、『けものフレンズ』『メイドインアビス』『宝石の国』などのポストアポカリプス・終末系の作品が俄かに流行した。もはやオタクは現文明で幸せを掴むのを諦めてるよね、末法思想だねみたいな言説も一部で広がった。




・プリンセス・プリンシパル

放送年:2017年 1クール
制作:アクタス
ジャンル:スパイもの スチームパンク オリジナル

 スチームパンクな世界観を舞台に女の子スパイ5人組が暗躍するという如何にもオタクが好きそうな設定のアニメ。あまりにオタクが好きそうすぎて筆者は最初様子見していたのだが、周りのオタクがみんな褒めてたので恐る恐る観たら悔しいけどガチで面白かった

 ファンタジーだがファンタジー要素はそこまで強くなく、基本的には近代ヨーロッパ的世界観(19世紀末ロンドンが作中舞台)を基調としている。
 作品の根幹は、女の子スパイ達が裏社会でカッコかわいく活躍する姿とその胸裏に秘める個別事情、そしてメインヒロイン二人の一国を巻き込んだ壮絶な百合模様にあるので、ファンタジー・硬派寄りのアニメに抵抗がある人にとっても入りやすい作品ではないだろうか。
 人は死ぬけどそこまでエグいシーンがあるわけでもなく、ただただ1話ごとの脚本がめちゃくちゃよく出来ている。一つ一つの台詞選びをはじめ、とにかくディテールがものすごいアニメで、細かい描写が伏線になってたり、何気ない描写にも気を配ってたりと、総じて非の付けようがないハイクオリティアニメだ。

 終わり方が若干消化不良だったのが玉に瑕だが、アニメの続編を劇場版6本分でやることが既に告知されているのでアニメ範囲は序章にすぎなかったということだろう(注:22年現在、劇場版第2章まで公開済)。これから見ればまだまだ間に合う!




・明日ちゃんのセーラー服

放送年:2022年 1クール 
制作:CloverWorks
ジャンル:青春 日常 田舎 漫画原作

 知る人ぞ知るセーラー服アニメ。セーラーに一家言ある筆者としては生半可な作品に『セーラー服』を冠してほしくない気持ちがあり、やや疑念を抱きつつ恐る恐る見始めたのだが、結果として”理解”らされてしまった

 第一話で主人公・明日小路が新調されたセーラー服に着替えるシーンがあるのだが、もうこの時点で作画・音響・演出がえげつない。ただ単にぬるぬる動くとかそういうことではなく、「質感」がとんでもないのだ。田舎の女子中学生なんて都会のアニメオタクから最も遠い位置にある概念のはずなのに、「それが今、目の前にある」と否応なしに確信させられてしまう。聞こえるはずのない胸の鼓動や、上品な布の香りすら感じられるような錯覚に陥る。

 かと言って、「実写のようだ」とか「現実にありそう」みたいな感覚とも違って、むしろ明日ちゃんという作品は徹底的に“幻想”を描いている。おとぎ話のように綺麗な家、美しい土地、レトロな校舎。家族や友達を含めて登場人物に嫌な奴は一人もいないし、作中で起こるすべての出来事は小路たちの瑞々しい青春に還元される。「現実はこんなにキレイじゃないよ」という諦念が脳裏に働くからこそ、そんな幻想がとんでもなくリアルな質感をもって目の前に現れることに、現実をもがき生きるオタクたちは心を揺さぶられるのである。

 基本的に1話完結ですごく取っつきやすいアニメでもあるので、生きるのに疲れた時にオススメの作品だ。めいっぱいの元気をもらえるか、もしくは過去最大に自殺したくなるか、どちらかの結果を必ずやもたらしてくれるだろう。




・Vivy ~Fluorite Eye's Song~

放送年:2021年 1クール
制作:WIT STUDIO
ジャンル:SF 

 ゴリゴリのSFなので普段そういうのに親しんでいない人の琴線には触れにくいかもしれないが、面白いので選出。筆者も普段ロボアニメとか全く観ないけど、そんな奴が推してるんだからそのくらいジェネラルに良いもんなのである。

 筆者が好きになりやすいアニメの特徴として「設定複雑な割に、やってることはめちゃくちゃシンプル」というのがあって、Vivyはそれの最たる例だと思う。自律人型AIだの時間遡行だのシンギュラリティだの、いかにもSFな用語が作中にはたくさん出てくるのだが、主人公ヴィヴィの行動原理自体はずっとブレないので、設定に置いていかれてストーリーを見失うようなことは意外と起きない。
 それに加えて、要所要所で目を見張る演出や魅せシーンがバチッと差し込まれるせいでめちゃくちゃ見ていて気持ちがいいのだ。ありえないほどゴリゴリ動くアクションシーンの後に突然タッチの変わる止め画が数秒挟まれたりと、演出の緩急がすごい。SF的な要素もそういう演出に120%で生かされていて、とにかく映像作品として面白くしてやろうという製作者の気合を感じた。

 もちろんお話自体めちゃくちゃ面白くて燃えるけど、最悪ストーリーをあんまり理解してなくても(ぼく自身深く理解していたとは言い難い)画だけで楽しめるアニメだと思う。世界を広げる意味でも、是非見てみてはいかがだろうか。




・響け!ユーフォニアム  

放送年:2015年(1期)、2016年(2期) 各1クール
制作:京都アニメーション
ジャンル:青春 部活もの 吹奏楽部 小説原作

 京アニ厨の筆者が自信を持っておすすめしたい京アニ作品その2(その1は氷菓)。弱小だった京都府立北宇治高校吹奏楽部が、敏腕指導者である滝先生を顧問に迎えたことをきっかけに全国大会金賞を目指すことになる王道部活アニメ。

 ありえないほど美麗な作画力の入りすぎなオケシーンはそれだけで一見の価値ありだが、ユーフォの真骨頂はそれに留まらない。この作品ほど見事に部活動というコミュニティの面倒臭さを描き尽くした作品を、筆者は他に知らない。

 それぞれの吹奏楽部員たちが部活に臨むスタンス、かける想いは決して最初から一枚岩ではなく、時に対立し、浅くない分裂を生むこともある。純粋に部活を楽しみたかった者、勝ちに拘る者、レギュラー争い、上下関係、恋愛模様etc…もし当事者だったら「ああああ面倒くせええええええ」と叫びたくなること請け合いな様々がこのアニメには全て詰まっている。「この面倒臭さこそ青春だろ?」とほくそ笑む制作サイドの顔が透けて見えるようだが、まさにそのとおり、この面倒臭さこそ青春なのだから反論のしようがない。
 そういった様々なイベントを乗り越え、ようやく北宇治高校吹奏楽部オーケストラとして一つの音楽ができあがったときの感動は、この作品を措いて他では決して味わえない極致といって過言ではないだろう。

 とにかく人間関係の描き方が丁寧な作品なので、部活だけでなく何らかの集団に所属していたことのある人(全人類では?)ならばきっと楽しんでもらえると思う。本当にすごいです、このアニメ。
 続編となる映画『誓いのフィナーレ』、とある部員2人にスポットライトを当てた濃厚百合映画『リズと青い鳥』もあわせて是非。




・無能なナナ

放送年:2020年 1クール 
制作:ブリッジ
ジャンル:サスペンス・アクション 異能バトル 漫画原作

 

 エロゲの脚本などで有名なるーすぼーいが原作を務める、特殊な能力を持つ少年少女たちが集められた孤島の学園を舞台とするサスペンス・アクション。

 うかつなことを言うとネタバレになってしまうのでなるべく避けるけど、とにかく脚本の妙が冴えわたる作品。筆者自身、人がどんどん死んでいくようなサスペンスホラーは普段そんなに嗜まないんだけど、この作品は「見せ方」が本当にうまくて、毎回毎回「そうくるかあ」と唸らされていた。その巧みな物語運びは最序盤から一貫してるのだけど、特に後半、主人公の内面や感情にスポットライトが当たってからはもう面白さが止まらない。当初は想像もできなかったくらい、いつの間にか主人公にどっぷり感情移入していて、襲ってくる地獄みたいな展開にこっちの心までぐちゃぐちゃにされて、そしてそれが最高潮に達したところで……その先は君の目で確かめてみてくれ!! そんな感じ。

 ちょっと作品の性質上いつも以上にふわっとしたことしか言えないが、我がアニメ人生の中でもトップクラスに”良い意味で期待を裏切られた”作品なのは確かだ。願わくば可能な限り事前情報を絶って、思う存分『無能なナナ』に裏切られてほしい




・リコリス・リコイル

放送年:2022年 1クール 
制作:A-1 Pictures
ジャンル:ガンアクション フィクション 百合 オリジナル

 犯罪者を抹殺して治安維持を図る極秘組織に所属する少女たちが様々な事件に立ち向かう姿を描く……という、いかにも電撃のラノベにありそうな設定のガン・アクション。

 人死にも出るしシリアスなお話ではあるが、全体として雰囲気は軽妙で重くなりすぎることはない。テンポ良く進むしアクションの作画・演出も申し分なし、演技や音楽も一級品と、どこを切り取っても文句のつけようがないクオリティだけど、やっぱり一番は「キャラクター」が良かった作品だと言うべきだと思う。

 このアニメ、主人公である千束とたきなの百合なのはもちろんそうなんだけど、この二人に限らずすべての主要キャラの思想というか信念を丁寧に描いていて、かつそれがストーリーに直結してくるのがすごくイイ。中盤までは「ただ単にキャラが良いアクションアニメ」なんだけど(それでいいじゃん)、最後の方はもう信念のぶつかり合いがそのまんまお話の本筋になっていて、キャラが好きで見ていれば自然と物語に夢中になっている、という、まあある意味当たり前にそうあるべきなのかもしれない基本をこれ以上なく実践できていたアニメだった。こんなに要素てんこ盛りなのに観てて全く胃もたれしないの、おそろしい。

 兎にも角にも、きっかけとしては千束とたきなの百合目当てで差し支えない(そして、その期待にも必ず100%で応えてくれる作品です)ので、令和最先端のキャラアニメ、リコリス・リコイルを是非一度賞味してみてほしい。真島×ロボ太はいいぞ。




・サクラダリセット

放送年:2017年 2クール 
制作:david production
ジャンル:学園異能 青春 ラノベ原作

 『いなくなれ、群青』などでも知られる青春ノベル作家・河野裕によるライトノベル。放送当時はP.A.Worksの新作『サクラクエスト』と同時期でサクラ対決とか言われていた。結局2作品ともあまり世間的に成功とは言いがたい感じで終わったのだけど、ぼくとしてはその扱いに未だに納得がいってないくらい『サクラダリセット』を毎週夢中で追っかけていた。

 舞台となる咲良田に住む人々はみな特殊な能力を持っているのだが、主人公である浅井ケイの能力は「記憶保持」、見聞きしたことを確実に思い出せるというもの。それだけ聞くと大したことないが、ヒロインである春埼美空の持つ、自分を含めた世界のすべてを3日前の状態に配置し直す能力「リセット」と組み合わせると、自分だけ記憶を引き継いだ状態で2周目の世界を体験できるというチート能力に変貌する。
 ……どうだろう。こういう理屈こねこね能力バトルに少しでも惹かれるのなら、絶対にめちゃくちゃ楽しめるので見てくれ。惹かれなくても見てくれ。お願い。後生だから。

 とはいえ、最初とっつきにくいのは認める。1話からして古き良きラノベ節全開で禅問答みたいな会話が繰り広げられまくるのだが、そこを何とか我慢してほしい(ちなみに筆者はそういうのが大好きなので常に最高だった)。要領さえつかめれば、素晴らしく理知的で技巧的で、かつ抒情的で幻想的な河野ワールドにすぐさま魅せられてしまうことだろう。
 24話で原作の最後まできっかり終わるので消化不良感も一切ないし、心の底からおすすめしたい作品の一つだ。




おわりに



 自分語りになるが、筆者は「前評判」にとても左右されやすいタイプである。

 これはアニメに限った話ではなく全てに言えることだ。
 何か一つ作品に触れるにしても、インターネットのオタクたちが「面白い」と言っていれば「あ、面白いんだな」と思って見るし、「微妙」と言っていれば「そうか、微妙なんだな」となってしまう。感想を発信する段階でそう矯正するのではなく、受け取り方そのものが評判に強く影響されてしまうということだ。

 あまりよくないことなのかもしれないが、筆者個人としては「まあそれはそれで別にいいか」と諦めている。
 そして、程度の差こそあれ、こういう性質はきっと誰にでもあるものなんじゃないかと思う。

 だとすれば、問題は「いかにネガティブな感想を避け、ポジティブな評判のみを事前に仕入れるか」ということになる。これさえ実践できていればよっぽどのものでない限り、脳が勝手に「名作バイアス」で補正をかけてくれる。
 他力本願と思われるかもしれないが、もとより他者からの影響を完全にシャットアウトすることなどできないのだ。それならば頑なに拒むのではなく、むしろ受ける影響を積極的にコントロールしにいくのが次善の策というものである。

 逆の視点で考えよう。つまるところ、「おすすめを発信する」というのはここに一番の目的があるんじゃないかと思う。

 受け取り方は出会い方に大きく左右される。
 ならば出会わせたもの勝ちだ。我々は一方的な発信によって、他者のまっさらな脳に先入観を植え付けることができる。これはもちろんネガティブなキャンペーンに用いることもできるし、その逆も同様だ。一億総発信時代とは言わば、一億の消費者たちによる熾烈で身勝手なバイアス戦争なのである。

 今回の10作品もそういう気持ちで推薦文を書いた。何らの有識者でもなく、大した数見ているわけでもないただの一視聴者が自信満々に太鼓判を押しているのはそういう理由だし、年代・ジャンル・評価点等々まったくもって偏りの激しいリストになっているのもそういうことである。
 「布教」という行為の持つ暴力性に、オタクは自覚的であるべきだし、自覚した上で良識を逸脱しない範囲の悪用をするべきだと思っている。


 皆さんもおすすめのアニメを紹介して、他人にバイアスを植え付けてみませんか?


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