ユー・アー・ノット・アローン 「私」の中のマイケル・ジャクソン

プロローグ

「『僕』はマイケル・ジャクソンに殺された?」

 ネットでなんとなくマイケル・ジャクソンの事を漁っていたら、こんな衝撃的な文章を見つけてしまった。どうやら連載小説のタイトルらしい。そのタイトルに度肝を抜かれた私は、恐いもの見たさでリンクを踏んだ。

 そこに書かれていたのは、「インパーソネーター=究極の物真似」という未知の世界。マイケルに限りなく近付けるパフォーマンスをするインパーソネーターの、哀しくも熱い物語であった。そして驚くべき事に、ノンフィクションだったのだ。

 私は、マイケル・ジャクソンのファンだ。といっても、私がマイケルのファンになったのは彼が亡くなった後である。洋楽マニアの父がアルバムを買って車で流していたのをきっかけに、当時小学生の私はマイケルの音楽にどっぷりとハマってしまった。勿論周りにマイケルを語れる友人はおらず、一人でマイケルの下手くそな漫画を描いたりして彼の世界に浸っていた。若くして天国へ旅立ってしまったポップの王様に、叶わないと知っていても心酔していたのだ。

 そんなマイケルのパフォーマンスを、一寸の狂いも無く再現する人が存在するらしい。それが先述したインパーソネーターというものだそうだ。名前は尾藤一斗さん。私と同じ埼玉出身で、少し親近感が沸いた。彼の物語を読み進めていくうちに、私の心には大きな何かが芽生えていた。

「この人の物語をもっと知りたい、体験してみたい。」

 全てを読み終えた私は決意した。自分の興味のある分野を自主学習してレポートに纏めて提出する「総合研究」の題材は、「マン・イン・ザ・ミラー」と「インパーソネーター」にしよう。

 私は通信制の高校に通っている。以前は県内でも有名な音楽科のある高校に通っていたが、色々あって精神を病んでしまい、四年制の通信高校に転校する事になった。丁度インパーソネーターの事を知った私には、総合研究はとても魅力的な教科だ。実際に小説に出てきた場所に足を運んで写真を撮ったりするのもいいかもしれない。

「THIS IS IT(これで決まりだ)」

 私は心の中で呟いて、書籍を買う為に書店へと向かった。

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