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シャープペンとルーズリーフ

シャープペンを握り始めてから、かなりの時間が経っていた。教科書やらノートやらが積み上げられた学習机の上、わたしはB5のルーズリーフが置けるスペースだけを確保して、ルーズリーフに文字を書き付けていた。単に書き付けていただけではないけれど、握るシャープペンが書く文字を目で読んでいく。
ルーズリーフが3枚両面、字で埋まったところで、わたしははたと手を止めた。ある程度の、書きたいことばたちが塊になって吹き出し、区切りがやってきたから。
息を大きく吸って、散らばったルーズリーフをまとめて、書き始めから目で文字を追っていく。何が書きたいとか何かを強いられてるとかじゃない、単に自分が書きたいことを、握ったシャープペンで書く、それだけ。読めたもんじゃないな、と頭で思うけれど、これはこれでいいや、とわたしはシャープペンを置いて椅子に腰をかけたまま上半身を起こしてうんと伸びをした。じんじんと右手中指の関節と両肩が痛んだ。

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…内容なんか全くない、おとぎばなし。こうなればいいな、なんていう、こどものわがままを書き付けたルーズリーフが、少し黄ばんで押入れの奥から出てきた昨日。
あの頃は、ひたすらシャープペンを握って、何でも言葉を書き付けていた。幼くてつたなくてくだらないけれど、あの頃のわたしは、確かにシャープペンを握りしめて、たくさん心に湧き上がる言葉を書き付けていた。それだけの情熱が、わたしにもあったんだ。過去のわたしを、ふふっと笑った。