分詞を解放せよ!

さて、ここから本格的に文法をぶっこわしていきますね。

前回お伝えしたとおり、動詞のing形は、もはや動詞ではありません。動詞だと思っている人、結構いますよね。

動詞にingをつけると、もともと「動作」だったものが、「状態や様子」または「その行為をすること」に変化します。もっと言うと「動詞」が「形容詞」や「名詞」のはたらきをするようになるのです。

「状態や様子」(形容詞的)になるing形を、文法用語で「分詞」と言います。かたくるしいことばですが、動詞から分かれてできた詞(ことば)なので「分詞」なんですね。分詞の中でも、今起こっている様子や状態をあらわすので、現在分詞と言います。

一方、「その行為をすること」(名詞的)になるing形を、「動名詞」と言います。もともと動詞なのに、名詞の働きをするので「動名詞」です。

動名詞の方は、読んで字のごとくなので、名詞のはたらきをするという認識ができますが、分詞が形容詞のはたらきをする、という認識はしにくいですよね。いっそのこと、動形容詞にしてしまったらいいのに、とも思いますが、そうはできない事情があることも確かなのです。それについては、あらためて紙面を割きたいと思います。

ここでは、動詞+-ingの分詞(現在分詞)は「状態・様子」として、ざっくり認識しておいてもらえば十分です。

さて、現在進行形に戻りましょう。現在進行形の-ingは「分詞」それとも「動名詞」でしょうか?
答えは、「分詞」です。 He is dancing. のdancingは、「踊っている」という「状態・様子」をあらわすからです。

ネイティブは、この文章を見たり聞いたりする時、dancingという一語だけで、踊っている状態や様子が頭に思い浮かびます。
じゃあ、is を見たり聞いたりすると、何が思い浮かぶのか?それは、=(イコール)という感覚です。

なので、He is dancing.と聞けば、He=dancing つまり、彼=踊っている状態・様子 というイメージが思い浮かぶのです。

このように、公式でひとくくりにするのではなく、それぞれの言葉を意味で捉えるようにすると、英語の本当の姿が見えてきます。

たとえば、むこうで踊っている男の子を見ている女の子が、He's cute.(彼ってイケてる) He's looking at me!(こっち見てるし!)と言ってる場合、dancingも cute も looking も、彼の「状態・様子」です。そして、それらの位置に注目して下さい。形容詞と現在分詞がまったく同じ位置で扱われているのがわかりますよね。ネイティブは、形容詞も現在分詞も同じような感覚で扱います。「もはや動詞ではない」という感覚、おわかりいただけましたか?

進行形というのは、単に文法的にカテゴライズされたくくりにすぎません。体系的にまとめるとこうなる、というだけのことです。そのパラドックスに気付き、分詞を公式から解放することで、英語を扱う自由度が生まれるのです。

実は「分詞」は、動詞から分かれてカタチをかえることで、位置を変える自由を獲得しました。状況に応じてポジションを移動できる、とても優秀な遊撃手なのです。だから、「分詞」を公式に閉じ込めてしまうことが、一番やってはいけないことなのです。

ですからみなさんは、現在進行形という公式は、今日を限りにきれいさっぱり忘れて下さいね。

次回は、解放された「分詞」の、華麗な遊撃手ぶりを紹介します。

<英語のしっぽのつかみ方④>「分詞」は「状態・様子」をあらわす遊撃手

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